World’s End Girlfriendのアルバムについて語る。荘厳な感傷。壮大な衝動。脈打つ生の美しさを叫ぶ、狷介孤高のオーケストラ。

こんにちは。

World’s End Girlfriendは五島列島出身の前田勝彦によるソロ・プロジェクトです。

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電子音楽の奇抜さとクラシックの重厚さを混ぜ合わせ、ロック的な衝動で吐き出したような、極めてオリジナリティの高い音楽性を特徴としています。

本記事では、そんなWorld’s End Girlfriendのアルバムについて語ります。

World’s End Girlfriendのアルバムを振り返る

各アルバムごとに語っていきますが文章だけでは分かりにくいので、相関図にしてみました。

いかがでしょうか。

それでは、アルバムごとに見ていきましょう。

(1st)Ending Story

前史:アルバムをリリースするまで

World’s End Girlfriend(以下WEG)こと前田勝彦はベートーヴェンに影響を受けて音楽を作り始めたそうです。しかし、1975年生まれという時代性と地方の生活という地域性が原因となり、音楽に関する情報に思うように触れることができませんでした。

そんな状況を打破すべく、18才になると上京をします。
アルバイトで生活費を稼ぎながら創作活動を続けていたようです。

また、影響を受けたアーティストとしてAphex TwinやCorneliusやfishmansを挙げています。
それがWEGの音楽の直接的な影響となっているかは別として、90年代終盤の等身大な音楽好き青年っぽい無邪気な一面が感じられます。

そして、半野喜弘の主宰するレーベルCurrentの目に留まり、2002年にリリースされた1stアルバムがEnding Storyです。


アルバムの魅力

底知れなさ、という意味では本作が傑出しているのではないでしょうか。
無邪気すぎる透明感が、ある種の異様さを感じさせます

軸になるのは、既存のビートに囚われない奇想天外なリズムと様々な色彩サウンドの組み合わせです。
時に子供向け教材からのサンプリングだったり、
時にピアノやハープのような気位が高い楽器だったり、
時にストリングスだったりとその素材は様々です。

そして、それらのサウンドを天衣無縫な狂気を含んだビートが根底からかき混ぜていきます。
サウンドレイヤーがビートに引き裂かれ、それと同時に新たな何かに転生をしているようでもあります。

無邪気な子供が蟻を踏み潰すような、忌避すべきものでありながらも本質的な何かに迫るものでもあるような、そんな人間の原初に迫る魅力があります。

アルバムは予想外な展開を何度も挟みつつ、やがては美しくも何かがいびつなカタルシスへと達するような構成になっています。

喜々として鬼才を演じるような、そんな美しさがあるアルバムです。

(2nd)Farewell Kingdom

前史:アルバムをリリースするまで

当時全く無名だったにも関わらず、前作Ending Storyはセールス面においても批評からの評価においても好反応で迎えられました。

長年音源が手に入らない状態が続いていたことも熱心なファンの方々ならご存じかと思います。

また、エレクトロニカ/IDMを神聖視していた層からは崇高な音楽的ムーブメントの蠢動から生まれた傑出したアルバムと認識されていたようです。

そして、そんな状況を嬉しく思っていたとWEG本人も振り返っています。

いわば、World’s End Girlfriendにとっての良い風が吹きつつあったのでしょう。
そして、そんな風に乗るように次作Farewell Kingdomを後にSerphを世に送り出すNobleからリリースします。

アルバムの魅力

本作が最もWorld’s End Girlfriendらしい作品ではないでしょうか。

前作よりも叙事詩的な壮大さに重点が置かれているのが特徴でしょう。
アルバム全体を染め上げるのは、幽玄でメランコリックな淡い色彩です。
ホーン隊、バンドサウンド、SEが紡ぐ退廃的で幻想的なサウンド、
ストリングス、ピアノ、シンセが奏でる澄んだ浮遊感、
壮大な物語を傷つけるノイズのように突如として乱打される打ち込みのビート。

そして、じわじわと長尺で盛り上げた果てに爆発する轟音が聴き手に清廉なカタルシスを与えます。

World’s End Girlfriendという名称から連想されるようなメランコリックで儚い虚像を、見事にポストロック/エレクトロニカ/クラシカルという依代を使って顕現させていると思います。

音色の一つ一つに愛おしい存在が懸かっているというか、憑いているというか。
陽炎のように揺らめくノイズの向こうに、どうしても会いたかった誰かがいる。
そんな気持ちにさせてくれるアルバムです。

(3rd-1)Dream’s End Come True

アルバム前史:リリースされるまで

前作Farewell Kingdomリリース後、WEGを取り巻く状況は大きく変わったようです。
成功は海外にも及び、スペインやロンドンでも公演を行っています。

それはWEGにとってある種の到達点であったのかもしれません。

本作のDream’s End Come Trueというタイトルを読むと、ついそんな想像をしたくなります。

アルバムの魅力

WEGにおいてもっともキャッチーな曲調を感じさせつつも、ダークな自意識の揺らぎも感じさせるアルバムです。

前作Farewell Kingdomの延長線上にあるものの、ビートの激しさが印象的です。
また、重ねて七尾旅人のポエトリーリーディングなどもあり、聞きやすさを感じさせます。

