The Cinematic Orchestra 最高にかっこいい大人が描き出す、珠玉のシネマ・サウンドトラック 

こんにちは。

The Cinematic Orchestraは1999年にスウォンジーで結成された音楽集団です。
彼等の特徴は、渋みのある色気知性的な落ち着き醸し出す大人の魅力でしょう。

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音楽的なカテゴライズは非常に難しいのですが、まるで最上級のシネマ・サウンドトラックのようです。
美しく、情緒的。様々なジャンルにまたがりながらも最高級の光沢があります。

クラブ・ミュージックの名門Ninja Tuneからリリースしているのにも関わらず、サウンドのベースは生楽器。
温もりと深みのある美しさを兼ね備え、複雑な文学性を描き出しています。

そんな彼等の全アルバムについて語ってみました。

…のですが、言葉だけでは分かりにくいと思うので、各アルバムの関係を図にしてみました。

それでは改めて。全アルバムを見てみましょう。

The Cinematic Orchestraの全アルバムについて、Motion~Everyday~Ma Fleur~To Believeへの変遷

Motion

後にリリースされる諸作と違い、実にジャズなアルバムです。

うねるウッドベース、スイングするドラムス、時にクールに時にハードに叫ぶサックスやトランペット。
それらがインプロビゼーション的にぶつかる白熱感。

フリージャズ的な熱さもあれば、ハードバップ的な洗練さもあり。

後にリリースされるアルバムの叙情的な映画サウンドとは、明確に異なります。
しかし、そんな要素を取り込んだうえでアウトプットされているのは、The Cinematic Orchestra流のいぶし銀の色気と知性的な落ち着きです。
基盤になるサウンドは実にジャジーですが、そこから構築されているのはジャズとは似て全く非なる世界です。

後の作品へと発展途上作と言うことも出来ますが、他のアルバムにはない滾るような息吹が渦巻いているAlbert Ayler+Cinematic Orchestraとも呼べる貴重なアルバムです。

Everyday

The Cinematic Orchestraワールドの魅力が、一斉に花開いたアルバムです。

夜の魅力を音にしたようなアルバムといえます。
ジャズ的な手触りは残しつつもクラブ・ミュージックに接近しています。
R&Bやラップミュージックを導入していますが、ハイテンションになることはなくいぶし銀の色気と知性的な落ち着きは健在です。

それでいてブラックミュージック的な肉体性は失われていません。
躍動するエネルギーを内に秘めながら、それをじっと抑えたスロウなグルーヴはやさしく揺れるキャンドルのように聴き手を惹きつけます。

そこに加えられたエレクトロニクス、ストリングスやハープなどの多彩な音色が、なんと幻想的なことか。
ひたすらに美しく、夜の艶が揺らめいて、それでいて心奪われるほどに透き通っています。
まるで薄暗いバーで差し出された色鮮やかなカクテルのようです。

部屋中を輝かせるような光を放つことは決してないでしょう。
しかし、だからこそ誰にも引けを取らぬほどに人の心を惹きつけるのです。
夜の闇の片隅で、ひっそりとたたずむ宝石のようです。

抑制されているがゆえに人を魅惑して止まない、妙なる大傑作です。

Ma fleur

最も叙情的な作品です。

また、今までの作品にあった夜の幻想性が消えているのは大きな特徴です。
いぶし銀の色気と知性的な落ち着きは健在ですが、全ての心の痛みを白日にさらされているような、生々しい感傷や郷愁が刻み込まれています

本作は『愛と喪失』をテーマに架空の映画のサウンドトラックとして創られています。
テーマがテーマなだけにロマンティックな雰囲気ですね。
そして、サウンドトラックであるために、既存のジャンルへのカテゴライズが出来ない音楽へとメタモルフォーゼしています。

当然、クラブミュージック性は薄まります。
ただ、バンドサウンド的になっているわけではありません。
エネルギーが爆発しているわけではないからです。
Ma Fleurは美しく、ストーリー性があり、そして深い静けさを湛えた音楽です。

管楽器は遠くを見つめるような感傷を伴い、ギターもセピア色を連想させるノスタルジーがあります。
叙情的なピアノと壮麗なストリングスの存在感は強まり、互いに絡み合いながら美しく調和していきます。
一方、スイングの残り香も心地よく鼻先をかすめます。

喪失によって刻まれた深い傷とそこからの再生に、そっと寄り添うような静かな力強さがあります。
『愛と喪失』という生々しいテーマを静寂の音楽へと昇華させています。

Everydayが夜の光に生み出された幻想の蝶だとしたら、Ma Fleurは翅を失いながらも懸命にもがくアゲハ蝶と言えるでしょう。

To Believe

最も精悍で壮大なアルバムです。
ストリングスはその荘厳さを増しながらも、違和感なくラップミュージックとも混ざり合い、決してThe Cinematic Orchestra的な魅力は失われません。

もちろん、いぶし銀の色気と知性的な落ち着きは健在です。
しかし、ビート・ミュージックの影響を感じられることもあり、今までのアルバムにはなかったキャッチーな盛り上がりが見られます。

また、繊細で温もりがあるだけでなく、夜の幻想ではなく白日に根差した力強さもあります。

しかし、何より異色と言えるのは、過去作にはない精悍さでしょう。
スケール感の大きさ、エレガントなサウンドワーク、並列的に存在感を増すストリングスとビート・ミュージック。
繊細であり穏やかでもありますが、線の細さは感じません。
美しさに刻み付けられた生々しさが目立った前作に比べると、違いは一聴瞭然でといえます。

その理由は作り手のモチベーションなのかもしれません。
アルバム制作中のインタビューによれば、聴き手への精神を喚起することを非常に意識して制作されているようです。

・「To Believeというタイトルは、個人的な信念じゃない。もっと問題を外に向けようということなんだ。我々は何を信ずるべきなんだ?」

・「このアルバムは人々を現実に連れ戻そうとしているんだ。立ち止まって、見て、聴いて、感じるんだ。君が今なそうとしている決断に対して理性的でいるんだ」

・「Radio 1で流れる3分半のポップソングのために制作してるんじゃない。そんなものは時間の無駄だ。もっと違う人々にコネクトするんだよ、彼等が辿り着きたい場所や彼等のありたい姿に作用するための幅とか深さとかさ、そういうことなんだ。俺は本気だよ。たぶん、時々本気すぎるくらいにね」

https://www.theguardian.com/music/2016/nov/13/cinematic-orchestra-jason-swinscoe-q-and-a-to-believe より抜粋

外に向けて発信をしたいという意思が、非常に強く表れています。
誰かの心に積極的に働きかけようとしています。
己の痛みと向き合うMa Fleurとは大きく違います。

大人の魅力はそのままに、誰か/何処かに向かって手を伸ばそうとする逞しさが強まっていると言えるでしょう。

まとめ The Cinematic Orchestraの魅力 
Motion~Everyday~Ma Fleur~To Believeという全アルバムの流れから見えること

どのアルバムも実に魅力でした。
語っていて、楽しかったです。

それから、どうしようもなく彼等が魅力的と思えてしまうのは、きっと彼等が『子供の頃にあこがれていて自分も当然そうなれると思っていた、物語の中にいるかっこいい大人達』に似ているからかなと思ったりもします。

心の奥底にしまい込んである痛みとか、そういうやつ。
そんなものと向き合えるきっかけにもなるかもしれません。


それでは。

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