こんにちは。
Rivuletsはミネソタ出身のシンガーソングライターNathan Amundsonによるステージ・ネームです。

その音楽を形容してSlow Core/Sad Core(スロウコア/サッドコア)、インディーフォーク、インディーロックといったカテゴリーを付されることが多いようです。
アコースティックギターによる引き語りを楽曲の軸にしており、物憂さのなかに気品と艶を湛えたサウンドを特徴としています。
ゆったりとした曲調と囁くように密やかなボーカルが印象的です。
2021年3月現在、Rivuletsは6枚のフルアルバムをリリースしています。
本記事ではその全てを語ります。
Rivuletsのアルバムについて。
これからアルバムをリリース順に見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作ってみました。

では、本題に入りましょう。
(1st)Rivulets
シンプルで、生々しく、陰のあるサウンドスケープが揺蕩っているアルバムです。
囁くような男性ボーカル、
物憂いアコースティックギターのストローク、
時折添えられるエレクトリックギター/ベースや木琴等の単音長音符フレーズ、
必要最低限の構成要素によって生み出される「空白」には、ノスタルジックな儚さや悲しみの影がひっそりと染みこんでいます。
スロウで内省的で雰囲気を土台にしつつ、切なく淡い旋律が紡がれては消えていきます。
そっと曲が始まり、終わり、また始まっていく。
そして、ほんの一瞬軋むような悲痛さを垣間見せたりもする。
その繰り返しが聴き手の胸にメランコリーをじわじわと喚起していきます。
虚飾は一切ないため、内面が剥き出しになているようなヒリヒリとしたストイックさを感じます。
しかし、それと同時に育ちの良さや気品も感じられ、優美なテクスチャーが失われることもありません。
そのバランス感覚の塩梅が良く、独特の味わいを本作にもたらしています。
非常にパーソナルで、箱庭的な美しさを感じさせる作品といえるでしょう。
(2nd)Debridement
前作同様、シンプルで物憂いフォークサウンドを特徴としています。
ただ、ピアノやドラムスなどのパーカッションがほんの少しだけ存在感を増しており、僅かにではありますが色彩が豊かになっています。
ヒリヒリしているというよりも、ダークだったりノスタルジックだったりはするものの叙情性の深度が高まっているという感じでしょうか。
ソフトで消え入りそうな男性ボーカル、
物憂くも感傷的なアコースティックギター、
ピアノ、オルガン、ベース、バンジョーがそっと描き出す感傷的な奥行き、
時折顔を出し、優しい響きを添えるシンバル・パーカッション・ドラムス。
密やかさやアンニュイさだけでなく荘厳なニュアンスも帯びているのも特徴でしょう。
童話的というと言い過ぎかもしれませんが、ささやかなメルヘンさとダークさが違和感なく混ざり合っているようなバランス感覚が印象的です。
その一方で優しく澄んだ空気感も併せ持っており、パーソナルで儚い繊細さも漂わせています。
全体的には、淡く滲んでいくような柔らかいメランコリーが中心になっているように感じます。
そこはかとない気品があって、揺蕩うように物憂くて、かすかに幻想的で。
そんな淡い質感が微睡むように溶け合う奥底で、生々しい人間性が脈打っています。
パーソナルな空気感の周りを叙情性豊かな詩情が揺らめいているようなアルバムです。
(3rd)You Are My Home
物憂くて穏やかな空気感はそのままに、カントリーの匂いを帯びたノスタルジーがやや強めに出ているのが本作の特徴です。
アコースティックギターを中心にしたシンプルなサウンドに弦楽器やピアノを上手に織り込み、完成度の高さと素朴さが両立する柔らかな陰影を生み出しています。
じんわりと胸に迫るメロディを歌う男性ボーカル、
しっとりとしつつも風通しの良いアコースティック・エレクトリックギター、
古びた郷愁と澄み渡る凛然さを兼ね備えたピアノ・ストリングス・トランペット。
