ユートピアのエレクトロニカ Serphについて


こんにちは。

Serphは、東京在住の男性音楽家です。
ジャンルとしては、エレクトロニカということになるでしょう。
童話のように空想的でポップなサウンドが特徴です。

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2009年のデビュー後、CM音楽作成や他名義での活動なども行っています。

そんな彼の各アルバムについて、特徴を見ていきたいと思います。

Serphの全アルバム

では、全てのアルバムをリリース順に見ていきます。
ただ、文字だけでは各アルバムの関係性が見えにくいので図にしてみました。


なお、時系列で特徴をまとめるなら、

  • 1st~3rd 現実逃避的なユートピアへ憧れ
  • 4th ユートピアからの脱却。こざっぱりとして眩い。
  • 5th~7th テーマに基づいてアルバム制作。作品ごとにカラーが違う。

といった感じになります。

では、各アルバムごとに具体的な特徴をさらっと語ります。

Accidental Tourist

デビュー作にして異色作です。

Serphのアルバムと言えば、普通は童話のような幻想感と胸が躍るような解放感がイメージされると思います。

しかし、本作に込められたエネルギーは「外へ外へ」というよりも「内へ内へ」といった雰囲気です。

とはいえ、絶望や苦悩観は皆無です。
ポップでジャジーでエレクトロニカで、おもちゃみたいに可愛らしいです。
聴いていると微笑ましい気持ちにさえなります。


デビュー作らしい初期衝動が最も詰まっているアルバムでもあるのですが、暴力的な発し方は一切されていません。

光も届かない深い海の底へと潜りづけ、ひっそりと埋もれていた宝石に出会ったかのような感覚です。
優しい世界の奥底で見つけた小さな奇跡を独り占めしているような、非常に稀有な初期衝動の発露が見られる一枚です。

Vent

Serph最大のヒット作でしょう。

スキップのような軽やかな曲調が多く、ポップな雰囲気が楽しいです。

エレクトロニカな土台のうえにジャズや映画音楽などの洒落た雰囲気とゲーム・アニメ的ファンタジーが違和感なく融合しています。
また、曲によっては様々なジャンルが次から次に現れることもあり、楽しい驚きを与えてくれます。

そして、キメどころで押し寄せる、巨大な鳥に乗って大空を舞うような解放感のすばらしさは言葉では言い表せません。
ひたすらに無垢なカタルシスを与えてくれます。

リリース当時のインタビューでは、社会的な立場がない、職がない、友達が少ないという精神的な飢餓感があると言っていました。
「ここではないどこか」にあこがれる切迫したエネルギーが存分に発揮されているアルバムとも言えるでしょう。

Heartstrings

非常に完成されているアルバムです。

前作の魅力が飛翔するような解放感なら、
本作の魅力は空の果てで辿り着いたユートピアを歩くような祝福感でしょう。

ゲーム・アニメ的な空想感ポップネスはそのままです。
しかし、優雅なストリングスやベル、ファンファーレのような管楽器、拍手の効果音など高らかに響き、祝祭的な非日常感が感じられます。

その一方ではビートは過去作よりもよじれたりしつつも、アップテンポになっています。

1st、2ndは明らかに逃避としてファンタジック・ジャーニーの様相を呈していました。
そして、3rdたる本作はその旅の果てに、祝福されるべき何処かへとたどり着いたのでしょう。

