The Redneck Manifestoのアルバムについて。純粋で、人間味があって、危うい美しさ。

こんにちは。

The Redneck Manifestoはアイルランドで1998年に結成されたインストゥルメンタル・ロックバンドです。

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ポストロック的な透明感を湛えた揺らぎやハードコアな激しさだけでなく、マスロック的な知性やエネルギーも顔を出すのが特徴でしょう。

アイルランドでベストのインスト・バンド」「(アイルランドで)国民的人気を誇る」といった表現で賞賛されることもしばしばあり、母国で高い人気を誇っています。

日本のLITEとしばしばツアーをしているので、ご存じの方も多いかもしれません。

2021年2月現在、彼等は5枚のフルアルバムをリリースしています。
本作では、その全てを語ります。

The Redneck Manifestoのアルバムについて。

これからリリース順にアルバムごとに見ていきますが、文章だけでは分かりにくいと思って相関図を作ってみました。

では、本題に入りましょう。

(1st)Thirtysixstrings

デビュー作らしい密度と熱量の高さを感じさせるのが、本作Thirtysixstringsです。

エモく、粗く、透明感を湛えた音の揺らぎが飾り気のないメランコリーを絶えず織りなしています。
ナイーブでハードコアな瞬間はもちろんのこと、静けさの中にも煙たくヒリヒリするようなアンダーグラウンドの気配が立ち込めているのは印象的です。

不器用な未完成な面もありますが、だからこそ昔ながらのポストロックの影響を上手に昇華しているとも言えるでしょう。

時に素朴な、時に不穏な透明感を醸成するギターアルペジオ、
ゆらりとしたリズム感に鋭い低音を突き刺すベース、
軽やかで人間みを感じさせるビートを叩きつけるドラムス。
不安げに絵を描き上げるようにゆったりと楽曲は展開され、ざらついた質感を湛えた音世界の中では不安定ながらも澄んだ情緒が揺蕩っています。

感情を爆発させるときの威力はハードコア的で、生のままの感情を爆発させているような迫力があります。

最初期の(良い意味で)いびつなポストロックをエモーショナルかつダイナミックに再解釈したかのような、不安定な心の在り様を上手く音楽に落とし込んだようなアルバムだと言えるでしょう。


なお、本作は2001年にダブリンのイベントガイドによるIrish album of the yearに選出されています。

(2nd)Cut Your Heart Off From Your Head

前作の対としてリリースされたのが、本作Cut Your Heart Off From Your Headです。

前作と同じく未完成であるがゆえの危うさを魅力としていますが、緩急がややハッキリしているのが特徴的な変化でしょう。

控えめな楽曲はより穏やかで、巧みに。
激しい楽曲はより暴力的で、エネルギッシュに。
そして、いかなるときも情緒のアンバランスさとアンダーグラウンド的な不穏さが色濃く漂っています。

また、切れ味鋭いリフやSF的なエレクトロニクスサウンドも見え隠れし、マスロックの匂いも感じられるようになってきます。

全編を通して感じられる人肌的な温度感が、本作の良いところかなと思います。
楽曲の起承転結が明確になったことにより、人間らしい喜怒哀楽もまた明確に感じられるようになったと思います。


ロックバンドとしての成長が感じられるアルバムと言えるでしょう。

(3rd)I Am Brazil

The Redneck Manifestoが持つラウンジ的で音響的な一面を掘り下げたのが、本作I am Brazilです。

全体的に安定感が増し、風通しも良くなり、成熟した音響の妙を楽しめるのが本作の特徴でしょう。

感情的にサウンドを爆発させる瞬間はなく、クリーンなトーンで複雑精緻な音色を編み上げながら聴き手を音世界に引き込んでいきます。

軽やかなアルペジオやタイトなマスロック・リフを繰り出すギター、
流れるようにビートを刻むベース、
変則的なリズムをソフトに紡ぐドラムス。
ラウンジ的な解放感を漂わせながらもいぶし銀的な渋さもあり、アットホームな優しさを感じさせる音色に仕上がっています。

ディストーションギターが掻き鳴らされる時も情緒が先走るようなことはなく、音色の美しさとそのハーモニーに力点を置いているように感じられます。

あか抜けない要素を残しつつも大人びた巧みさもあるため良い意味で隙があり、それが良い隠し味になっています。

澄みやかで、それでいて大人びていて、さらに純粋さも感じさせるようなアルバムと個人的には思います。


個人的にはThe Redneck Manifestoで最も好きなアルバムです。

(4th)Friendship

前作のラウンジ・音響的な雰囲気からマスロックへ接近したのが本作Friendshipです。

知性的かつ冷冽鋭利で、SF的な世界が繰り広げられるアルバムとも言えるでしょう。
The Redneck Manifestoらしい素朴さを残しつつシャープかつ変則的なビート・曲展開へモデルチェンジし、ギターリフの鋭さも増しています。

また、盛り上がるときもクールさは失わないままにエネルギッシュに展開していきます。

跳躍するように音色を弾き出すエレクトリックギター、
スマートなグルーヴの源となっているベース、
変幻自在にビートを変化させるドラムス。
今までよりもダンサブルな作品ですが典型的なマスロックとは違って過度にアグレッシブになることはなく、華麗に旋律を刻みながら聴き手を引き込んでいきます。

また、大人びた落ち着きは漂ってはいますがマスロック的なクールさが前面に出ており、前作よりも「若返った」と印象を受けるかもしれません。

シンプルにかっこくて、スマートなマスロック・サウンドを楽しめるアルバムです。

(5th)The How

前作のマスロック路線を引き継ぎつつ、やや穏やかでウォーミングになっているのが本作The Howです。

鋭さを残しつつSF的な冷たさはなくなり、The Redneck Manifestoに通底していた人間味の比重が再び大きくなっています。

身体を自然に揺らしたくなるような、優しいけれど確固たるグルーヴに満ちているアルバムです。

小気味よくスタッカートするギターリフ、
オーガニックで太いリズムを刻むベース、
独特な曲展開に応じて姿を変えていくドラムス。
今まで以上にシンセ・エレクトロニクスを交えつつ、リラックスしつつもディープなサウンドを構築しています。

分かりやすいフックで盛り上げるというよりも、じわじわと聴き手の心に浸透していくような魅力があります。

決して急ぎ過ぎず、
さりとて遅れることもなく、
しっかりとした足取りで力強いビートを創り上げ、温かくも力強い楽曲が展開していきます。

地に足の着いた、血の通った、真摯な響きを感じるアルバムだと個人的には思います。

The Redneck Manifestoについて:主要参考サイト

https://en.wikipedia.org/wiki/The_Redneck_Manifesto_(band)

https://friendship.mu/artist/the-redneck-manifesto/

https://www.irishtimes.com/culture/music/album-reviews/the-redneck-manifesto-1.644283

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