エジプト発、Youssra El Hawaryというシンガーソングライターについて。アコーディオンが奏でる、カイロの郷愁

こんにちは。

Youssra El Hawaryはエジプトで活動しているシンガーソングライター/女優です。

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アコーディオンをサウンドの主役にしており、シャンソン的なエスプリやタンゴ的な情熱、さらには中東ポップス的な雑然とした郷愁をオールディーズ風味たっぷりに薫り高く響かせています。

また、人生の光と影、困難や悲哀を感じさせる曲を歌っているのも特徴でしょう。

Maryam Salehらと並ぶ、エジプトインディーズを代表する女性アーティストといえます。

2021年1月現在、Youssra El Hawaryは1枚のフルアルバムをリリースしています。
本記事では作品の背景や魅力について見ていきたいと思います。



※本記事では歌詞の和訳も掲載しております。ただし、それは英訳をもとにしたものであり、なおかつ私は英語に明るいわけではありません。そのため、雰囲気を楽しむ程度に受け止めていただければと存じます。

Youssra El Hawaryの経歴

Youssara El Hawaryは幼いころに両親からピアノを与えられ、音楽に慣れ親しんでいました。しかし、受験で忙しくなるにれ、音楽から距離を置くようになります。

しかし、大学の卒業という社会の入り口に差し掛かると、再び音楽の世界に舞い戻ってくるようになりました。そして、ピアノ以外にしっくり楽器を探し求めているときにアコーディオンに出会い、一気にのめりこんだそうです。

Youssara El Hawaryは2010年頃からソロ・アコーディオン奏者/シンガーとしての活動を開始します。
アコーディオンを弾きながら生き生きと歌い上げるパフォーマンスはすぐに話題になり、熱心なファンも現れるようになりました。


そして、「アラブの春」後の政治的状況を痛烈に批判したEl Soorを2012年に発表したことで、国外からも注目を集めるようになります。

その後、Youssara El Hawaryはソロからバンドへとスタイルを変えて活動をするようになり、エジプトや国外でのライブやフェティバル出演を重ねていきます。

さらなる演奏技術のクオリティ向上を目指し、Youssara El Hawaryは2年間フランスの学校でアコーディオンの技術を学びます。

そして、クラウドファウンディングなどでファンのサポートを受けながら、2017年にフルアルバムNo’oum Nasyeeをリリースします。

No’oum Nasyee:Youssra El Hawaryのデビュー作

カイロ・ミーツ・パリ。
喧騒と浪漫が交錯し、ほろ苦い人生模様が色鮮やかに響き渡ります。


フランス的なエスプリ、
南欧・南米的な秘めた猥雑さ、
妖しさが仄かに漂う中東的なエレガンス。
オールディーズで洒落た音世界ながらも場末の酒場めいた哀愁が漂い、「ここではないどこか」の濃密な匂いが漂っています。

また、パーカッションによる軽やかなリズムが肉感的な親しみやすさを演出しているので、非常に聴きやすいのも特徴です。

Youssara El Hawaryの飾り気なく大人びた歌声、
知的で瀟洒な旋律を奏でるアコーディオン、
悪戯っぽさと哀愁を感じさせる軽やかなピアノ、
飛び交うようなメロディで雑然とした雰囲気を醸成するマンドリン・バイオリン、
軽快なステップを踏み続けるパーカッション・ドラムス。
どことなくコミカルながらも風刺的な鋭さを帯び、それとなくアンニュイながらも情熱を秘め、如何なる時も人生の悲哀が力強く鳴り響いています。


例えば、結婚の一か月前に破局を迎えた二人について歌ったJessicaなどは印象的です。

結婚式の一か月前、私たちはジェシカに出会った。
どうやったら貴方を責めることができよう。
つまり、誰だってジェシカと恋に落ちるんだから。

ジェシカに祝福を!

恋人は私に断言していた、ジェシカを愛していないって。
彼はちょっと馬鹿なことを考えてて、
だからジェシカから離れる時間が必要だった。

だって、昼も夜も彼は上の空で、ジェシカにかかりっきり。
私と話すときだってジェシカの話題ばかり。

どうやったら貴方を責めることができよう。
つまり、私だってジェシカと恋に落ちてたんだから。

https://centerstageus.org/artists/youssra-el-hawary(抄訳)


また、消費社会で無為な日常を過ごす悲しさを歌ったKollena Hannambelleilも特筆に値します。

私たちは夜に寝る。
起きて、全てを忘れる。

映画に夢中になって、
群衆に夢中になって、
憧れに夢中になって、
ウインドウショッピングに夢中になる、ブランド品や人間のね。

ストリートを歩いているとき、
帰り道の間中ずっと、
家々への恐怖が膨らんでいく、
そして、全ての窓への。

帰ることが怖い。
スタッフロールが終わることが。

そして、寝て、起きて、全てを忘れる。
私たちは夜に寝る。
起きて、全てを忘れる。

https://centerstageus.org/artists/youssra-el-hawary(抄訳)


そして、アルバムの最後を飾るAkbar Men El Oudでは、様々なしがらみに囚われながらも困難な人生に立ち向かっていく様が描かれています。

人生はシンプルだ、
胸躍る気持ちを捨てた全ての時間より。
私の服は私をどんな風に隠すんだろう。

人生は正気だ、
私の苦しめ方を知っているこの男よりも、
私の目を見ることさえができないあの男よりも。

人生は大丈夫じゃない。
私が会う人、私たちが出会った場所、
他人が思う私の姿。

だけど、私は恐れない。

人生は時間より長い。
私は帰ると思われてる。

人生は重要だ、
私の主張を貴方なんかに伝えるより。
人生は短すぎる、
私の真意を貴方なんかに伝えるには。

人生はこういうものであり、これ以上のもの。
人生は、どうにかやっと対処できるもの。

https://centerstageus.org/artists/youssra-el-hawary(抄訳)


素敵な言葉ではないでしょうか。

そして、そんな等身大で飾り気のない言葉を、彼女は古めかしい映画のようなスタイリッシュなサウンドを載せているのです。
生々しい人生の苦みを、演劇めいた大仰な仕草で表現しているのが彼女の魅力なのでしょう。


だからこそ、重たくなりすぎずに、だけど人生の真理を的確に聴き手に届けるウィットに富んだ音楽になっているのかもしれません。

なんにせよ、Youssra El Hawaryの今後の活動が楽しみでなりません。

結びに代えて:Youssra El Hawaryのライブ映像

Youssra El Hawaryのライブ映像も素晴らしいので、最後に紹介をしておきます。

Youssra El Hawaryについて:主要参考サイト

https://www.youssraelhawary.com/

https://blogcritics.org/interview-youssra-el-hawary-egyptian-singer-songwriter-pt-1/

https://centerstageus.org/artists/youssra-el-hawary

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