こんにちは。
The Album Leafは、サンディエゴのポストロック・バンドだったTristezaのドラマーがスタートさせたソロ・プロジェクトです。

キャリア全体の傾向を俯瞰すると、ポストロック的な特色が最も強いです。
しかし、エレクトロニカ的な要素が強いアルバムも多く、さらにはアンビエント的だったりビート・ミュージック的な影響を感じさせるアルバムもあり、既存の一ジャンルに当てはめるのは難しいアーティストと言えます。
ただ、とても穏やかで優しいサウンドを奏でている、というのは全アルバムに共通しています。
というわけで、今回は2019年9月現在6枚リリースされている彼等の全アルバムを語ります。
ただ、言葉だけでは分かりにくいと思います。アルバムの相関図を作ってみましたのでご覧ください。

いかがでしょうか。
では、各アルバムごとに見ていきましょう。
The Album Leaf全アルバムをおすすめする。
The Album Leafのアルバムにはリリース時期に応じてある程度共通した特徴があるため、ざっくりとですが分類することができます。
具体的には下記のとおりです。
- 試行錯誤時代(1st~2nd)
- ポストロック/エレクトロニカ時代(3rd~5th)
- ポストロック/エレクトロニカ+ビート・ミュージック時代(6th)
あくまでも、ざっくりとですが。
では見ていきましょう。
試行錯誤時代(1st~2nd)
初期の頃はアイデンティティがまだ確立されておらず、いわゆるThe Album Leafのイメージとは異なる音楽を創っています。
1stは宅録アンビエントで、2ndは生楽器中心で非常に生々しく重たく、現在に至るまでの過程を感じ取ることができます。
【1st】An Orchestrated Rise to Fall
1999年リリースのソロアルバムです。
ローズピアノとドラムマシーンによる即興演奏を、当時ジミーが所属していたGogogo Airheartのメンバーがレコーディングしたものが本作の原型になっています。
ローズピアノやアコースティックギターをゆったりと響き、柔らかい音色のドラムマシーンが寄り添っています。
宅録的で箱庭的、パーソナルな静けさが何とも愛おしいです。
また、その成立過程からして本作には他のアルバムと比べて、
- 即興的で感性的
- シンプルで時にアンビエント
- サウンドプロダクションはとっても原初的
という特徴があります。
ある意味、The Album Leafで一番の異色作と言えるでしょう。
背景音のように鳴らされるアコースティックギターとボイスサンプリングだけが長く続いたりする個所などもあり、感受性の赴くままにサウンドを構築しているアルバムという印象を受けます。
作り手の穏やかな人柄を想像させる、優しく素朴な音色の一枚です。
【2nd】One Day I’ll Be On Time
2001年のリリースです。
当時ジミーは音楽制作会社に就職してジングルを作る仕事をしており、その会社のスタジオでレコーディングされたものです。
つまり、前作より音質が向上しています。
また、きちんとした環境でのレコーディングになったせいか、素朴な印象は薄れ、楽曲構成も前作よりも「曲らしく」なっています。
生楽器の持つ温かな響きを存分に聴かせるような穏やかなサウンドが特徴です。
ただ、曲調は変わらず穏やかではありますが、かすかな暗さも伴っています。
心地よい生ドラムス、リラックスしたムードのアコースティックギター、気品のある音色を漂わせるピアノ、さやかな波のように漂うシンセサイザー。
また、エレクトロニクスの比率は低く、ポストロック的ともいえます。
同時期にジミーが在籍していたTristezaが鋭角的だったとのは対照的に、本作は温もりがあってまろやかです。
しかし、ゆっくりと沈み込むような物憂さが絶えず付きまといます。
温もりがあるのにほの暗い、というのが本作最大の特徴でしょう。
本作One Day I’ll Be On TimeはSigur Rosの目に留まり、彼等のUSツアーの前座に抜擢されることになります。
そして、今までよりも広いファン層を獲得していきます。
ポストロック/エレクトロニカ時代(3rd~5th)
この時期からいわゆるThe Album Leafのサウンドが完成します。
Sigur Rosらアイスランド勢から受けた影響が大きかったらしく、Sigur Ros的ポストロック感覚やMum的なエレクトロニカ感覚の影響を大きく受けています。
つまり、過去作よりも叙情的で幻想的になっているのです。
また、この時期のアルバムは全てアイスランドにあるSigur Rosのスタジオでミキシングをしているのも特筆すべき点でしょう。
【3rd】In A Safe Place
Tristezaを離れ、Sub Popからリリースしたのが大出世作となった本作です。
Sigur Ros,Mum,Amiinaらのメンバーとアイスランドでレコーディングしています。