力強さを増した、時折顔を出すドラムス。
気品、静謐さ、メランコリーと言った魅力は変わらず息づいています。しかし土の匂いや草原の匂い、生活の匂いも感じられるようになっています。
また、ピアノ、ストリングス、ドラムスの存在感も要所要所で強まっており、物憂い静けさを保ちつつも緩急や色彩の変化が目立つようになっているのも特徴でしょう。
内省的で物憂い空気感を保ちつつ、インディーロック的なビートの強さを見せる瞬間もあります。
密やかなときも、エネルギーが静かに対流しているときも、血の通った律動を感じます。
儚く、影を帯びて、それでいてどこか懐かしい温度感が伝わってくるようなアルバムと言えるでしょう。
(4th)We’re Fucked
研ぎ澄まされたような完成度の高さと、感情の発露を感じられるアルバムです。
今までよりもさらにディストーションギター等で感情の昂ぶりを表現する場面が増えているのが印象的です。
ノスタルジック、というよりもリアリスティックという感じかもしれません。
無論、今までのような静謐さが本作の中心にあるのは変わりませんが、その穏やかさの中にもしばしば鋭い不穏さが閃く瞬間があるのも見逃せません。
線が細く、内省的な男性ボーカル。
アコースティックギターの柔らかな音色、
エレクトリックギターのエモーショナルな響き、
時折顔を出し、力強い躍動感を与えるドラムス。
余分な要素を削ぎ落した構成から染み出してくるサウンドは、陰鬱で鋭い透明度を感じさせます。
全体的にはエレクトリックギターの存在感が増していることも、重要なファクターでしょう。
陰のある気品を帯びたまま、メランコリックで力強い対流を巻き起こし、時には荒波のようにぶつかり合うこともあります。
繊細で、内省的で、時に感情が激しく渦を巻く。
本作の魅力はそんなところにあると思います。
(5th)I Remember Everything
ビートがしっかりと存在感を見せ、バンド的な一体感が強まっているアルバムです。
ソフトで気品に満ちた空気感を残しつつ、物憂さが減退してノスタルジックな優しさが印象的になっています。
起伏が控えめながらも凛とした質感の楽曲が連なりながら、アルバムは展開しています。
内省的で文化系的な男性ボーカル、
メランコリックなアコースティックギター、
穏やかながらも力強さを感じさせるエレクトリックギター、
ソフトではあるものの力強い骨組みとなっているリズムセクション。
今まで以上に各々の楽器が連帯してバンド的な一体感を生み出しており、平坦で味わい深いビート感を醸成しています。
地に足の着いた精悍さを携えて、自然体で、どこかビターな匂いもして。
全体的にリアリスティックな一面を感じさせます。
しかし、それでも魂に根差した純粋さを併せ持っているようにも感じます。
木漏れ日のように穏やかな解放感が揺蕩っているアルバムと言えるでしょう。
(6th)In Our Circle
いわゆるスロウコアから、さらにインディーロックへと接近しているアルバムです。
Rivuletsらしいゆったりとした質感を生かしつつ、有機的なグルーヴへと昇華していると言えるでしょう。
エレクトリックギターを主力にして、苦みと切なさを帯びたサウンドを紡ぎあげています。
エモーショナルに歌い上げる男性ボーカル、
大人びた渋みと情感たっぷりなエモさを見せるエレクトリックギター、
線は細いながらも精悍なリズムセクション。
ブルージィだったりソフトだったりと曲によって表情は異なります。しかし、いずれも輪郭がしっかりしており、柔な印象はありません。
持ち味とも言える育ちの良さや優しさは本作でも存分に発揮されていますが、初期のような物憂い感じはほぼなく、平坦としつつもゆったりとした浮遊感を感じます。
人間的な成熟が反映されているのかもしれません。
繊細で儚いブルースを、洋酒のように嗜みたいときにぴったりなアルバムだと個人的には思います。
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