Part Timerのアルバムについて。緻密で繊細、静謐で柔らか、儚い音の揺蕩い

こんにちは。

Part Timerはオーストラリアを拠点に活動するJohn McCaffreyによるソロ・ユニットです。

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ジャンルとしてはエレクトロニカやアンビエント等が当てはまるでしょう。
柔らかな電子音や生音が、長年の風雪に晒されたような風合いを帯びながらゆったりと響いています。

2021年8月現在、Part Timerは5作のフルアルバムをリリースしています。
本記事ではその全てを見ていきます。

Part Timerのアルバム一覧

これからリリース順にアルバムを見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成しました。

では、本題に入りましょう。

(1st)Part Timer

ノスタルジックでアンビエントなエレクトロニカを世に送り出していたMoteerからリリースされたアルバムです。
レーベルの特徴に沿った、アナログ的な質感を帯びた柔らかなサウンドが紡がれています。


プチノイズ風の柔らかなノイズ
そっと転がる泡沫のようなビート、
アコースティックギターやピアノの心地よい音色、
時折挟まれる囁くようなボーカル、
フォーク/アンビエント/童話的叙情性を深く湛え、静謐で透明感を帯びたテクスチャーを構築しています。

深い森のようで妖精的な不思議さを感じさせつつ、
丁寧に編まれたパッチワークのような緻密さも感じさせつつ。


繊細で、丁寧で、アコースティックなテクスチャーを帯びていて。
優しく、優美で、どこかいびつさもあって。

箱庭的で小さい世界だけれども、丁寧に織り込まれたサウンドからは豊かな感受性を読み解くことができます。

分かりやすい派手さや目新しさはありませんが、その魅力をデコードするのが楽しいアルバムです。

(2nd)Blue

1stと同じ路線ですが、メロディアスで緩急がやや強めについている印象を受けます。

なんでもPart Timer自身の妻に捧げられたアルバムなんだとか。


静謐で、叙情的で、フォーク的で。
瑞々しいバイオリンの調べとアコースティックギターの素朴な響きが混ざり合い、丁寧で細やかなビートと共に転がっては溶けていきます。

前作は童話的/妖精的なニュアンスを帯びていましたが、本作はよりパーソナルな空気感が濃厚になっています。
感傷的で、メランコリックで、温もりもあって。
そして、素朴ながらもメロディアスで。

穏やかはありますが感情表現が豊かになっており、持ち前の緻密さを武器にして丁寧に心の機微を描いています。

暖かい感情を静謐なテクスチャーに落とし込んだ、派手さはないモノの丁寧なアルバムと言えるでしょう。

(3rd)Real to Reel

2ndよりも静謐になりつつも、メロディアスさを強めている印象を受ける作品です。

相変わらず魅力的な要素となっているフォークな一面が心地よいです。
繊細で細やかなビートはエレクトロニカ的なニュアンスを帯びていますが、生楽器的な優しさが強く前に出ています。


アコースティックギターやシンセの音色と囁くような女性ボーカル(empressのボーカリストも参加しているようです)が、並行するようになだらかに伸びていきます。
アンビエント的で音景を生み出すような音の揺らめきがそっと続き、時に木霊しながら静寂へと溶けていきます。

時折レコード風のノイズが入るのも魅力的です。

また、1stの頃のような童話性/妖精的なニュアンスも少し戻っているのも重要な点でしょう。

緻密で素朴なサウンドメイキングは本作でも魅力的で、派手さはなくとも美しいテクスチャーを丁寧に紡いでいます。

暖かくて、優しい。
メランコリックで、くすんだ情景のように美しくて。
色褪せた記憶のような、儚い美を漂わせたアルバムです。

(4th)A Nation in Tatters

エレクトロニカ的要素が薄くなり、箱庭的なポスト・クラシカルに接近している作品です。

ピアノやストリングスが繊細で緻密なサウンドを創り出し、静謐な風景美を描き出しています。
優しいノイズやエレクトロニカ的なビートもほぼなく、アンビエントで囁くような調べがそっと続いています。


ただ、密やかさの中に今までよりもエモーショナルな響きが感じられるのも特徴と言えるでしょう。

細部までこだわりぬいたミニチュアの世界で、そこに息づく感情を感じ取れるような。
空想の世界を丁寧に描いた結果リアリティが宿ったような、儚い現実感が揺蕩っています。


素朴なのに細密で、感傷的でメランコリックで。
手を触れたら壊れてしまいそうな、細部まで行き届いた、繊細な美しさが宿っているアルバムです。

(5th)Reaching Ends

エレクトロニカ要素が薄れたままエレクトリックギターの存在感が強まっており、サイレントなロックサウンド的なニュアンスを強めているのが本作の特徴でしょう。

テンポはスロウながらもドラムスが導入されている楽曲があったのは重要な変化でしょう。オルゴール調のサウンドやストリングスも相まって、静謐ながらもエモーショナルなサウンドが展開されています。

繊細なエレクトロニカビートも顔を出し、細やかで緻密なサウンドテクスチャーを編み上げています。

本作の魅力は、やはりサウンドの多様性でしょう。
アコースティックギター/エレクトリックギターの虚飾の無いサウンドやストリングスの優美な調べ、
オルゴール調サウンドのどことなく妖精的で不思議な響き、
二胡(?)のような妖しいニュアンス。

古びているのに気品を漂わせているテクスチャーには森の洋館やそこから見上げる夜空のような非現実性があって、そこで様々な物語が繰り広げられていることを連想したくなるような活き活きとした雰囲気もまた漂っています。

風雪に晒されたような古びた質感と、
そこから立ち昇る温かなアットホームな空気感と、
非現実的な優しさと。

アナログ的で非現実的な優しさの中に現実的な躍動感を秘めた、不思議なアルバムです。

主要参考サイト:Part Timerのアルバムについて

https://parttimer.bandcamp.com/

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