『オデュッセイア』について。英雄の冒険活劇と親子の絆。~簡単なあらすじとともに~

こんにちは。

紀元前文学第28回は、古代ギリシアを代表する流浪の英雄譚『オデュッセイア』です。


トロイア戦争を描いた叙事詩『イリアス』に登場する英雄の一人オデュッセウスが様々な困難を乗り越えて故郷を目指す流浪譚であり、古代から現代に至るまで長きに渡り愛されてきた物語といえるでしょう。

成立は紀元前八世紀頃とされていますが、『イリアス』よりやや遅いとも考えられているようです。

『オデュッセイア』のあらすじ わかりやすいように

『オデュッセイア』のストーリー展開は、大きく分けると二つに分けることができます。

  1. 様々な困難に遭遇するオデュッセウスの船旅
  2. 故郷イタケに着いた後の、屋敷で好き放題暴れていた連中への復讐劇
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オデュッセウスご本人です。強そう。

また、主な登場人物としては下記の通りです。

オデュッセウス一家

  • オデュッセウス 主人公。頭がよく、口が達者で、超強い。
  • テレマコス オデュッセウスの一人息子。将来有望だが、一人で困難な状況を解決するにはまだ経験不足。
  • ペネロペイア オデュッセウスの妻。いわゆる「貞淑」な人。
  • エウマイオス オデュッセウスの領土の豚飼。オデュッセウスへの忠義が熱くて良い人。

オデュッセウスが旅の途中で出会う人たち

  • カリュプソ オルデギュエ島に住む仙女。オデュッセウスを魅了しようとする。
  • アルキノオス バイエケス人の王。遭難していたオデュッセウスを救い、故郷へと送り届けてくれる。寛大。
  • キュクロプス 一つ目の巨人。機転を利かせたオデュッセウスに敗れる。
  • キルケ アイアイエー島の女神。人を豚に帰る魔術を使えるが、妙にお人よし。オデュッセウス好き。

オデュッセウスの屋敷で好き放題に暴れている連中

  • アンティノオス 主無きオデュッセウスの屋敷で好き放題している悪者の筆頭各。オデュッセウスの妻に強引に求婚している。
  • エウリュマコス 主無きオデュッセウスの屋敷で好き放題している悪者の口が回る枠。イケメン。オデュッセウスの妻に強引に求婚している。

神々

  • ゼウス オデュッセウスの最終的な運命を決める人。
  • アテネ オデュッセウスたちを気にかけ、助けてくれる。
  • ポセイダオン オデュッセウスに怒りを覚え、何かと邪魔をする。

では、物語の流れを追っていきましょう。

(1)様々な困難に遭遇するオデュッセウスの船旅

息子テレマコスの冒険

女神アテネゼウスに対して、女神カリュプソのもとに長年足止めされているオデュッセウスを帰還させるよう請願する場面から幕を開けます。
慎重なゼウスとは対照的に、アテネの行動は速やかでした。

まず、アテネは変装をしたうえでオデュッセウスの屋敷に現れます。
屋敷では、主がいないのを良いことに屋敷の中にはアンティノオスエウリュマコスといった無数の無法者がたむろし、騒ぎ、勝手に家畜を食い、ペネロペイアに求婚をしていました。

しかし、年若いテレマコスには彼等に立ち向かう力がありませんでした。

アテネはそんなテレマコスを叱咤激励します。
それから船に乗って、トロイア戦争を父オデュッセウスと共に戦った英雄たちのもとへ向かい、その消息を尋ねるように勧めます。

テレマコスはイタケの集会でペネロペイアへの求婚者たちを非難し人々の支持を集め、出立に必要な人工と船を工面することに成功します。テレマコスアテネに付き添われ、旅立っていきます。

そして、テレマコスはネストルやメネラオスのもとにむかい、オデュッセウスが生存しているという情報を手に入れます。

オデュッセウスの旅立ち

ポセイダオンがいない時に、神々はオデュッセウスを帰国させることを決定します。
オルデギュエ島でオデュッセウスを引き留めていたカリュプソのもとにその知らせが届きました。

オデュッセウスに好意を持っていたカリュプソは不承不承ながらもオデュッセウスにその話を伝えます。
長旅の果てに仲間も船も失い、悲嘆に暮れていたオデュッセウスも気持ちを入れ替えてカリュプソの支持通りに筏を作り、大海原に漕ぎ出しました。

オデュッセウスの帰国が決定されたことを知ったポセイダオンは激怒して海に天変地異を起こし、オデュッセウスを絶体絶命の危機に陥ります。
しかし、アテネや海の女神レウコテエの助けもあり、オデュッセウスはどうにか陸地に流れ着きました。

