こんにちは。
Toro y Moi(トロイモア)はカリフォルニア出身のチャズウィック・バンディックによるソロ・プロジェクトです。
デビューしたのがWashed Out等と同時期であることや、浮遊感のあるサウンドのためChill Waveにカテゴライズされることが多いようです。
ただ、他のChill Wave勢よりもブラック・ミュージック的性向があり、それが彼の個性であるといえます。

Fuji Rock 2019への出演が決まっている彼等について、アルバムごとの魅力を少し語ります。
Toro y Moi(トロイモア) アルバムごとの魅力 おすすめしたいアルバムばかり
では、各アルバムごとに語りたいのですが、その前にアルバムごとのサウンドの違いを図にしてみました。

Causers of This
デビューアルバムです。
flying lotusやJ DillaのようなSF的なヒップホップが核になっています。
Chill Waveの芳香をたっぷりと含んでいるため身をゆだねてしまいたくなる桃源郷な温度感が濃密です。
インディーソウルやファンク・ディスコな力強さが幹のように存在し、その周りを、まるで果実のような甘い香りのシンセが漂っているのです。
また、後の作品よりもシンプルな楽曲構成になっており、彼の原点であるとも言えるでしょう。
Underneath The Pine
ブレイクスルーを果たしたアルバムと言ってもいいのではないでしょうか。
柔らかで暖かいシンセが生み出す夢幻の陶酔感はそのままに、ゆるやかなファンク的な疾走感が前作より強まっています。
バンド・サウンドの比重も高くなり、肉体的なダイナミズムも印象的ですね。
また、前作よりも緊張感を増しているのも見過ごせません。
前作同様、シンセが芳香な濃霧のように漂っていますが、前作では屹立する幹でしかなかったインディーソウル・ファンクなテイストがもっと力強く蠢動しています。
美しく幻想的な世界だけど、その片隅にはおぞましい何かがひっそりとうごめいているような。
そんな緊張感がひしめいています。
『美しいだけではない何か』を併せ持つが故の緊迫感を孕んだ、刹那の風光絶佳です。
Anything In Return
過去2作よりも未来的な雰囲気が強調されています。
シンセは相変わらずふわふわとしています。
しかし、SFファンク感が増したこともあり陶酔的な雰囲気は控えめです。
また、彼特有のブラックミュージック的な側面も、ヒップホップのような90’s以降からの影響が強く出ています。
全体として、flying lotusの雰囲気に近づいているかもしれません。
ただ、本作のほうがややウォーミングな印象を受けます。
SF的ではあるけれど、金属的な宇宙船ではなく未知なる生態系とのコミュニケーションを想起させるといえばいいのでしょうか。
見知らぬ惑星を歩きながら、見知らぬ知的生命体と出会っているような感覚です。
空想的ではありますが幻想的ではなく、創造的です。
What for?
意表を突いた方向転換の一作ですね。
beach boys的な瑞々しいポップネスが滴るカラフルなバンドサウンドです。
従来の優しいファンクネスも根底にはあります。
しかし、カラフルで上品な音色が次から次へと披露される演奏会的な雰囲気と、ふとした折に感じられる文学的サイケデリックな質感が、鮮やかすぎる色彩で咲き誇っています。
ちょっぴり気弱で、とことん無邪気なチェンバーでギターなロック。
シンセ的な幻想感は薄いけれど、夢見がちで柔らかいバンド・アンサンブルを楽しめます。
Boo Boo
いわゆるChill Wave的な陶酔シンセに一気に回帰した作品です。
セラピーとして聴いてきたアンビエント・トラックに影響を受けて創られたのだとか。
空間系のエフェクトをかけられたコズミックなシンセや笑い声などのSEが深く重層的にかかり、宇宙空間を漂うようなSF的浮遊感だけでなく、瞑想的とでもいうべき精神性も感じさせます。
ただ、本作の良いところはキャッチーさも備えているところ。
かすかに漂う煌びやかな80’sフレーバーと浮足立つような大振りのリズムが、気軽に楽しめるポップな雰囲気をぐっと引き寄せています。
気軽に楽しむことが出来る精神世界への旅、といえばいいのでしょうか。
日本のそれとは少し異なる「ZEN」的な、自己の内にある宇宙を探究するようなオリエンタルな魅力があります。
Outer Space
Chill Waveという調味料を振りかけたエレクトロ・ファンク。
と言ったところでしょうか。
従来の浮遊感やファンクテイストは健在です。
ブラックミュージック的な骨格の上に微睡む陶酔感は、本作でも変わらず魅力的です。
しかし、過去作にはない大きな特徴があります。
それはサウンド・プロダクション的に過去作よりも洗練されていることです。
パーカッションやベースラインはセクシーだし、ワウを効かせたギターは男臭い魅力があります。
シンセのエコーも陶酔的というよりもラグジュアリー。
女性ボーカルには思わずはっと心を奪われるような存在感があります。
そして何よりも驚きなのは、ヒット・チャートに顔をのぞかせてもおかしくないような楽曲のキャッチーな滑らかなさです。
最もポップでエロティックなアルバムと言えるでしょう。
終わりに
Toro y Moi(トロイモア) 心地よさサウンドを欲しているならおすすめの音楽家。
いかがでしたでしょうか。
Toro y Moiはアルバムごとに変幻自在にテイストを変えます。
しかし、そのどれもが非常に心地よい感覚を持っています。
自分が今どんな傾向の心地よさを求めているか考え、それに合致するアルバムをチョイスすればToro y Moiの世界をより楽しめる気がします。
Fuji Rock、楽しみですね。
それでは、また。
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