パレスチナ発、Yusorのアルバムについて。煙たくダウナーなサウンドと、中東的な旋律。 そして、フェミニズムの表現者として

こんにちは。

Yusorはチュニジア出身でパレスティナを拠点とするプロデューサー/シンガーです。

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中東の伝統的ポップスを濃厚な出汁にしつつ、トリップホップ/エレクトリックミュージックといった欧米のインディーミュージックの要素を注ぎ込んだ内省的なサウンドを特徴としています。

2021年8月現在、Yusorは1作のフルアルバムをリリースしています。
本記事ではそれを紹介します。

Yusorのアルバム:Wa7di Bemshi

まず一聴して感じるのは「シンプルでダウナーだな」ということです。
中東インディーズのレジェンドSoap Killsにも似た、文学的/内省的でありながらアラビアンな妖しさも漂わせています。


本作Wa7di Bemshiは中東の伝統的な歌謡Saabiやtarabの影響を感じさせます。
ただ、それを繊細かつ物憂げなトーンに塗り替えている点に本作の魅力があります。

必要最低限のビートを淡々と刻むドラムマシーン/パーカッションにチープなシンセ、
伝統楽器やストリングスや奏でる妖しくもノスタルジックな旋律
チープなシンセが奏でるディープな中東的旋律、
時折顔を見せるピアノ、ギター、アコーディオンの緩やかな響き、
Yusorの奥深くエモーショナルな歌声、
全体としておおらかな抑揚を描きながら、物憂くなだらかにサウンドは進行していきます。

また、Yusor本人はスウェーデンのエレクトリック・ミュージックの影響も公言していますが(The Field辺りでしょうか……? お詳しい方いましたら是非ご教授を……)、確かに極夜的なアンニュイさは漂っており、ほんのりと垢抜けた空気感が楽曲の基底部に潜んでいます。

それから、ヒップホップにも目配りをしている楽曲もあり、気だるいトーンの中にもバリエーションは存在しています。

ただ、あくまでも土台になっているのは濃厚な中東的な空気感です。

中東で伝統的に伝わる歌謡をアンダーグラウンドで内省的(時にノスタルジックな)な空気感で覆いつくしており、良い意味でのスキを残しつつもコンシャスで張り詰めた緊張感も漂っています。

中東の空気を自らの血肉しながら育ち、その自らを偽ることなく初期衝動的のまま音楽を創造とした結果として生み出されたのが本作Wa7di Bemshiなのでしょう。

他の地域では成立し得ないインディーミュージックがここにはあります。

また、国際女性デーに中東における女性への暴力根絶を主張する楽曲をリリースしているのも注目点でしょう。(Yusorには男性アーティストとコラボレートしても脚光を浴びにくかったり、髪を短くしただけで叩かれたりした経験もあるんだとか)

フェミニズムの観点からも意義深い存在なのかもしれません。

主要参考サイト:パレスチナ発、Yusorのアルバムについて。

https://www.reformthefunk.com/features/the-defiant-producer-of-palestine-yusor-hamed

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