その聴きやすさは七尾旅人の言葉が紡ぐ自意識に拠るところもあるのかもしれません。

40分という時間にWEGのエネルギーをぎゅっと詰め込んだ、感情を揺さぶられる作品です。

(3rd-2) Enchanted Landscape Escape

前史:リリースされるまで

当初本作Enchanted Landscape EscapeはWorld’s End Girl Friend名義ではなくwonderland falling yesterday名義でリリースされました。

ただし、WEGと別コンセプトの作品というわけではなく、ミニアルバムのDream’s End Come Trueと対になるものとして制作されたものでした。
ただ、様々な事情があり当時は別名義でのリリースになったそうです。

そんな事情もあってか、2005年にはWEG自身に強い意志により「単体で物語が成り立つ」 ようにラスト1曲を新曲に差し替えたうえで再発されています。

アルバムの魅力

本作の特徴は何と言ってもアンビエント/ビートレスのアルバムということでしょう。

WEGの鬼気迫る側面を支えていた重厚で鬼才的なビートはありませんが、聴き手の感情を喚起するような叙情性は健在です。

そよぐようなギターの音色や、うつろうようなストリングスの調べ、消えゆくようなピアノの響き。
優しいハーモニーを奏でるときもあれば、不穏な世界が浮かび上がることもあり、荘厳に積み重なって伸びやかなカタルシスを創りだすこともあり。

ビートが存在しない分、エモーショナルさが染みこむように心の奥底まで行き渡ります。
ただ、他のアルバムよりもメルヘン由来の毒っぽさが強まっているように感じます。

美しくて真っ赤な毒りんごを思わせる、凶器を秘めた静謐さを楽しめます。

(4th)The Lie Lay Land

アルバム前史:リリースされるまで

騒然となったデビュー作、ブレイクスルーとなった2ndアルバム、対となったが2つの3rdの度重なるリリースは僅か2年ほどの出来事でした。

その勢いを象徴するようにヨーロッパ盤のリリース、スペインのフェスへの出演、さらには東アジアツアーを敢行するなどワールドワイドな活動を展開するようになりました。

次作はややスパンが空きます(2005年リリース)。
東京と大阪においてWorld’s End Girlfriend総指揮のもと、フルバンド体制でレコーディングされたのが本作The Lie Lay Landです。

アルバムの魅力

スケールの大きい叙情性も感じますが、同じくらいの深淵を感じさせるアルバムです。

天衣無縫なエレクトロニカ的無軌道性は控えめになっています。
その代わりに咆哮する感情を編み上げるポストロック的なアプローチが前面に出ており、圧倒的な迫力を演出しています。
生バンド、ストリングス、ホーン隊による凄絶なオーケストラは複雑に曲を展開させ、長い時間をかけてじわじわとカタルシスへと導いていきます。

とりわけ印象的なのは自由奇抜に暴れまわるホーン隊と悲壮さを感じさせるサンプリングボイスの存在です。

そして、音楽の奥底に秘められた感情を触媒としてあふれ出してくるのは、むせかえるように深度の高い残忍な童話性です。

不穏でいびつでメランコリー、そう簡単には戻れないような深い森。
うごめきのたうつ、世界や人間の欲望や醜さのメタファー。


「幻想」という言葉の本質をあばく、生々しさに振り切ったアルバムです。

(5th)Hurtbreak Wonderland

アルバム前史:リリースされるまで

アウシュヴィッツに足を運んだ経験が、WEGに大きな影響を与えたようです。
「自分の中で憑きものが取れた感があって、そこで方向を変えられたところがあった」 と述べています。

そして、2005年にリリースされたMONOとのコラボレーションアルバムPalmless Prayer/Mass Murder Refrain(手のひらのない祈り手/大量虐殺反復符)のタイトルにも象徴されているように思います。

また、「他人を受け入れることができるようになった」ともインタビューで述べています。

本作Hurtbreak Wonderlandには、そんなWEGの心境に変化が投影されているのかもしれません。

アルバムの魅力

不穏さや狂気だけでなく、柔らかな穏やかさがかすかに漂うアルバムです。

清泉のような透明度の高い叙情性がアルバム全体に揺蕩っています。
ホーン隊やストリングスの壮麗な音色から幕を開け、
ハープやピアノが胸を打つ旋律を紡ぎ、
予測不可能なビートが駆けまわり、
エレクトリックギターが感情の高ぶりとポップネスを見事に演出します。

