Red House Paintersのアルバムについて。スロウコアの森に佇む、孤高の詩人

こんにちは。

Red House Paintersは1988年に結成されたカリフォルニア州出身のロックバンドです。

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LowやCodeineと並び、Slow Core / Sad Core(スロウコア/サッドコア)のレジェンドとも言える存在です。
物憂い叙情性をたっぷり含んだ、長くしっとりとした曲調を特徴としています。

2021年7月現在、Red House Paintersは7作のフルアルバムをリリースしています。
本記事では、その全てを見てきます。

Red House Paintersのアルバム一覧

これからリリース順にアルバムを見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成してみました。

では、本題に入りましょう。

(1st)Down Colorful Hill

デビュー作らしい粗削りの魅力を感じさせつつも、物憂いRed House Painters節は既に完成されています。

スロウで耽美なサウンドがゆったりと長く続き、聴き手を影を帯びたメランコリーへと引き込んでいきます。
ただ、やや輪郭がぼやけている次作・次々作に比べると、比較的ロック的な芯の硬さを感じさせるのも本作の特徴でしょう。


内省的な静謐さを感じさせつつもキャッチーでメロディアスな要素が盛り込まれており、聴きやすい雰囲気になっています。

Mark Kozelekの味わい深いボーカル、
物憂く澄んだアルペジオや伸びやかなディストーションを使い分けるエレクトリックギター、
心地よいストロークが印象的なアコースティックギター、
控えめにサウンド全体を支えるベースとドラムス、
シンプルで詫び寂び的な魅力を醸成しており、長く続く曲の「間」から漂う物憂さには妙なる美しさがあります。

造りとしては素朴ですがしっとりと物憂い叙情性に濡れており、そのうえで決してダウナーに行き過ぎることはありません。
デビュー作としては珍しいバランス感覚で成り立っている作品なのかもしれません。


蒼さはあれど、地に足がついているような絶妙さが聴き手を惹き付けるようなアルバムです。

(2nd)Red House Painters (I or Rollercoaster)

前作のノーマルなインディーロック的な匂いが弱まり、物憂いスロウコア的な雰囲気が強まっています。

蒼くてほの暗い、感傷的な揺らめきがそっと紡がれていきます。
胸に突き刺さるような陰鬱さをエモーショナルに歌い上げることもあり、ダウナーなメランコリーを強めに帯びているという印象を受けます。


独特の深みを感じさせるMark Kozelekのボーカル、
影を帯びたアルペジオや伸びやかなディストーションを響かせるエレクトリックギター、
蒼い透明感を湛えたストロークを奏でるアコースティックギター、
後方からそっとサウンドを支えるベースとドラムス、
シンプルで「間」を活かすサウンド構成は変わりませんが、その「間」から漂う内省的な感覚は深みを増しています。

何度も物憂く澄んだ旋律を繰り返し、それは少しずつ深く暗くなり、美しくも苦悩を帯びた世界へと繋がっていきます。
最深部に至るときのひたすら乱反射するような苦悩の爆発には、息を呑むような凄みがあります。

全編を覆うアンニュイな穏やかさは、常に危うさを帯びています。
そして、時に急に足場が崩れるかのように、或いは敢えて踏み込んでいくように、心の奥底にある深い絶望へと落ちていきます。


Red House Painters諸作のなかでも、深い懊悩を帯びた作品と言えるでしょう。

(3rd)Red House Painters (II  or Bridge )

前作の路線を踏襲しつつも、物憂さとエモーショナルさを増しているのが本作の特徴でしょう。

澄んだ叙情性に含まれる影は強まり、時にずぶずぶと深みにハマるように苦悩と混乱の潮に飲み込まれていきます。

ただ、いつもと同じようにほ蒼い美しさを湛えている瞬間があるのも印象的です。
胸を打つメランコリーは本作においても変わらぬ魅力と言えるでしょう。

Mark Kozelekの繊細ながら太さもあるボーカル、
物憂いアルペジオや伸びやかなディストーションを奏でるエレクトリックギター、
澄んだ暗さを響かせるアコースティックギターのストローク、
そっと沈み込むようなビートを紡ぐベースとドラムス、
剥き出しの感情を表現するシンプルで美しいサウンドからは、痛みや孤独を訴えるような迫真さがあります。

ゆったりと繰り返される暗く澄んだエモーショナルな響きが、内省的な叙情性といつ崩壊するかも分からぬ危うさを濃密に醸成していきます。
静けさから揺らめき立つスロウな旋律は、時に一気にダークな奈落の底へと落ちていきます。
とりわけBlindfoldにおけるMark Kozelekの絶叫は、特に鬼気迫るものがあります。


