Texas Is The Reason / Do You Know Who You Are? 「君」も「僕」も「僕」、果てなく続く自分との対話を繰り広げるエモ・レジェンド。



こんにちは。

Texas Is The Reasonは1994年に結成されたニューヨーク出身の4人組ロックバンドです。

http://1.bp.blogspot.com/-8Vtkx_SMzWU/Usyk5U3WXkI/AAAAAAAADGo/4RNCkGl3GY8/s1600/Texas+Is+The+Reason.jpgより


90年代エモにおける重要なバンドという評価を受けており、今日においても熱狂的な人気を誇っています。

Do You Know Who You Are?はそんな彼等が唯一リリースしたフルアルバムです。

Do You Know Who You Are?の特徴 高濃度な疾走感と徹底的な自己との対話

サウンドの特徴(90’sエモには珍しい、高らかな疾走感)

本作Do You Know Who You Are?のサウンド面における特徴は、90’sエモとしては珍しい解放感でしょう。

軽やかに駆け抜けるようなリズムセクション、
きらめきを感じさせるギターリフ、
高らかな旋律を歌い上げるボーカル、
その全てが内在する、明るい突き抜け感は魅力的です。

もちろんエモ特有の若々しい激情はたっぷり詰まっています。

時にぎらついた陽光のように、時に木漏れ日の揺曳のように、聴き手の心を揺さぶるような切ない感情の塊を叩きつけ、ギターやドラムスも爆発するように鳴らされることだってあります。

そして、華奢さも健在です。
もともとTexas Is The Reasonはマッチョイズムや宗教性から距離を置くために結成されたバンドです。
社会的な理想像とは異なる美徳が反映されているのかもしれません。

「僕」が分かれて「君」と「僕」に。 モラトリアムの最中に繰り広げられる会話

注意:日本語訳はあんまり自信がないです。参考程度ということでご理解ください。

本作はモラトリアムの最中で繰り広げられる葛藤を歌っています。
そして、自分を「僕」と「君」に分けて、「僕」が「君」に語り掛けることで自己の内面を掘り下げていきます。

1. 苦しい現実としての「君」

1曲目Johnny on The Spotなどはそんなアルバムの世界への入口です。

君はしばらくの間とどまることを許されてる。スロウダウンしてもう一度時間を無駄にするために、僕は君の時間が必要みたいなんだ。いつだって挑むことに病んでいて、今頃はそのために病んでるだろうって気付くべきだった。みんな違うことを教えてくれる。毎回違うことを教えてくれる。僕はクソみたいに酷い僕自身の心をなんとかしてやるんだ。さあ、しばらくの間ここに座らせてくれ。

1曲目、Johnny on The Spot(全訳)

自分を何とかするために、しばらくの間はここに座る。
前に進もうとしつつも、前に進むことを否定しており、非常にこのアルバムを象徴しています。

まだ、この段階では「君」というのが具体的な誰かなのかはっきりしません。
しかし、次の曲では輪郭を表し始めます。

君は彼等が笑ってるみたいに笑ってみたいんだろ? だったら、あっち行って自分の顔を笑い飛ばしてろ、この偽物め。そして、僕が家に帰るのを見届けてろ。

2曲目、The Magic Bullet Theory(抄訳)

この場合、「君」は「僕」の中にある否定的な側面を明確に表しています。
自分を殺してでも誰かに合わせたい・迎合したいという自分の中の弱さとも言えそうです。

続いての曲では、「君」は「僕」の目指すべき夢・場所・未来のような希望的な意味へと転換します。

いつか、僕は君が信じられるような何かをつくりあげてやる。それは僕のルーティンになりつつあるんだ。そこにはきっと明日のための時間があるはずだ。でも、実のところそれは今の僕を生かす日々でもある。未来の時間は、まだ僕のために残ってるんだろうか。太陽だってほとんど沈みかかってるのに。

3曲目、Nickel Wound(抄訳)

ただし、「君」は「僕」が手を伸ばしても決して届かないかもしれない存在として、やはりネガティブなトーンを帯びて登場しています。

ここまでのところ、モラトリアムにいる「僕」にとって、「君」は「僕」の中にある苦しさの象徴として描かれています。

2. 戦うべき相手としての「君」

しかし、アルバムが少しずつ進むにつれ、「僕」と「君」の関係に変化が生じます。

メロディは次第に消えていく。この夜以外に僕が自分のことを話す機会はない。誰もが僕の最後だ。これが僕の最後だって誓う。今や、君は何を言うか知るべきだ。今や、君は心でその全てを知るべきだ。今や、君は何を言うか知るべきだ。

4曲目、There’s No Way I Can Talk Myself Out Of This One Tonite (The Drinking Song)(抄訳)

まず歌詞全体が絶望的な状況で「僕」が奮起するようなニュアンスを帯びています。
そして、「君」は「僕」の奮起に応えるべき相手として描かれています。



そして、アルバムのハイライトでもある8曲目Back And To The Leftも似たような関係性が描かれています。
さらに「君」との関係をもっと近づける必要があると述べているのです。

この街は希望のマイルで出来ている。そして僕は君に留まるべき理由を与えるために挑んだ。だから、たぶん僕はここから立ち去らない。今まで君は一回だけ僕に挑んだ。僕達の仲は十分ってわけじゃないみたいだ。

8曲目、Back And To The Left(抄訳)

おそらく「君」とは前半部に引き続き「僕」の中にある夢・場所・未来なのでしょう。
ただし、前半部と決定的に違うのは、ネガティブな意味合いが込められていないところです。
「僕」は余計なことを考えずひたむきに「君」との距離を縮めようとしています。


そして、興味深いことにアルバムの最後を飾るA Jack With One Eyeでは「僕」と「君」の関係が逆転しています。

僕が聞いたこともないことを君は教えてくれなかったわけではないんだ。ただ君はもっと努力しないといけない。君はもっと深く掘り下げないといけない。(中略)僕は君の内面からやってくる。そいつをかかげるんだ、そうしたら僕にも君が何をしてるか分かるからね。なぜかわかるかい?君の場所はまだ僕の全ての一番大切なところにあるからさ。

19曲目、A Jack With One Eye(抄訳)

そして、「僕」は懸命に努力する僕を迎え入れる準備をしていると「君」に告げたのでした。
モラトリアムの終わりを告げつつも、元の場所に戻るのではなく、新しい世界を目指し、アルバムは終わります。

3. 歌詞まとめ 汚れなく澄んだ自分との対話

おそらくモラトリアムで座り込んでしまった「僕」は、何か夢のようなものを目指していたのでしょう。
だんだん現実の残酷さにすりつぶされ、打ちのめされそうになりましたがどうにか立ち直り、目指すべき未来から祝福を受けながらもう一度を立ち上がる。
そんなストーリーになっています。

そして、徹頭徹尾自分との会話であることが本作の特徴でしょう。

Heという人称が1曲だけ出てきますが、あとは全て僕の分身である「僕」と「君」の対話です。
素敵な女の子さえ登場しません。
ひたすらにストイックに、変にナルシスティックになることもなく、「自分はどこを目指しているのか?」を問いかけ続けています。
美しい葛藤を秘めたアルバムだと思います。


いつかこの「君」と「僕」の関係性に変化が訪れることもあったのでしょうか。
解散してしまった今となっては分かりません。

Texas Is The Reasonの全てを叩き込んだアルバムであることがDo You Know Who You Are?の魅力

いかがでしたか。

エモにしては軽やかな疾走感が特徴のTexas Is The Reasonですがその内面は思った以上に内省的かつ複雑でしたね。

しかし、そんなギャップもまた魅力です。


それでは。

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