曲の長尺さは変わりませんが奇想天外さは減衰し、エモーショナルさをストレートに打ち出しています。
それゆえにその美しさは聴き手の心にシンプルかつ深く突き刺さります。


不穏な展開になることもありますが、決して純度の高いエモーショナルさは損なわれません。
様々な音色を綿密に積み重ね、純度の高い感情の波を織り上げていく様は圧巻です。

WEGらしいオーケストラルな雰囲気はそのままに、果てしない青空や澄んだ湖を瑞々しい美しさも感じさせるアルバムです。

(6th)Seven Idiots

アルバム前史:リリースされるまで

前作Hurtbreak Wonderlandをリリース後、WEGは1年もの時間をかけて楽曲を制作したそうです。
しかし、それをWEGっぽすぎるという理由で全て没にしてしまいました。

普通に曲を創るといつもの自分が出来上がってしまうことに、いわば「自分らしさ」が出てしまうことに思うところがあったようです。


そして、途中で「空気人形」のサントラを挟みつつ、新たに造り直して完成させたのが本作Seven Idiotsです。

アルバムの魅力

Aメロ/Bメロ/サビというパターンの歌モノを作り、そのあとにボーカルトラックを消去、さらには創り上げた楽曲を徹底的にスクリューして完成したのが本作Seven Idiotsです。

確かにポップネスを感じられるフレーズの断片がカオスな万華鏡のように目まぐるしく散りばめられます。
狂おしい打ち込みビートと分解されたドラムス、
激しく上下にうねるベース、
エレクトリックギターのポップな旋律、
壮麗なピアノに荘厳なストリングス。

本来ならば相いれない要素がドロドロに混ざり合い、軽やかさを感じさせるときもあれば狂気的な音圧を放ち続けるときもあり、そんなカオスな状態からさらに唐突な曲展開を繰り広げていきます。

ハイテンションで実験的、マッドでファニーで時にはファンキー。
それでいてWorld’s End Girlfriend節とも言える叙情性もサウンドから匂い立っています。

WEG史上、最も苛烈な熱量を帯びているアルバムと言えるのではないでしょうか。

(7th)Last Waltz

前史:アルバムがリリースされるまで

本作Last Waltzは前作から6年の歳月を経てリリースされました。

長い時間がかかった理由としては自身が運営するVirgin Babylon Recordsでの作業や、3.11の映像で受けた衝撃を超える表現を目指して試行錯誤を繰り返していたということもあるようです。

そして、Starry Starry Nightのサントラなどを挟みつつ、
「今までで一番『自分』っていう作品になった 」アルバムとして満を持して世に放たれたのが本作Last Waltzです。

アルバムの魅力

本作Last WaltzはWorld’s End Girlfriendをテーマにしているそうです。

集大成的で壮大な作品であると同時に、自己の深淵とも向き合ったようなディープさも感じられます。

不穏で荘厳なストリングス、
無垢で妖精的なハープ、
幻惑的なシンセ/プログラミング、
内側から破滅していくようなエレクトリックギター、
いびつによじれていくビート、
そして、全てを浸していく荘厳なノイズ。

幻想的な旋律の内側で精神世界的カオスなサウンドが無邪気に暴れて混ざり合い、パーソナルでありつつも神話的なスケール感が躍動しています。

人間らしい繊細な感傷とそこから生み出される感情の乱高下が、揺れ動く曲展開やうねり脈打つ「静」「動」の有機的な切り替えによって表現されているとも言えるでしょう。

生々しい荘厳さは「世界の終りのガールフレンド」というイメージに相応しく、愛を叫ぶような激しさと胸を疼かせる痛みが激しく胎動する楽曲が林立しています。

主要参考サイト

https://freezine.jp/people/2019/10/2503/ http://www.ele-king.net/review/album/001674/ https://freezine.jp/people/2019/10/2503/ https://ototoy.jp/_/default/p/198370 https://www.hmv.co.jp/artist_world-s-end-girlfriend_000000000169529/item_The-Lie-Lay-Land_1510939 http://www.humanhighwayrecords.com/release/hhr42.html https://www.hmv.co.jp/news/article/703090151/ http://www.humanhighwayrecords.com/release/hhr47.html https://ototoy.jp/feature/20100913 https://www.hmv.co.jp/news/article/1008300066/ https://www.cinra.net/interview/201611-weg https://ototoy.jp/feature/20161126

結びに変えて World’s End Girlfriendの魅力 アルバムごとのカラーの違いと共通する精神性

World’s End Girlfriendはカテゴライズしにくい音楽を奏でていると改めて思いました。

また、アルバムごとのカラーの違いが明確にある一方で、決してぶれないWEG像があるようにも感じます。

WEGの心象風景の中には屹立する美のイデアがあって、それを徹底的に追い求めているのかもしれません。

儚い刹那へのストイックな追及が、狂気を帯びながらも力強く美しいWorld’s End Girlfriendの音楽を内面にはあるのかもしれません。

それでは。

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