El Esperanka

今までは「自分のために曲を創ってきた」Serphが、誰かのために曲を創り始めた最初のアルバムだそうです。

心情の変化がサウンドに大きな影響を及ぼしているわけではありませんが、過去作よりも非常にこざっぱりとしたかなと思います。

内省的な過去作には自意識がまとわりついていました。
そして、それが洗い落とされるとシンプルでファンタジックな音楽になるわけです。

その影響のせいか、実験的な要素もあまり感じません。
無理矢理にでも個性を出そうとしなくなったのかもしれません。

とはいえ、楽曲の眩さと鋭さはこのアルバムが一番です。
肩の力が抜けた状態で、全身全霊で良い曲を創り上げたのでしょうか。

ストレートど真ん中で勝負をした、最も胸のすくようなアルバムでしょう。
ポップで眩くて軽やかで、希望に満ちたエレクトロニカです。

Hyperion Suites

「お伽の国のソウルミュージック」 
「所在が誰にも知らされていない謎めいたところにある、ハイペリオンという世界で一番大きな木」
をイメージしたアルバムだそうです。

確かにブラック・ミュージック的な要素を感じます。

ただ、前半は従来のSerph的なカラーが強く、60’s~70’s的なアナログなソウルの匂いはふわりと香っている程度です。
『ソウル』よりも『お伽の国』がカラーの方が強いですね。

しかし、後半になるとまさしくA面B面のようにそれが逆転します。
NujabesやMadlib的なブレイクビーツの上にSerph的な夢見がちなサウンドが乗っていたり。
Serph的な空想ビートの上に躍動的でジャジーな管楽器が乗っていたり。
肉体的なのに、純粋なSerphサウンドは鮮明に残っているのです。
なかなかの驚きでした。

本来両立しえないと思っていたものが、美しく混ざっているのには感激します。
ユートピアとかエスケーピズムだとかそういう基準では測れないような、未知の音楽に触れる楽しさが、味わえるのですから。

ハイペリオン、どんな場所にあるんでしょうか。

イルカの星 オリジナル・サウンドトラック

プラネタリウムのために書き下ろされたオリジナルサウンドトラックです。

主役に対しての脇役として創られたものであり、他のアルバムとは一線を画した特色を持っています。

まず、他のアルバムのような実験性や我の強さがありません。
多様な人が集まるプラネタリウムという空間を意識してか、ニューエイジやイージーリスニング的な耳触りの良いサウンドという印象をまず受けます。

ビートはおだやかで、Serph十八番のポップなストリングスはいつもよりもたおやかになり、ピアノやアコースティックギターの質感も生に近づき、それらの上に星の瞬きを意識させるようなキラキラとした電子音がちりばめられます。
まさしく、星空を見上げるのにぴったりのBGMでしょう。

ぐいぐいと前に出る他のアルバムと違い、あたたかな包容力が魅力的です。

Aerialist

「架空のロードムービーのためのサウンドトラック」 が本作のテーマとのこと。

サウンドとしては原点回帰ともいうべき王道Serphサウンドです。


ただ、従来の空想感満ちたエレクトロニカ印は健在ですが、アニメ・ゲーム的な過剰さはありません。
以前より健康的な雰囲気になっています


明るくて、高揚感があって、映画のような起伏があって。
ドラムンベースが大規模に導入されたせいかビートは強くなりましたが、Ventのような飛翔感があるわけではありません。

ただ、エモーショナルな表現が他のアルバムより強調されています。
洒落た壮大さがとにかく印象的なのです。

「洋楽」的だな、と思う瞬間が時々あるというか、そういう微々としながらも明確な違いがあります。
海外の名作映画を見ているような感覚にも近いかもしれません。

彼方に広がる見知らぬ光景に思いをはせるような、浪漫を感じさせる1枚です。

まとめ

Serphは個人的に非常に思い出深いアーティストです。
新宿のタワーレコードで出会ってから数え切れないくらい聴いてきました。
当時の出来事とか新宿の夜の風景なども、思い出してしまいます。

Serph感傷を呼び起こすような感覚があるのは、きっとノスタルジーや子供時代にどっぷり浸ったゲームミュージックなどのフレーバーが強いからなんでしょう。

今の自分は、何か大切なことを忘れてしまっているのではないか。
時折、そんな気分にさせてくれることがあります。
そして、一体何を忘れてしまっているんだろうと考えたりすることもあります。

それでは。

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