こんにちは。
Rachel Grimesはルイビル出身の女性ピアニストです。
かつては室内楽ポストロック・バンドRachel’sのリーダーとしても名を馳せていました。
エゴン・シーレの絵画をテーマにしたMusic For Egon Sieleが最も人口に膾炙しているでしょうか。
本作は2012年のバンドが解散した後にtemporary residenceよりリリースされた、彼女のソロ・アルバムです。
もともと室内楽と冠されていただけのことはあり、表層的な特徴としては非常にポスト・クラシカル的なものになっています。
The Clearingが奏でる空気 Rachel’sにはない迫力感
曲名から見えてくるもの
まず、曲名です。
アルバムの各曲を眺めていると気付くことがあります。
- The Air
- The Clearing
- The Air of Place
- The Herald
- The Air in Time
- In the Vapor with the Air Underneath
- Transverse Plane Vertical
- Transverse Plane Horizontal
- The Air, Her Heart
- Further Foundation
- The Air at Night
ほぼ全て空気に関するタイトルです。
「このレコードの『空気』は空気や空の自然な要素を反映しているんだ」という彼女の一言も意味深です。
本作のテーマとしては、空気なのでしょう。
音の特徴
ポスト・クラシカル?
しかし、その内容は、『空気』と言う言葉から我々が連想しがちな軽やかなものでは決してありません。
空気感を構成する全てが重厚なのです。
楽曲の中心にあるのは、間違いなくRachel Grimesのピアノです。
穏やかでありながらバンドサウンドのような迫力があり、いかなる時も芳醇で美しい音色であり続け、そしてアルバム世界の基部を成す重々しさも伴っています。
弦楽器達を丁寧に調合して生み出されるのは、耐えることない緊張感や人間がいるかのような生々しい気配、
ハープが生み出す幻想的で、聴き手を誘い込むようなメルヘンさ、
ベースやパーカッションが生み出すのは、ひりひりした躍動感。
それらが編み上げるサウンドは、クラシカルでメルヘン的なポスト・クラシカルではあります。
(ジャズっぽい曲もあったりしますが)
ただし、それは表層的な特徴に関しての話です。
ポストロック?
本作は、非常に重々しく迫力に満ちているのです。
テンポが速いわけではありません、
歪ませた轟音がさく裂するわけではありません、
ブレイクビーツでぶちあげるわけでもありません。
ポスト・クラシカル的な優雅さを持ちながら、ポストロック的な迫力を内包しているのです。
使っている楽器こそクラシックですが、奏でられたサウンドとしてはレーベルメイトでもあるMonoやExplosions in the Skyにも似ています。
そして、仄かではあるもののも、常に漂うメランコリーの香りも。
曲を織り成す内面
『空気』がテーマであるにしては、非常に多様な感情が曲ごとに行き交っていますし、(精神的な意味での)重低音が効いています。
これは一体どうして……と、思っていたらレーベルのサイトに素敵な言葉が書かれていました。
The Clearingは非常に深い内面世界からやってきた個人的な記憶、人間関係、神秘などを探究する儚い瞬間達が行き交う風の細道だ。
https://www.temporaryresidence.com/collections/rachel-grimes/products/trr256
『空気』には、彼女の様々な想いが込められているのでしょう。
それはきっととても私的で、
決して軽々しくはないもものはずで、
こうやって見せてくれることはありがたいことなのかもしれませんね。
思いを馳せながら、耳を澄まして聞いてみるのも良いかもしれません。
まとめ The ClearingにRachel Grimesが込めたものは?
本作のアルバムタイトルをずらっと並べていると、ある程度のストーリーがあるのを感じ取ることができます。
- 空気があって、そこを綺麗にする。前兆を感じ取る。(The AirからThe Herald)
- 蒸気や飛行機など移動していく。(The Air in~からTransverse Plane Horizontal)
- Heart、foundationなどの言葉とThe Air at Nightというタイトル、意味深なタイトルで終わる。
前兆を感じて旅立ったんでしょう。
彼女を取り巻く『空気』は、一体何だったんでしょうか。
我々には、与り知ることが出来ませんが。
それでは。
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