Songs: Ohioのアルバムについて。陰鬱と暗黒に染まる、ブルース・スロウコア

こんにちは。

Songs: Ohioはオハイオ州出身のJason Molinaによるソロ・プロジェクトです。

Songs Ohia» Guitar Chords (5+ Songs)
https://chords.cloud/images/artists/640/songs-ohia.jpg

その音楽性はインディーフォーク、オルタナカントリー、スロウコアといったジャンルと紐づけられて語られることが多いようです。

文学的で物憂い雰囲気とカントリー的な素朴さを特徴としており、内省的な叙情性を深く湛えているのが特徴と言えるでしょう。

2013年に亡くなるまでの間、Songs: Ohio名義でのフルアルバムは7枚リリースされています。
本記事ではその全てを見ていきます。


※なお、Songs: Ohio以外にもMagnolia Electric Co.やJason Molinaといった名義でも活動しており、そちらでも素晴らしい作品が揃っています。

Songs: Ohioのアルバム一覧

これからリリース順にアルバムを見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成しました。

では、本題に入りましょう。

(1st)Songs: Ohio

デビュー作である本作は、メランコリックで物憂いフォークサウンドを特徴としています。
また、最も素朴なアルバムであるとも言えるでしょう。


スロウで陰鬱、深く立ち込める胸を打つような感傷。
それでいて素朴でカントリー的な風味も漂わせており、それが本作にインディー的な(つまり、ちょっと尖った)キャッチーさを与えています。

メロディアスで陰鬱なボーカル、
薄暗い叙情性を爪弾くアコースティック/エレクトリックギターやバンジョー、
息を潜めるような静謐なスロウさを紡ぐドラムスとベース。
飾り気のない剥き出しのメランコリーは深い影を帯びており、優しい感傷の奥底に深い絶望を滲ませています。

引き語りの作品も多く、Songs: Ohio諸作の中でもパーソナルでアコースティックな雰囲気が最も強いという印象を受けます。

柔らかく、剥き出しで、陰鬱。
箱庭的ながらも深い暗闇を湛えたアルバムです。

(2nd)Impala

前作のスロウな物憂さを変わらぬ魅力としつつも、生々しさがさらに剥き出しになっている印象を受けます。

ただ、オルガンの存在感が増していたり、
ファンク由来のスロウサウンドを演出してみたり、
アコースティックサウンドから脱却する瞬間があったり、
アコースティックギターの弾き語りでも一際力強くストロークする楽曲があったり、
ジャジーな瞬間を匂わせる楽曲があったり、
等々、陰鬱さを滲ませながらも力強さを感じさせる場面が現れています。

また、静かな曲では一際ダウナーさが迸っているのも見逃せません。

結果として、スロウで物憂い雰囲気を湛えつつもサウンドが多様化しています。そして、アルバム全体としてみたときには強弱がしっかり付いている印象を受けます。

さらに言えば、本作を覆う感傷から優しさが弱まったことにより、相対的にアルバム全体を覆う陰鬱さが増しているようにも感じられます。

もちろんカントリー的な素朴さも健在なのですがそれが緩衝材になることはなく、逆にその深い絶望をまざまざと見せつける役割を果たしているように思います。

胸に染み入るメランコリーと軋むようなダウナーさを併せ持つアルバムです。

(3rd)Axxess & Ace

沈鬱だった前作と比べ、やや小ざっぱりとした雰囲気が印象的です。

とはいえ、スロウで陰鬱であることには変わりはないのですが、均整が取れていることは前作の違いでしょう。
素朴さがさらに薄まり、その代わりに聡明な雰囲気を帯びている、という感じでしょうか。

優しく爪弾くようなアコースティックギターを軸にしてアルバムが構成されているため統一感があります。
また、時折女性ボーカルやストリングスを導入しており、IdaL’altraを連想させるスロウコア的ハーモニーも垣間見られます。


さらにそういえば、楽曲の盛り上げ方もエモーショナルさも極めて男女混成スロウコア的です。
いわゆるスロウコアに最も接近している作品とも言い換えることができるかもしれません。

ただ、垢抜けきらずに素朴なカントリー風味が顔を出すのはSongs: Ohioの個性と言えるでしょう。

内省的な静謐を湛え、文学的な叙情性を綴るアコースティックサウンドからは、今までにないほど透明感を帯びたメランコリーが姿を見せるときもあります。
しかし、その奥底には決して埋めることのできない虚しさを見つめているような絶望が眠っているようにも感じれます。