そこはバイエケス人の住む国でした。
アルキノオスや王女ナウシカアから歓待を受け、宴が催されます。そして、その席でオデュッセウスは自分の旅を語ります。

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バイエケス人の住む国に上陸したオデュッセウスです。

オデュッセウスの旅路

語られる出来事の時系列は、話はカリュプソに出会う前に巻き戻ります。

風に流され、仲間や悪天候で失いながら一つ目の巨人キュクロプスが暮らす島に辿り着いた場面から物語は語られます。


そこは多くの家畜が歩き回り、作物が実る豊かな島でしたが、主たるキュクプロスは極悪残忍でした。
オデュッセウスの部下は生きたまま丸呑みされてしまいます。
状況は絶望的なようにも思えましたがオデュッセウスは酒で酔わせて眠らせた後に一つ目を巨大な丸太で貫き、何とか島を脱出します。

続いて、オデュッセウスたちは風の神アイオロスの島で歓待を受けます。
別れの際に嵐の風を封じ込めた革袋を部下が宝物と勘ぐって開けてしまったせいで、再び旅路は雨風が吹き荒れれるものとなってしまいます。

さらには巨人のようなライストリュゴス族の島に流れ着き、多くの部下を失います。

続いてアイアイエー島で女神キルケと遭遇をします。
キルケは魔法で先遣隊として派遣されたオデュッセウスの部下たちを豚に変えてしまいます。
しかし、オデュッセウスは事前に情報の神ヘルメスからもらった秘薬の力により、豚にはなりませんでした。


キルケは一転してオデュッセウスに好意を抱くようになり、部下たちの姿を人間に戻します。

冥界訪問と出立

そして、豪華な食事などと共に一年を底で暮らしましたが、やがて島を去る決意をします。
キルケは冥界に足を運び、冥界の女神ペルセポネイアの屋敷にいるテイレシアスから今後の予言を訊いてくるべきだと助言します。

冥界で出会ったテイレシアスは道行きについての予言を語りました。

さらにオデュッセウスたちはアキレウスをはじめとしたトロイア戦争の戦友たちと再会し、ヘラクレス、オリオンなどの名の知れた英雄の姿も目にします。
それから、今は亡き母などから自分の屋敷の現状についての話も聞きだすことに成功します。

今後に待ち受ける困難をするような予言をキルケにされたあと、島を後にしたオデュッセウスたちは、再び旅立ちます。
誘惑の歌を歌うセイレンたちの海域を超え、不死の怪物スキュレから逃げ出して。

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サイレンからの誘惑を絶えているオデュッセウス。

そして、荒れた天候の中を進み、カリュプソのいるオルデギュエ島へと辿り着いたのでした。

(2)故郷イタケに着いた後の、屋敷で好き放題暴れていた連中への復讐劇

オデュッセウスの帰還

オデュッセウスが長い流浪譚を語り終えると宴は終わりました。
そして、バイエケス人たちは大な量の財宝・土産物と共に彼を船で送り出します。


その旅の途中、オデュッセウスは疲労のあまりぐったりと眠ってしまい、故郷イタケについても目覚めません。
バイエケス人たちはオデュッセウスを寝かせたまま、故郷へと帰ってしまいまいした。

目覚めたオデュッセウスは自分がどこにいるのか分からず動揺しますが、アテネに故郷イタケにいることを告げられます。

アテネオデュッセウスの正体がばれぬよう見た目を老いさせ、服装もボロボロにさせ、屋敷を取り戻すための解決策を授けます。

息子との再会・求婚者たちとの衝突

オデュッセウスは指示通りに豚飼エウマイオスを尋ね、親切にもてなされます。

一方、テレマコスアテネにせかされ、イタケへと帰国します。そして、エウマイオスの小屋でオデュッセウスと再会します。
しばらく会話をしたのち、オデュッセウスは正体を明かし、二人は涙を流して喜びます。

テレマコスは屋敷に帰り、後を追うようにしてオデュッセウスも豚飼に連れられて屋敷に戻ります。

屋敷ではアンティノオスなどの求婚者たちが勝手に家畜を潰し、宴を繰り広げていました。
テレマコスは彼等と共に食事をしながら殺伐とした会話を繰り広げます。

続けて、オデュッセウスが屋敷に戻り、物乞いをします。
アンティノオスオデュッセウスが語る旅の話にも興味をしましません。そして、オデュッセウスに食事の施しをしようともしませんでした。


器の小ささをオデュッセウスにそのことを指摘されたアンティノオスは激高し、肉をオデュッセウスめがけて投げつけます。
しかし、オデュッセウスは動じませんでした。

妻との再会

オデュッセウスが求婚者たち殺害のための知恵を巡らせていると、ペネロペイアがやってきます。
オデュッセウスは自らの素性を適当にでっち上げつつ、自分は過去にオデュッセウスが会ったことがあると話します。