必然的にアイスランド的なサウンドになっています。
The Album Leafらしい穏やかさは健在ですが、前作のような温かさではなく「幻想の氷世界」を思わせる冷たくも優しげな質感で構成されています。
心地よいドラムスと打ち込みビート、ローズピアノの艶やかな音色、グロッケンシュピールの澄んだ響き、荘厳なオルガンに伸びやかなストリングス。
エレクトロニカ要素を多く取り込むようになったこともあり、揺れるオーロラのような穏やかに透き通った美しさを感じさせてくれます。
また、本作In A Safe Placeからボーカル曲を取り入れるようになったことも重要でしょう。
それに釣られるように歌が入っていない楽曲もメロディアスになっています。
優しく凍てつく御伽噺、そんな一枚です。
【4th】Into The Blue Again
前作がアイスランド的な冷たくも優しい質感だったのに対し、本作はまた温かに戻っています。
ストリングスなどを含む生楽器もより豊かに響き、音色は厚みと壮大さを増しています。
ボーカル曲も増え、In A Safe Placeよりもさらにメロディアスになっている点も見逃せません。
また、Telefon Tel Avivのメンバーが参加していることからも分かるように、 本作のエレクトロニカ感が強まっている点は重要です。
繊細な心地よさのみならず、ほんのりと上品なニュアンスを与えており、それが本作のオリジナリティになっています。
巧みに組み合わされる生ドラムスと打ち込みビート、じんわりと染みていくように響くストリングス、穏やかな気品を漂わせるローズピアノ、時折入るジミーのボーカル。
あたたかで、優雅で、柔らかで。
気配りの行き届いた穏やかな人を思わせる、心地よい一枚です。
【5th】A Chorus Of Storytellers
2010年リリースの本作です。
スランプを乗り越えて創られた本作は、今までのThe Album Leafの集大成のような作品です。
大らかでありながら情緒的であり、儚げでありながらメロディアスであり。
そして、何よりも壮大です。
それもそのはず、本作は9人編成の大所帯で創られています。
盛り上げるところでぐっと展開に緩急をつけて、美しいサウンドを力強く打ち出していくパワーは、過去作と比べても圧倒的に魅力的です。
心地よくも逞しいドラムス/打ち込みビート、壮麗なシンセ、聴き手を引き込むエレクトリックギターの音色、優雅な旋律を描くローズピアノ、高らかに響くホーン・セクションとストリングス、より増えていくボーカル曲の割合。
それらはあたかも互いに共鳴し合うように、時に繊細に、時に力強く、胸を打つ壮大なシンフォニーを織り成してくれます。
ポストロック的な躍動感とエレクトロニカ的なしとやかさを併せ持ち、そのうえ壮大なスケールを兼ね備えた一枚です。
ポストロック/エレクトロニカ+ビート・ミュージック時代(6th)
The Album Leafというスタンスを確固たるものにした後、ジミーは今までのイメージを打ち破る様な新機軸を打ち出してきました。
それはインディーダンス・ミュージック的な躍動感です。
では、具体的に聴いてみましょう。
【6th】Between Waves
2016年リリースの6thアルバムです。
9人所帯から一転、4人のシンプルな編成に戻ったことは驚きです。
しかし、長年在籍したSUB POPを離れ、MastodonやNeurosisも在籍したRelapse Recordsからのリリースである点にもご注目を。
本作の象徴的な点かもしれません。
根底にあるのは従来の穏やかなThe Album Leafです。
しかし、エレクトロニックな躍動感が強調されています。
低音を強調した太目なビートが時にぶんぶん唸ります。
ビート・ミュージックからの影響を昇華したうえで精緻で美しいThe Album Leafワールドを創り上げていうのです
そして、その組み合わせは奏功していて、実にエモーショナルな楽曲が出来上がっています。
低音が強調され加工されたビート、うねる低音、優しく爽やかに響くストリングス、愁いを帯びたローズピアノ、高らかに伸びていくホーンの音。
重たさを含みながらも駆けていくような躍動感、胸を打つ爽快なエモーショナルさ。
SF青春モノみたいな、瑞々しいギャップが溜まらないです。
爽やかな疾走感を楽しめます。
まとめ The Album Leaf の魅力とは
いかがでしたか。
個人的には、The Album Leafの変わらぬ魅力は穏やかさ・優しさだと思っています。
そして、そんな変わらぬ魅力が変わらぬままでアルバムごとに個性があるのは素敵だとも。
ちなみにジミーが在籍していたTristezaやサイドプロジェクトもとても良いです。
それでは。
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