こんにちは。
Under The Big Bright Yellow Sun(UTBBYS)はインドネシア出身のロックバンドです。

カテゴリーとしては、いわゆるポストロックにあたるものになるでしょう。
Explosions in the Skyとも共通するような、叙情性を湛えた澄み切った音色を特徴としています。
インドネシアのポストロック界を代表するバンドでもあり、アジアを中心とした海外にも活躍の場を広げています。
Under The Big Bright Yellow Sunは2020年5月現在、3枚のフルアルバムをリリースしています。
本記事ではその全てを語ります。
Under the Big Bright Yellow Sunの全アルバムについて 東南アジアポストロックの隠れた王道派
これから各アルバムをリリース順に見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図にしてみました。

では、アルバムごとに見ていきましょう。
(1st)Painting of Life
前史:リリースされるまで
UTBBYSの歴史はメンバーがバンドンの有名な大学のギャラリーで出会ったことによって始まります。
彼等はExplosions In The Sky, This Will Destroy You, Sigur Ros, Mogwai, MONOにインスパイアされた音楽を創ろうとして意気投合したそうです。
活動当初、UTBBYはコンピレーションに楽曲を提供したり、ごくわずかなシングルをリリースしていました。
もちろん、成功を夢見るロックバンドの基本とも言える小さなライブハウスでの演奏も数多くこなしていたそうです。
そんな努力の成果もあったのでしょう、彼等は徐々に頭角を現してインドネシアの大規模なロックフェスKICKFESTなどにも出演するようになります。
そして、いわば風が吹いているとも言える状況で2012年に自主リリースされたのが記念すべき1stアルバムPainting of Lifeです。
バンド自らExplosions in the Skyの強い影響を公言していることから分かるように、壮麗なエレクトリックギターを主軸にしたきらびやかなポストロックサウンドを展開しています。
胸を打つ叙情的な旋律が絡み合い、エモーショナルな響きを高らかに解き放っているのが印象的です。
文学的な繊細さを高い水準で維持しつつもサウンドが濁りを帯びることはなく、清い透明感は豊潤な情感を伴って流れていきます。
ただし、典型的な壮麗系ポストロックサウンドと違う点が二か所あります。
1.バーストしないこと
轟音的な爆発という常套句は使いません。
徹頭徹尾、エレクトリックギターは伸びやかな美しさと向き合っています。
2.肉体的でしやなかなグルーヴ感があること
轟音系ポストロックのグルーヴ感はある意味では叙事詩的であり、必ずしも現実的とは言えない。そんな一面もあるように思います。
その点、UTBBYSには地に足の着いた自然体の躍動感があります。
繊細さを残しながらも牧歌的なリズム感と言い換えてもいいかもしれません。
何にせよ、本作はポストロック的なサウンドではありますが、他の国のポストロックにはない土っぽい匂いがほんの少しだけ漂っています。
壮麗さの奥底で微かな安心感と土の匂いが香り立つ、絶妙に心安らぐポストロック作品と言えるでしょう。
(2nd)Quintessential Turmoil
前史:リリースされるまで
前作はインドネシアを中心に大きな評判を呼びました。
2012年の終わりまでitunes Indonesiaで高いセールスを獲得し、 収録曲はIndonesian Cutting Edge Music Award 2012のベストポストロック賞にノミネートされました。
さらにインドネシアだけでなくシンガポールの大型フェスティバルにも出演するようになります。
また、ファンから集められたアート作品でステージを飾ったコンサートなどの趣向を凝らしたライブも行っていたようです。
それだけファン層が厚くなっていたことの証左とも言えるでしょう。
そして、2014年に2ndアルバムQuintessential Turmoilをリリースします。
アルバムの魅力
メンバーによれば本作はThis Will Destroy YouやCaspianのような激しさに影響を受けているそうです。
確かに前作にはなかった「静」「動」の切り替えによる力強いダイナミズムが感じられます。
また、繊細な叙情性は若干後退し、その分だけポストロック的な緊張感やロック的な力強さがじわりと前に出ています。
各楽曲は時に静けさと共に、時に牧歌的なグルーヴ感と共に始まり、やがてはディストーションサウンドでカタルシスへ導いていきます。
