こんにちは。
Sontag Shogunはブルックリンを主な拠点とする3人組ユニットです。

彼等の音楽はしばしばポスト・クラシカルにカテゴライズされます。
美しいピアノの旋律を土台にしつつ電子音をちりばめた繊細なサウンドが特徴と言えるでしょう。
2020年3月現在、Sontag Shogunは3枚のフルアルバムをリリースしています。
本記事ではその全てを語ります。
目次
Sontag Shogunの全アルバムについて
これから全てのアルバムについてみていきますが、文字だけでは分かりにくいと思い、相関図を作成しました。

では、アルバムごとに見ていきましょう。
(1st)Tale
三メンバー三人がバラバラの都市に住んでいた(ソウル⇒プサン、ロンドン、ブルックリン)などの理由のためか、多彩な背景が盛り込まれた作品になっています。
全体的には物憂いエモーショナルな空気感を基調としており、ダークながらも荘厳なアンビエントサウンドといった趣になっています。
ピアノを中心に添えつつ、繊細な電子音や様々なボイスサンプリング、フィールドレコーディング、時折顔を出すボーカルなどが一体となり、複雑かつ重厚なサウンドレイヤーを築き上げています。
耳を澄まして聴き入りたくなるような粒の細かさを感じさせる音質でありながら、実に多種多様な要素が詰まっています。
しかも決して統一性が失われることもなく、やや薄暗いながらも色鮮やかな音響世界を形成しています。
あたかも暗闇の中で紫煙が形を変えながら広がり溶けていくように、多様な響きが静寂の中にそっと広がり消えていきます。
薄闇の情緒と静寂のこだま。
壮麗で美しい魑魅魍魎が微笑みながら通り過ぎていくような、そんな感覚にさせてくれるアルバムです。
(2nd)Pattern For Resonant Space
前作の情報量の多いサウンドから一転し、いわゆるアンビエントな作風に近づいています。
サウンドやノイズが先にあって、そこにピアノを当てはめていったという本作のプロセスが関係しているのかもしれません。
もちろん物憂いダークな質感は維持していますが、壮大さは一歩後ろに下がり浮遊感のある静寂の中に感情を湛えています。
繊細な質感のノイズ、電子音、フィールドレコーディングなどが奥行きのある空間を形成し、その中で美しいピアノの旋律が浮かび上がっては溶けていきます。
静寂にシフトしたことにより音の輪郭がより鋭敏に感じられ、きめ細やかな質感をフェチズム的に楽しむことができます。
静けさに揺蕩う音の質感を繊細に編み上げ、憂鬱な音楽へと昇華したようなアルバムと言えるでしょう。
(3rd) It Billows Up
前作よりもさらにアンビエントな質感を高めている作品です。
また、ややメロディアスになっているのも特徴でしょう。
ピアノ、フィールドレコーディング、ボーカル、ノイズ、 発振器などが折り重なり、物憂いながらも柔らかみのある独特のノスタルジーを形成しています。
エモーショナルなアンビエント・レイヤーが積み重なり、立体感のある音像を形成しているように感じます。
静謐さを保ってはいますがピアノの旋律はより美しくなり、他の音像と結びついては相補的に発展するような展開をしているように感じます。
一つ一つの音へのフェチズムが主に感じられた前作と比較すると、本作は音と音の関係性のフェチズムを感じられるかもしれません。
静謐さの中で根を張るように広がっていく響きのふくよかさが、本作の魅力です。
結びに代えて
耽美の濃霧
改めて思ったのがSontag Shogunはポスト・クラシカル的な特徴だけでなく独特の耽美さを深く湛えているということです。
豊潤なロマンティズムが小さな音の粒に込められ、それらが大きな波となって奥行きの深い叙情空間を形成しています。
緩急のある展開があるわけではなく、聞き手を引き込むメロディがあるわけでもありません。
しかし、彼等の濃密な時間を与えてくれます。
耽美の濃霧で聴き手をしっとりと濡らすような。
主要参考サイト
https://www.fleursy.com/riccolabel/artists/sontag_shogun_japanese.html
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