さよなら昨日/レイト 変わるために必死にもがく、いじめられっ子のラップ物語


レイトは2008年にデビューしたラッパーだ。

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やってる音楽はヒップホップ、いわゆる日本語ラップということになると思う。

ただ内省的で暗い雰囲気があり、当時においては異色の存在だったのではないだろうか。
また、これも「当時」になるが、あまりレイトに関する情報は広まってなかったような気がする。

今回取り上げるのは『さよなら昨日』。
デビュー作に続いて2010年にリリースされたミニアルバムだ。

『さよなら昨日』の魅力

トラック:リンキンへの憧憬

まずはアルバムを覆うトラックの特徴について言及したい。

簡単に言ってしまえば、『さよなら昨日』は宅録のリンキンパークだ。

良くも悪くもアットホームで、それでいながら本家リンキンのようなエモくパワフルなサウンドが炸裂する。
また、ドープさとかいなたさとか、その手のヒップホップらしさとは遠いところにある。

その点から見るとリンキンらしいが、当然だがスタジアム級の貫禄や迫力があるはずがない。
本作のトラックは、言葉通りの意味での等身大がみっしりと詰まっている。

今聴くと粗さが目立つのも事実だが、だからこその歪な魅力があるのも否定できない。

リリック:いじめられっ子の物語

次にレイトの魅力である印象的なリリックについて触れよう。

『さよなら昨日』は、いじめられっ子「僕」が現状を変えようと奮起する物語だ。

奮起の決意表明とも言える表題曲『さよなら昨日』は、当時の日本語ラップ界においてはそう簡単には巡り合えない個性を有していたように思う。

特にいじめの現場といじめられる側の心情の切り抜き方が鮮烈だった。

ジュース買わされる 誰もが師匠
担任が言ってた 若いっていいねえ
こんなんでいいならくれてやるよ

『さよなら昨日』より

強烈だな、と当時思った。
また、絶対に自身の経験をもとにしているに違いないと。

だが、確か後のインタビューで実体験ではなくダークな冗談のつもりだったと言っているのを見て驚愕した記憶がある。

話を戻す。
『さよなら昨日』は大まかなストーリー形式になっている。
(つまり、ストーリーを構成していない曲もある)

表題曲で奮起した「僕」の日常を取り戻す寓話的に戦いを描く「巨人」、
友達とのモラトリアム的日常を切なく描く「流星」、
大学を辞め、段々と堕落していく様を描く「鴉」。

そう。「僕」は結局、這い上がることができなかった。

ドーナッツ お気に入りのドーナッツの味が変わった 超むかつく
誰を打ち首にすればいい この怒りをどう調理すればいい?

『鴉』より

一度奮起したにも関わらず、居場所を勝ち得たにも関わらず、「僕」は結局は元の場所に戻っていく。

人間、そう簡単には変わらない。
人生、そう簡単には好転しない。

そして、最後に。
友達の家で便所を詰まらせてしまうという、本当にみっともない日常を描いた『駄目』でアルバムは終わる。
(最後に『さよなら昨日』のリミックスもあるが)


勇敢な奮起で始まった『さよなら昨日』の幕引きは、あまりにも無常だった。

駄目だ 何にも上手くいかない 飽きた 全然面白くないよ
何とかなる? そんなことない 様子見ようよ 動かなくちゃ

どうにかなるさ

『駄目』より

自問自答のような「何とかなる?」「そんなことない」「様子見ようよ」「動かなくちゃ」の後に「どうにかなるさ」とぼそりと告げる。

あたかも自分自身に言い聞かせているかのようだ。


「希望はあるさ。どんなときにもね」という別の作品からの引用だが、『駄目』の結末はその言葉に少しだけリンクしているように思う。

希望があると思わなきゃ、もうどうにもならのだろう。


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