Tychoについて。 エレトロニカというジャンルをひそやかに超えて。

こんにちは。

Tychoはアメリカ出身のScot Hansenを中心としたプロジェクトです。
ジャンルとしては、エレクトロニカ(電子音と生楽器を融合させた、穏やかな音楽)がベースになるでしょう。


しかし、とりわけ近年の作品は小さなジャンルの枠に収まらず、ポストロック,ドリームポップ、チルウェイブなど穏やかな音楽のジャンルを覆うような音楽を創っています。


そんなのTychoのアルバムごとの特徴をまとめてみました。

ちなみに各アルバムの関係性をざっと図にすると、こんな感じです。

では、個別に語ります。

Tychoの全アルバム 少しずつジャンルレスへ

Past Is Prologue

事実上の1stアルバムです。
Past Is Prologueの特徴はサイケデリックで色彩豊かな感覚でしょう。

透き通るような浮遊感が際立つDive以降の作品とは、明確に特徴を異にしています。

レトロで優しく、ほんのりグルーヴィーなベース・シンセ。
揺れるに柔らかなシンセ。
シネマティックなボイス・サンプル。
アナログレコード風の柔らかなノイズ・エフェクト。

それらが優しく絡まりもつれあい、月夜に溶ける湯気のように柔らかなサイケデリックとなって静かに立ち昇ります。

独特なウォーミーさがあって少し粗削り。
最もアットホームな感触のアルバムです。

Dive

押しも押されぬTychoの代表作です。
白昼夢の世界に飛び込んでいくような、幻想的な心地よさに満ちています。

そして、本作最大の魅力は何と言っても透明感でしょう。

ふわふわと揺れるディレイがかったシンセ。
繊細な輝きを見せるギターアルペジオ。包み込むようなダウンテンポ。

その全てが柔らかで、そして清らかに透き通っているのです。
揺らめきながら混ざり合い、それでいて圧倒的な透明度は損なわれません。

きらめく水晶で編み上げられた幻想譚。不朽の名作です。

Awake

本作からバンド編成になっています。
ギターや生ドラムの存在感が強まり、輪郭がさっぱりしたポストロック的な音像に近づいています。

Tychoの特徴である浮遊感の質が、前作以前から明確に変化しています。

Diveは夢の世界のような幻想的な陶酔感が漂っていたのに対し、Awakeは現実的な感覚の浮遊感です。

例えば、大空を飛んでいるような。
あるいは、大草原で体いっぱいに心地よい風を浴びているような。
爽快な陶酔感が印象的です。

Tychoの作品の中でも最も軽やかさが前面に出ているアルバムです。

Epoch

Awakeの延長線上にあるアルバムであり、幻想的な世界から現実的な世界へとシフトしつつある作品です。

ただし、爽快感・透明感を極めるような深化ではありません。
Awakeのような滑空しているような心地よさよりも、陽光感ともいうべき美しい日差しを浴びているような、まばゆい煌びやかさが特徴です。

健全なサイケデリックとでも言えばいいのでしょうか。
「生」なバンド的サウンドが、ダイナミックなグルーヴを生み出しています。
心地よくもありますが、体を動かしたくなるようなエネルギーも滴っています。

これほどまでに健康的な陶酔感はなかなか珍しいのではないのでしょうか。

Weather

名門Ninja Tuneへの移籍作となった本作は、Saint Sinnerという女性ボーカルをフィーチャーしています。

徐々に生バンドサウンドへと移行していた過去作と違い、電子音・シンセベースのサウンドへと回帰しています。
Past Is Prologueを思わせるエレクトロニカ色の強さですが、よりグルーヴィーです。

そして、やはり女性ボーカルの存在はやはり強烈に曲全体に作用しています。
メロディアスな旋律は曲の中心となって燦然と君臨しています。
胸を打つような切なさで曲全体が引き締められており、ダイナミックなポップネスが穏やかな曲の中に渦巻いています。
一方、生の声が入ることにより、現実逃避的な陶酔感はあまり感じられくなっています。

ほんの少しだけ豪奢な浮遊感と微かな陶酔感、目の前の現実的を冷静に見つめる決然とした態度。そんな匂いを感じる一作です。

結び Tychoのジャンルレスな音像について

Tychoの最大の魅力は、その心地よさでしょう。

それは時に電子音楽的であり。時にバンドサウウンド的であり。
時に透明感があり、時に陶酔感があり。
様々に形を変えていきます。

それほどサウンドの手数が多い音楽家ではないのに、アルバムごとのカラーが大きく変わるのは面白いのではないでしょうか。


それでは。

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