いわゆる王道的轟音ポストロックの方法論の骨組み部分を、丁寧に押さえています。
とりわけ叙情的ながらもヘヴィネスも力強く、ダークさも感じられます。
確かにThis Will Destroy Youにも似ていますが、本作の場合は日常的で土っぽい匂いが漂っているところに特徴があります。
多くの要素が目まぐるしく立ち代って登場するので、おもちゃ箱を開ける様で楽しいです。
アルバム全体としてみると、「基礎は押さえつつ、遊ぶの部分でさりげなく個性を出す」という個性演出のお手本のような仕上がりになっています。
美しく叙情的で、それと同時にヘヴィでダークで、独特の空気感があって。
さりげなく唯一無二のオリジナリティを燻し出している作品と言えるでしょう。
(3rd)Brightlight
前史:リリースされるまで
この時期になると、UTBBYはどうやらポストロックバンドの地元の雄としての地位を確立しているようです。
地元のニュースサイトには「インドネシアのポストロックのパイオニア」とも称されるようになりました。
実際、その活動はさらに国際的になっています。
中国映画のサントラに楽曲を提供したり、次作の中国盤リリースが決定したりもしています。
さらにはオーストラリアのフェスに出演をするようにもなりました。
また、日本とインドネシアのポストロックバンドによるコンピレーションUではインドネシア側のトップを飾っています(日本側はOVUM)。
そして、インドネシアのポストロック愛好家に6年もの間望まれて2020年にリリースされたのが3rdアルバム Brightlightです。
アルバムの魅力
過去2作には明確に影響を受けたアーティストが存在していましたが、本作は違います。
メンバーは「どん底まで落ちた後に差す光」というテーマが影響源であると述べています。
確かに、本作は最もエモーショナルでポジティブな空気感に仕上がっています。
土台になるのはきらびやかなエレクトリックギターの旋律です。
しかし、繊細さはあまりなく、牧歌的ながらしなやかな光輝が満ちています。
そのうえ音楽的表現のパターンも過去作より豊富で、感情の表現が幅広くなっています。
時にはピアノやストリングス、さらには民族楽器を導入し、ノスタルジックで普遍的な感情を響かせることもあります。
轟音に頼ることも時にはありますが、そんな曲でも牧歌的な解放感が主軸になっています。
もちろん、本作でも独特の土っぽさが微かに漂っています。
ポストロックというよりロックっぽいなと思う瞬間も少なくありません。
ただ、アルバム全体に通底する温かさは優しく胸に響きます。
そのうえ、ポストロック由来の凛然さは失われず、それどころか過去作よりもスーケルの大きい壮大さを感じられるときがあります。
そして、エモーショナルさは過去最高。
瑞々しく壮麗で、きらびやかな旋律が高らかに叫んでいます。
本作は不思議な作品です。
UBBYSで一番気取っていないアルバムでありながら、それと同時に一番洗練されています。
自然体が一番美しい、ということなのかもしれません。
明らかに過去作より一段階上にある作品です。
結びに代えて Under The Big Bright Yellow Sunの魅力とは
あっけらかんとした強さ
今回思ったのが、UTBBYSのメンバーは率直な性格をしているのかもしれない。ということです。
インタビューで「このアルバムは〇〇に影響を受けて……」と公言し、公式サイトでも「〇〇にインスパイアされた音楽をしたかった」と隠すこともなく述べています。
これ、隠したがる人もいます。
そして、それは別に恥ずべき事でもないと思います。
ただ、あけすけに弱みを見せられるのは、まぎれもなく「強さ」だと思うのです。
ミュージシャンとして以前の人としての、圧倒的な強さ。魅力的な強さ。あっけらかんとした強さ。
そんな強さがある限り、きっとUTBBYSの音楽は成長しつづけていくのではないでしょうか。
それでは。
主要参考サイト
https://www.djarumcoklat.com/band/under-the-big-bright-yellow-sun
https://www.ayobandung.com/read/2018/11/02/40018/utbbys-band-asal-bandung-yang-moncer-di-mancanegara
https://www.youtube.com/watch?v=5bjgyFh9-LU
インドネシア語のものはGoogle翻訳しています。ご了承ください。
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