ペネロペイアは素直に信じられずに夫の服装について尋ねますが、当然オデュッセウスは見事に答えてみせました。
ペネロペイアは涙を流して夫の不在を悲しみました。

ペネロペイアは古くから屋敷に努める女中エウリュクレイアにオデュッセウスの足を洗うように告げます。

エウリュクレイアは幼少時につけた足の傷によりオデュッセウスの正体に気づきます。しかし、オデュッセウスは硬く口止めをしました。

復讐の始まり

ペネロペイアアテネに促され、かつてオデュッセウスが使っていた大弓を持ちて、十二の斧を射通すことができたものに嫁ぐと宣言します。

求婚者たちは的を射ようとしますが、弓はあまりにも大きく糸を張ることさえできません。
エウリュマコスはこのままでは自分たちがオデュッセウスに力で劣っているという恥ずべき事実が過去に残ってしまうことを気にします。


ペネロペイアは主不在の家で勝手に飲み食いをしている連中がいまさら名誉を気にしているほうがおかしいと指摘します。

しかし、テレマコスは屋敷や弓に関する扱いで自分より権力のある者はいなく、ペネロペイアに部屋に戻って機織りや糸巻きをするようにきつく言い放ちます。ペネロペイアは部屋へと戻って泣きながら眠りました。

しかし、それが戦いの火蓋となりました。

オデュッセウスは弓を手に取るとまるで竪琴に弦を貼るかのような自然さで弓に糸を張りました。
そして、アンティノオスエウリュマコスを射殺します。さらにテレマコスらと協力して求婚者たちや彼等に与していた連中をことごとく撃ち殺します。

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復讐をするオデュッセウスとテレマコス。

そして、惨殺の後を片付けた後、ペネロペイアを起こします。そして、オデュッセウスの帰還を伝えます。

ペネロペイアは自分たちの寝室がどんな形になっているかオデュッセウスは尋ねます。そして、オデュッセウスは見事に答えてみませました。

二人は20年ぶりの再会を喜びました。

父との再会:後日談

オデュッセウステレマコスらは、オデュッセウスの父ラエルテスの家に向かいます。そこで感動の再会を果たします。
そして、求婚者たちの一族が復讐にやってきますが、オデュッセウスたちは返り討ちにします。

そこでアテネの仲介により両者は和解して物語は幕を閉じます。

『オデュッセイア』の魅力:心躍る冒険とオデュュッセウス一族の物語

『オデュッセイア』の良いところは、シンプルに面白いところだと思っています。

もちろん、現代人から見ると不思議な冗長さや、苛烈すぎる復讐の仕方、差別的な観念などもあります。
ただ、物語の骨組みとなっている構成が非常に面白いのです。

ここでは3点に分けて『オデュッセイア』のその面白さを紹介します。

魅力1 オデュッセウスの大冒険

やはり最大の魅力は奔放な想像力が作り出した冒険でしょう。

海の彼方から聞こえる蠱惑的なセイレーンの歌声、
一つ目の巨人との生き詰まるような戦い、
不死の化け物の傍をそっと通り抜けていく緊張感、
人を豚に代えてしまう美しい女神、
冥界で出会うかつて戦友。


次から次へと訪れるバリエーション豊かな逆境を、オデュッセウスは持ち前の機知や神々のアドバイスによって解決していきます。

王道的な冒険譚の展開と言えるであり、戦争譚であった『イリアス』とは大きく違う点でもあります。

魅力2 クライマックスの盛り上がり

屋敷で好き放題をしていた求婚者たちをオデュッセウスが成敗するところは、まさしく勧善懲悪、非常に盛り上がる場面と言えます。

特にオデュッセウスは物語の最中に散々な目にあっているので、矢が悪役にばっさりと刺さる瞬間の高揚感たるや現代エンターテイメント顔負けです。

ただ、現代人から見ると少々やりすぎな気もする激しさもありますが。

魅力3 一族の物語

また、親子三代の絆が描かれているのも特徴でしょう。

主役であるオデュッセウスの逞しさと家族への愛情、
息子テレマコスの成長、
そして、子との再会を喜ぶラエステス。

人と人との絆の暖かさを感じさせる古代には珍しい物語と言えるでしょう。

結びに代えて:『オデュッセイア』と現代

過去の物語は常に現代との対話という意味合いを持ちます。

我々にも共感しやすい親子の愛情も描かれていることもあれば、まるで理解できない残虐な復讐が賞賛されていることもあります。
そして、そんな毛色の全く違うパーツが一つの物語に両方とも存在していることが普通です。

何であんな倫理観とこんな倫理観が一つの物語の中に納まっているのんだろうと思うときもあります。
理解できないと思うこともあります。


しかし、そんなときは物語全体を俯瞰してみるべきではないでしょうか。
全体を見ると決して理解できない部分も残っているけれども、それでも全体の絵としては調和のとれた世界観を保っているようにも感じられます。


理解はできずとも、共感できずとも、仲良くできずとも。存在する意味は分かる。そんなような。

そして、これってなにも過去と現在との対話だけでもなくて、同じ現在に存在する誰かとの対話にも当てはまると思うのです。

仮に不愉快でも、仮に理解することができなくても、全体としての調和を感じとることができる。
そんな距離感を見つけることが社会生活を営むうえでとても大事で、そのヒントは古代の叙事詩に潜んでいるように思います。

それでは。



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