Tangentsのアルバムについて。ポストロックとジャズ、研ぎ澄まされた探求心

こんにちは。

Tangentsは2010年に結成されたオーストラリア出身の5人組ロックバンドです。

公式Bandcampより

ジャンルとしてはポストロック/ジャズ/エレクトロニカが穏当でしょう。繊細に構築されたサウンドの中で渦巻く、ヒリヒリした熱量が魅力的です。

2022年7月現在、Tangentsは4作のスタジオアルバムをリリースしています。

本記事では、

  • 全てのスタジオアルバム
  • それ以外のおすすめしたい作品

について紹介します。

Tangentsのアルバム一覧

これからリリース順にアルバムを見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成しました。

あくまでも個人的なイメージです。
ご容赦ください。

(1st)I

Tangentsが持つ音響的/実験的精神が最も強く感じられる作品です。

不穏でストイックなテクスチャーを基調としつつ、フリージャズ的な響きが散発的に表れては消えていきます。全体的には「曲」というよりも「音響作品」としての側面が強いです。

チェロ/ギター/電子音/ドラムスが「音楽」というよりも「音」としてのニュアンスが強いサウンドを無軌道に鳴らし、少しずつ全体として調性の取れたアンサブル(といってもかなり実験的/探求的ですが)へと向かい、やがて元のヒリヒリした静寂へと戻っていきます。

繊細ながらも弱々しいことはなく、抑制された響きが生みだす仄かなうねりには初期衝動的な熱量が渦巻いています。淡々としつつも、かなりスリリングです。

Tangentsのディープな面が剥き出しになっている魅力的な作品ですが、最初に聴くべきアルバムではないようにも感じます。

(2nd)Stateless

繊細ながらもヒリヒリする実験性はそのままに、楽曲っぽさを高めています。

ストイックと優美さがブレンドされた音像と、静謐さの奥で渦巻く熱量が鮮烈です。

複雑精緻かつ有機的なドラムス/打ち込みが生みだす、抑制されつつもしなやかなビートが軸。そのうえでコントラバスやギターが自由奔放さな音を生みだし、(ローズ)ピアノやヴィブラフォンの響きが美しく揺らめき、エフェクト音が軽やかに飛び交う。テクニカルながらも押し付けがましさはなく、知性的な静謐さをふわりと奏でています。

張り詰めた透明感、音の響きをきめ細かく聴かせるフェチな質感、触れたら壊れてしまいそうなほど繊細なのに精悍なサウンド。贅を凝らしたガラス細工のような美しさを放ちつつつ、アンダーグラウンド的で煙たい魅力も秘めています。

抑制されたうねりの中に、活き活きとしたダイナミズムを感じ取れるアルバムです。

(3rd)New bodies

バンドらしい骨組みがしっかりと出来上がった作品です。

繊細/複雑さは変わりませんが、迫力やダイナミズムが増しています。音の輪郭がハッキリしており、今までよりも堂々としているように感じられます。静謐な場面や軽やかな場面も変わらず存在しますが、緩急がついたことでアルバム全体の起承転結がハッキリしているのが印象的です。

エモーショナルさを感じさせる(ローズ)ピアノ、未来的な匂いを帯びたシンセ、繊細/精緻/有機的なリズムセクション。ダブっぽかったり、ジャズっぽかったり、ポストロック感が強かったり。アプローチはさまざまですが、いかなる時も上質感のあるサウンドが紡がれています。

また、メロディアスな旋律が顔を出すなど(以前よりも)キャッチーさも備えるようになっているのも魅力。もちろん、ストイックな実験性は本作も同様です。ただし、本作は有機的な美しさが前面に出ており、窓口がやや広がっています。

前作のハッとするほどの透明感はありません。ただし、本作には闇夜に潜む獣のような、しなやかな力強さがあります。

(4th)Timeslips & Chimeras

4thアルバム『Timeslips』は2020年にデジタルオンリーで発表されました。そして、翌年には同時期に製作されたもののリリースされなかった『Chimeras』とセットで『Timeslips & Chimeras』としてリリース。収録曲は

  • (1~6曲目)『Timeslips』
  • (7~12曲目)『Chimeras』

となっています。

Timeslips

『Timeslips』は前作の延長線上にある作品です。

輪郭のはっきりした精悍さはさらに増しており、キャッチーさがさらにアップ。繊細な音色を複雑に織り込んで生み出されるヒリヒリする熱量は健在。Tangentsの醍醐味を存分に堪能できます。

複雑に入り組みつつも軽やかなドラムス/打ち込みは本作でもサウンドの要。ベースはうねるようなグルーヴ感を生みだし、エフェクティブな(ローズ)ピアノやチェロが棚引くように揺らめく。電子音楽的な繊細さな音の質感を響かせながら、ジャズ的なストイックさも鮮烈に魅せています。

今まで一番窓口が広い作品なのかもしれません。

Chimeras

『Chimeras』はやや実験的な側面が強い作品です。

ローファイな質感やダブ的なエフェクトによって、ポスト・ダブステップにも通じるサウンドを形成しています。物憂くも儚く、煙たくも繊細。精緻な音世界をしなやかに生みだしています。

根っこの部分は今まで変わりません。ただ、ジャズの匂いやポストロック的なダイナミズムの断片を残しつつ、その上にダブ的音響実験のスープをドバっとかけたような仕上がりになっています(後半は比較的透明度が増してきますが)

比較的ストレートな『Timeslips』と違い、影の雰囲気を感じさせるアルバムです。

フルアルバム以外で、おすすめしたいTangentsの作品

(EP)Stents + Arteries

2ndと3rdの間にリリースされた3曲入りの作品です。

空気感としては3rdに近め。ただ、キャッチーでロック的な瞬間が多いように思います。
即興的な自由奔放さを感じさせつつ楽曲としての骨組みがしっかりしていることもあり、非常に聴きやすい印象を受けます。


表題曲の一つStentsは特に素晴らしく、チェロやピアノのエモーショナルな旋律と滑らかな疾走感が結びつき、「ストイックと優美のブレンド」というTangentsの良さがぎゅっと詰まっています。

2曲目はよりポストロックらしさが出た楽曲。3曲目は3rdアルバムに収録されている同曲の拡大版です。

(EP/セッション音源)Risk Reaps Reward

非常に素晴らしいセッション音源作品です。

メルボルンのラジオ局でオンエア・セッションを行う際、たまたまその日はライブ用のスペースが使えませんでした。そのため、机が置かれた狭いスタジオルーム(Studio Room)で演奏をすることになります。

それが思わぬ結果を招きました。メンバー同士が接触しながら演奏をせざるを得ない特殊な環境が触媒となって、素晴らしい演奏をもたらしたのです。

生演奏独自の肉感的な響きが本作の特色。スタジオ録音の精緻繊細な構築美とは異なり、「ああ、ロックバンドだな」という感じがします。スタジオ録音作よりも、躍動感が素直に出ています。

ライブを見たくなるような、まっすぐな魅力を秘めた作品です。

主要参考サイト

https://tangents.bandcamp.com/

https://en.wikipedia.org/wiki/Tangents_(band)

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