過去作に顕著だった心の闇をぐっと奥底に押し込んだアルバム、なのかもしれません。

(4th)The Lioness

いわゆるスロウコア的なサウンドに接近した前作を踏襲しつつ、より静謐に、より生々しく、より冷たい響きを湛えています。

女性ボーカルやストリングスのような壮麗さを加える要素は消えています。
スロウな曲調ながらも柔らかさはなく、鋭いエレクトリックギターの音色で陰鬱な感情を表現しています。


また、分かりやすくエモーショナルに爆発することがないのも特徴と言えるでしょう。
「間」や「静謐さ」を活かし、そこから浮かび上がる言葉や音色に陰鬱な感情を乗せており、詫び寂びにも似た寂静とした響きを創り出しています。


そのメロディは美しく、剥き出しの感情が込められています。
ある意味では1stや2ndのような生々しさが戻ってきていると言えます。ただし、その生々しい陰鬱を表現する方法論自体が(Songs: Ohioらしい素朴さを残しつつ)若干スマートになっているように感じます。

ただ暗い感情を吐き出すのではなく、上手にサウンドに織り込んでいるような印象を受けます。

金属的で孤独な響きが浮かびあがってはそっと消えていく、そんなアルバムです。

(5th)Ghost Topic

前作の寂静とした雰囲気はそのままですが、表現方法が多彩になっているのが特徴です。
曲というよりもサウンドスケープに近づいているとも換言出来ます。

もちろん、Songs: Ohio印とも言うべき暗黒カントリーフォークの匂いは十二分に残っています。

アコースティックギター、エレクトリックギター、ピアノ、マラカス、トライアングル、フィールドレコーディングなども取り入れ、スロウでふくよかなサウンドスケープを構成しているのが今までにない特徴でしょう。
複合的で柔らかな響きは、生楽器を中心としていながらもある意味ではエレクトロニカ的なのかもしれません。

静けさに浮かび上がる音色がそっと絡まり合いながら、ゆっくりと感情的な隆起を構築していきます。その高低さは楽曲によって異なりますが、物憂い雰囲気が損なわれることはありません。
陰鬱なボーカルが柔らかなサウンドスケープを暗く染め上げており、過去作同様に沈鬱な空気感が漂っています。

漆黒に染まっているにも関わらず馥郁とした響きを楽しめるアルバム、とも言えるかもしれません。

(6th)Didn’t It Rain

複雑な色彩だった前作から一変し、フォークやブルースの影響を強く感じさせるサウンドになっています。

ただ、物憂く内省的な雰囲気は変わりません。
柔らかなバンジョー、アコースティックギター、エレクトリックギターを中心としたアメリカンなサウンドを骨組みとしているにも関わらず、陰鬱さは変わらず揺蕩っています。


そして、スロウな曲調からはブルージィな叙情性が立ち昇り、振り絞るような一音一音から鋭い感情の軋みが感じられます。
ゆったりとした沈鬱なフレーズが繰り返され、土っぽくてダークな空気感は醸成していきます。

寂静とした静謐さに描かれる「間」を活かしたシンプルな音色には枯れた味わいがあり、それが本作の個性なのかもしれません。

余談ですが、個人的にはSteve’s Albini Bluesという曲名が割と好きだったりします。

(7th)Magnolia Electric Co.

前作のブルース・カントリー的要素をさらに強め、それに加えて骨太なサウンドになっているのが本作の特徴です。

あまりスロウコア的なニュアンスは感じられなくなっているのも特筆すべき点かもしれません。内省的な雰囲気は漂っていますが文学的ブルースとでも言うべき感じで、沈鬱・陰鬱という言葉はあまり当てはまりません。

しっかりとしたビートを刻むドラムスとベースの存在感は今までにないほど強く、エレクトリックギターからは土っぽい空気感が漂っています。

メランコリックな雰囲気を醸し出すこともありますが悲壮な重たさはまとっておらず、適度な苦みを織り交ぜた複雑な色味を放っています。

とにかく今までのSongs: Ohio印だったダウナーさはなく、
かといって優しくポジティブになったわけでもなく、
味わい深い塩梅の大人っぽいサウンドがゆったりと続いています。

酸いも甘いも嚙み締めた、いぶし銀の感傷を楽しめるアルバムとも言えるかもしれません。

結びに代えて:Songs: Ohioのアルバムについて

本記事の冒頭でも触れましたが、Songs: Ohioは彼の名義の一つに過ぎません。他の名義でも素晴らしい作品が揃っています。

主要参考サイト:Songs: Ohioのアルバムについて

https://en.wikipedia.org/wiki/Jason_Molina

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です