また、だからこそ、その対比を成す静けさが持つ余韻に胸を打たれるという面もあるのでしょう。

ただ単にダークなわけではなく、多層的な物憂さを表現しているアルバムだと個人的には思います。

(4th)Ocean Beach

物憂い雰囲気を保ちながらも、風通しが良くなっているのが本作の特徴です。

全体的にアコースティック寄りに近づいており、風に揺れる草原のような叙情性を帯びています。
穏やかでゆったりとした叙情性を感じとることができるでしょう。


また、ストリングスやピアノを導入するなど、表現の幅を深めているのも印象的です。

全体的に柔らかになっており、前作までの諸作に見られた生々しい刺々しさはだいぶ引いています。

Mark Kozelekの感傷的なボーカル、
蒼い透明感を深く湛えたアコースティックギターやエレクトリックギター、
サウンド全体の叙情性を深めるストリングス、ピアノ、オルガン、
陰ながらアルバム全体を支えるベースとドラムス、
無駄のない構成で、しっとりとしつつも伸びやかな叙情性を紡いでいます。

ダークになることがないぶん、Mark Kozelekの歌うメロディの澄やかさも際立つように思います。
素朴で蒼い透明感がアルバム全編を覆っており、リラックスした雰囲気が心地よく感じられます。


アメリカの片田舎に付される郷愁や感傷を牧歌的なサウンドで表現しています。

淡い優しさを湛えた、ノスタルジックなアルバムと言えるでしょう。

(5th)Song for a Blue Guitar

個人的にはRed House Paintersで最も好きなアルバムです。

何と言ってもアルバムの冒頭を飾るHave You Forgottenが珠玉の出来です。
蒼い透明感を奏でるアコースティックなサウンドと繰り返される穏やかなメランコリックな旋律が、優しい感傷と一歩進む勇気を聴き手に与えてくれます。

アルバム全体に話を戻します。
前作の風通しの良さとアコースティック路線を維持しており、長く繰り返されるゆったりとしたサウンドスケープを構築しています。

もちろん、基本的にはスロウコア的な物憂いスロウなサウンドが通底しています。
ただ、カントリー風味を匂わせる曲がある一方、エレクトリックギターを利用したインディーロック然とした曲もあり、前作とはやや違った意味合いで表現力を高めています。

Mark Kozelekのそっけなくもエモーショナルなボーカル、
深みと透明感を帯びたアコースティックギターとエレクトリックギター、
控えめな時は控えめに、だけど主張するときは主張をするベースとドラムス。
シンプルなサウンド構成で、長くゆったりと、優しくもメロディアスに、影を帯びつつも開放的な雰囲気で楽曲は続いていきます。

蒼く澄んだ叙情性を湛えてリラックスした雰囲気になっていますが緊張感を含んだ展開もあり、聴き手を包むサウンドスケープの多様性を感じさせます。

Red House Paintersの「らしさ」が高い濃度で詰まっている同時にその「らしさ」を引き立たせるための手数も豊富であり、非常に完成度の高い作品に仕上がっています。

物憂い叙情性と蒼いメランコリーを色濃く感じられる、素晴らしいスロウコア・アルバムです。

(6th)Old Ramon

前作をさらに柔らかくて優しい雰囲気にしているのが本作Old Romanです。

伸びやかに繰り返される蒼い透明感を帯びた旋律が、心地よいサウンドスケープを構築しているのが特徴でしょう。
メランコリックではあるものの、台風一過のような晴れやかさも感じさせるサウンドになっています。


Mark Kozelekの深さを湛えたボーカル、
伸びやかな透明感を帯びたアコースティックギターとエレクトリックギター、
そっと寄り添うようにリズムを紡ぐベースとドラムス、
シンプルな構成でしっとりとしていますが、非常に快適さを感じる湿度になっています。
アルバム全体としても同様の質感で統一されており、一貫性があるのも印象的です。


繊細ではあるものの物憂い感じは控えめで、穏やかな叙情性が紡がれていきます。
静けさを感じさせるサウンドになっておりメロディも親しみやすく、文学的ながらもカントリーの風味も感じさせる、心地よい仕上がりになっています。


雑味の無い澄んだサウンドは今までの作品にはないほどの純度となっています。
郷愁や感傷は詰まっていますが特定の風景や地域を想起させるようなモノではなく、捕えがたい独特の存在感を放っているように思います。

メラコリックで穏やか、という意味合いにおいて統一感のあるアルバムとも言えるでしょう。

Red House Paintersのその後

Red House Paintersは2001年に解散しますが、中心人物のMark Kozelekは新たなバンドSun Kil Moonを結成します。
そして、現在でもバンドやソロ名義で数多くの作品をリリースしています。

どれも詩情豊かで、数多くの素晴らしい作品があります。

主要参考サイト:Red House Paintersのアルバムについて

https://en.wikipedia.org/wiki/Red_House_Painters

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