こんにちは。
Tristezaはカリフォルニアを拠点に活動しているいンストゥルメンタルのロックバンドです。
ポストロック(ロック的バンド編成を中心にして、既存のロックにはないアプローチで創られた音楽 )にカテゴライズされることが多いように感じます。

活動開始は1997年からでThe Album Leafのジミー・ラヴェルがギターとして在籍していたことでも有名です。
しかし、ジミーを含めメンバーは流動的で音楽性も目まぐるしく変わっています。
ここでは、そんな彼等の足跡を辿っていきましょう。
Tristezaの全アルバムを振り返る 鮮やかに変わっていく音楽性と変わらぬインストというスタイル
Tristezaのアルバムは、ジミー・ラヴェル在籍時とそれ以降でサウンドが異なります。
- ジミー・ラヴェル在籍時【透明感高めのポストロック】(1st~2nd)
- ジミー・ラヴェル脱退後【サイケデリックなポストロック】(3rd~4th)
図にすると、下記の通りです。

という感じで明確に二分化されます。
では、ざっくり見ていきましょう。
ジミー・ラヴェル在籍時【透明感高めのポストロック】(1st~2nd)
この時期はThe Album Leafの作品と似た手触りを感じます。
繊細なサウンドや心地よいビートなどはまさしく、と言った感じです。
ただし、ツインギターの音色を複雑に絡ませた深みのある透明感は、Tristeza独自のものでしょう。
(1st)Spine and Sensory
1999年にリリースされた彼等の1stアルバムです。
そのサウンドを一言で表すなら物憂げで豊潤ということになるでしょう。
心地よく波打つドラムス、
ゆったりとうねるベースライン、
伸びやかに響くシンセ。
そして、複雑かつ繊細に絡み合うツインギターが紡ぎだす音色がとても美しいのです。
インディー的な透明感がありつつも気品に満ちた香りも漂わせ、メランコリックでありながらも温かな波紋を奏でます。
そんな音色が複雑緻密に重なり合って、アンニュイなポストロック・サウンドを編み上げていきます。
薫り高くも憂鬱に、知性的かつ淡々と、揺らめく様に展開するサウンドはとても心地よいです。
なだらかに盛り上がり、なだらかに消えゆくの曲の数々。
ポストロックの隠れた名作です。
(2nd)Dream Signals in Full Circles
前作から1年のインターバルを置いてリリースされた2ndです。
基本的には前作の延長線上にある作品で、インディー的な透明感と高らかな気品を軸にしたインスト・ロックと言えます。
しかし、明確な違いもあります。
1stが複雑に音色を折り重ねた豊潤なサウンドだとしたら、本作は音色の暖かな余韻を魅せるシンプルな穏やかさが前面で出ています。
存在感を増した柔らかなシンセサイザー、
シンプルなユニゾンが増え、ゆっくりと揺らめくツインギター。
微睡むように低音域で揺曳するベース、
たおやかさで柔らかなドラムス、
スロウになりつつもロック的な線の太さが強まっています。
前作ほど複雑な色彩が混ざり合っているわけではありませんが、冴えわたる透明度は本作が勝っています。
早朝の空気を思わせる澄み渡る美しさが、心に冴え冴えと響きます。
ジミー・ラヴェル脱退後【サイケデリックなポストロック】(3rd~4th)
ジミーがいなくなった影響が大きかったのか、 ここからはThe Album Leafとは明確にスタイルが変わってきます。
ポストロック的な音楽性を貫きつつ60’s~70’s的なサイケデリックさも取り入れてきます。
(3rd) A Colores
2005年にリリースされた3rdアルバムです。
ジミーラヴェル脱退の影響もあったのか、The Album Leaf的な透明感はやや控えめになっています。
繊細なテイストは残しつつもサイケデリックな質感が強くなっているのが特徴です。
ただし、全体的な色調としては愁いを帯びていて物静かな雰囲気です。
浮遊感を感じさせつつも切れ味の鋭さもあるツインギター、
ダークでスモーキーな気配を感じさせるキーボードの強い存在感、
息をひそめるように抑制しつつも躍動感をうねらせるベースとドラムス。
オールディーズなサイケロックの影響を濃霧のように漂わせつつも、その中心にはポストロック的な浮遊感・透明感が屹立しています。
A Coloresというタイトルにふさわしく様々な色が緩やかに変わりゆく様をそっと眺めているような、不思議な酩酊を感じさせてくれるアルバムです。
暗闇の奥底でふいに出会った深紅の宝石のような、目を逸らしがたい蠱惑さを漂わせるアルバムです。
(4th)Paisajes
2019年現在、最後のリリースとなっているアルバムです。
3rdのサイケデリック路線をさらに推し進めています。
60’s~70’sサイケ・アシッド全開のインドテイストをぎゅっと濃厚にして、極彩色の酩酊感を強烈に押し出しています。
ディストーションの存在感が増したツインギターは迷宮をぐるぐるまわるような旋律を奏で、
キーボードはトリッピーで妖しい色彩を塗り注ぎ、
ベースは淡々としつつもオールドロック的なビート感を添え、
ドラムスも派手さはありませんが、タイトなグルーヴを叩きだします。
さらにはジャジーな楽器も顔を出したりと実に多様なスタイルを繰り出します。
サイケ・アシッドロック+ポストロック、という式から生み出されたサウンドが奏でられています。
ケーキのような土壌から様々な菌・植物が目を出しているジャケットアートは本作の特徴をよく表わしており、サイケ感のある色鮮やかなのサウンドが次から次へと立ち現れてきます。
無邪気な好奇心と妖しいアシッド感を同時に掻き立てるアンビレンツな魅力が楽しい作品です。
結び Tristezaの魅力は絶えず変化する音楽性。The Album Leafとは異なる道を辿ったポストロックバンド。
ポストロック的マナーには従いながらも、びっくりするほどスタイルが変わるのが面白いです。
最初はThe Album Leaf的な側面があったのにジミー・ラヴェルが抜けた後でサウンド面で大きく変化していくのも興味深いです。
両者を聞き比べるのも面白いかもしれません。
それでは。
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