話梅鹿(Prune Deer)のアルバムについて。感傷的な美意識と自意識を張り叫ぶ、香港発ポストロックバンド。


こんにちは。

話梅鹿(Prune Deer)は2013年に結成された香港出身のポストロックバンドです。

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toeに影響されてポストロックサウンドに傾倒していったそうです。

また、日本の音楽全般にも大きな影響を受けているらしく、彼等のバックボーンである中華圏のニュアンスも色濃くにじませつつも、どこか現代日本にも通じる旋律を感じさせます。

柔らかな雰囲気はChonと似たところもありますが、話梅鹿(Prune Deer)は明確に東アジア的な感性をその魅力としています。

そんな彼等は現在3作のアルバム/EP(媒体によって表記が異なる)をリリースしています。

本記事では彼等の作品の魅力を語ります。

話梅鹿(Prune Deer)という香港発ポストロックバンドのアルバム/EPについて語る。

Solid Transparency 實心透明

1stアルバムですが、意外なことに一番卒なくまとまっているように感じます。
若々しいきらめきだけではなくしなやかなポップネスも武器にしつつ、胸を打つ旋律を奏でているのが特徴です。

小気味よく、程よくメロディアス。
時にマイルドに、時にソリッドに。
瑞々しい感性で純粋無垢なポストロックサウンドを展開していきます。

透明感に満ちたアルペジオを紡ぐこともあれば、望郷を感じさせるぼやけた轟音を捧げることもあるエレクトリックギター。
堅実かつ流麗に低音部を支えるベース、
力強くバンド全体を支え、時にはアグレッシブに鳴らされるドラムス。

アンダーグラウンド感を出し過ぎることもなく、切なくポップなニュアンスを保っています。
そして、それが本作最大の魅力的と言えるでしょう。

舞い散る花吹雪を思わせる儚い高揚感はもちろんのこと、苦々しい痛みや若々しい衝動さえも入り混じっては消えていく。

そんな等身大の生の感情をアジア的なポップネスを媒介にして花開かせている、
稀有なバランス感覚のうえに成り立っている作品と言えるでしょう。

Chemistry 科學

前作よりもサウンドは柔らかくなっていますが、心の不安定さを反映するような危うい瑞々しさは増しています。

今作も過度にぶっとんだりせず、かといって難解なわけでもなく、まとまったポストロックサウンドに仕立て上げています。
しかし、それと同時に自意識の美意識が奔流のように溢れ出す瞬間もあり、それが本作Chemistry 科學の強烈な魅力になっています。

流れゆく雲霞を思わせる柔らかく澄んだエレクトックギターの音色、
耳触りの良いベースラインとドラムス。
雲海のように儚く流れていくサウンドが土台になっています。
だからこそ、きめどころで現れる柔らかなディストーションサウンドが、予想を超えて心に大きく響きます。

それは唸るような轟音ではありません。荘厳なカタルシスでもありません。
等身大の感傷です。
そして、澄み渡るように美しい感傷の轟音が去った後には、抜けない棘のような痛みが心に残っています。

穏やかさな曲の奥底で若々しい感傷の痛みが、軋む薄氷のように今にもひび割れそうになりながら佇んでいます。

瑞々しい胸の疼きを自然体で描き出しています。
心の奥底で泣き叫ぶ、あの日の自分と出会えるようなアルバムです。

Insufficient Postage

ポスト・ハードコアに近づけるというコンセプトのもとで作られた本作Insufficient Postageは、今までにないエモーショナルさを湛えています。
個人的には最推し作品です。

本作の場合、ポスト・ハードコアに近づけたというのはマッチョさを増したということではなく、より激情的にしたと理解すべきでしょう。

話梅鹿(Prune Deer) 特有の柔らかさは変わりません。
優等生的な卒の無さが消え去り、バランスを崩してでもエモーショナルさを全開にしています。
繊細な感受性を解き放つエレクトリックギターのアルペジオ、
中華的な郷愁を奏でる琴の音、
過去作よりもやや力強さを増したベースとドラムス。
叙情的な美しさを増しながら、擦り傷からにじみ出る血のような感傷をさらけ出しています。

春ねむりを迎えたReturnは特に美しく、セカイ系的とさえ呼べるような自意識的な激情を迎えています。

ただ、あくまでもノスタルジックな柔らかさがサウンドから失われなていはいません。
凄絶な感傷を奔流のように放ちながらも、そこに荒々しい怒気が混じらないように細心の注意が払われているように感じます。

揺蕩うようなサウンドと美化された自意識の奥底にある感傷にこそ、ポスト・ハードコアの精神が宿っているように感じます。
尖りまくってた頃の新海誠作品をそのままポストロックサウンドに変換したような、激しい感傷が渦を巻いています。

あまりにも朧気で、あまりにも痛々しく、どうしようもないほど美しい。
人を選ぶかもしれませんが、刺さる人には強烈に刺さるアルバムだと思います。

話梅鹿(Prune Deer) 近いはずなのに近くにいないアジアのバンドについて

結びに代えて

アジアのバンドは日本と似た感性を持っていると感じました。

だからこそ、日本でしか生まれないとついつい思いがちな感受性の発露が香港でも生まれていることに、驚きを覚えました。

だけど、似ているけれども確かに違います。
その微妙なズレにとても引き込まれます。

そして、こんなに面白いバンドが現れるアジアの世界との僕達の世界には高い壁があるように感じます。
遥かに遠くて異質な欧米の文化よりも高い壁が。

壁が無くなれば、もっと相互に交流できれば、もっと活き活きとした何かが生まれると思うのですが。

それでは。

主要参考サイト

https://www.prunedeer.com/ http://www.bigromanticrecords.com/post/prunedeerinterview

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