ぶっ壊れたアメ車みたいな連中の物語 トム・ジョーンズ / コールド・スナップ


コールド・スナップ

アメリカの短編作家トムジョーンズの2作目です。

訳者は舞城王太郎さん。解説は柴田元幸さん。なかなか豪華ですね。

しかし、肝心な小説はぶれるこぶれることなく、前作同様トムジョーンズワールドが全開です。

マッチョで病的、絶望的でも全力でぶつかっていくエネルギッシュさが、そこにはあります。

アフリカでの仕事を首になった躁鬱病の医者と脳に障害を負った妹、自殺を試みるパーキンソン病の中年女性と人生の半分を獄中で過ごした男、過去の過ちを振り切れずにくすぶるプロボクサー、成功を渇望しながらも社会の荒波に消えていく仲間たちの中で、いつのまにかスターダムをかけあがってしまったアボリジニの血を引く18歳の少女。

性と暴力と絶望。そんな理不尽でがんじがらめにされた醜い日常の中で、彼等は不器用にもがきます。ファック、コックサッカー。そんな高尚な文学作品ではあまり見ない言葉に彩られた世界で、どう転んだって苦悩が待ち構える道を突き進みます。まるで、ぶっ壊れたアメ車がアクセル全開で駆け抜けているかのようです。

そして、小説の心臓たる文章が相変わらず凄い。

暴発寸前のエネルギーをどうにか封じ込めたかのような煮えたぎる言葉達。登場人物の時に理解不能な内面の吐露。近づくものをすべて吹き飛ばすような圧力を放ち続ける異様さには、得体のしれない魅力を感じます。

ただ、今作には『拳闘士の休息』とは明らかに異なる点もあります。

1、突き進もうとするエネルギーに焦点が当たっていること

行く先が生や希望であろうと、死や絶望であろうとも、彼等を押しとどめようとする様々な障害に全身全霊で振り切り、彼等は一歩を踏み出します。

2、見え隠れする刹那の希望の含有量が、少しだけ上がっていること。

絶望的な世界の奥底に潜む温もりに触れる瞬間が本当にわずかですが、増えています。真っ黒い絶望の絵具に落とされた、1、2適の希望。ほんのわずかではあっても確実に、物語の色彩は変化しています。

3、躁鬱病、老い等のモチーフが前作より頻発していること

作品を繰り広げる軸となるキーワードに若干の変化が見られます。ただ、躁鬱病持ちの私としては、やはり感じるところは多々ありました。同様に思う方はおおいのではないでしょうか。特に今回の頻発テーマである老いは誰しも避けられないものです。突きつけられる時の流れの厳しさに、それぞれ受け止めるものがあるはずです。

己を突き動かすエネルギーが消えかかっている方に、是非手に取ってほしい一冊です。

では、また。

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