至高のイデア・エレクトロニカ Near The Parenthesis / Cloud.Not Mountain



こんにちは。


Near The Parenthesisはフランシスコを活動拠点にしているTimothy Arndtによるソロ・プロジェクトです。
エレクトロニカの人気レーベルn5MDの看板アーティストであり、多くの名作を世に送り出しています。

彼の特徴は、心地よくエモーショナルなサウンドと正統派エレクトロニカ・スタイルです。
とりわけ5th albumにあたる本作は、エレクトロニカの理想と言っても過言ではない完璧なバランス感覚を持つ傑作といえます。

Near The Parenthesisが誇る名作Cloud.Not Mountainの魅力について

魅力(1) 透き通るようなシンセ

本作は様々な音色のシンセが重層的に多用されていることです。

それは時に水晶の鐘を思わせる伸びやかに澄んだ音色であり。
真珠色の濃霧を思わせる柔らかにたなびく浮遊音でもあり。
蜃気楼の向こうできらめく黄金を思わせるおぼろげなノイズであり。
さらに時折加わるピアノの音色が、芳醇な気品を曲中に振りまきます。


宝石のように透き通った数多の音色達が絡まりあいながら、ゆっくりと目の前を通り過ぎていきます。

魅力(2) 心地よいリズム

リズムの心地よさも素晴らしいというほかありません。
なだらかに広がるベースラインは暖かく。
刻まれるビートはきめ細やかで、時に敢えてリズムをずらすのがまた心地よく。

これぞエレクトロニカ、という生ドラムスでは再現不可能な包容力と慈しみを感じさせます。

魅力(3) 意図的な不協和音

瞬間的な不協和音を意図的に発生させているのも鮮烈です。
微かな違和感が浮かび上がってはすぐに消えていくことで、聴き手は無意識にその正体に関心を持ち、引き込まれるのです。


エモーショナルなNear The Parenthesisの世界へ、ゆっくりと奥深く。

魅力の総括

様々な音色が反響しあいノスタルジックな余韻を残しながら、ゆっくり広がる霧のように楽曲は進んでいきます。
叙情的な無数の旋律が溶け合い、柔らかなビートの上に混ざり合う。
雪の結晶が舞い降りては消えていく、そんな詩情に満ちた光景を連想させてくれる音楽です。

また、本作は単に心地よいだけではありません。
上記の魅力が組み合わさって決して派手ではないものの、エネルギーを感じさせる旋律や曲展開も構成されているのです。
それも、捉えようとしても簡単に捉えられないような言語化不可能な感情が。
耳触りの良いサウンドの裏には、密やかな熱を持った感情が蠢動しています。

Cloud.Not Mountainはエレクトロニカ界の正統傑作。(もちろんNear The Parenthesisの作品としても)

本作は無個性なエレクトロニカか?

本作は世間がイメージするエレクトロニカというカテゴリーを体現している作品です。
シンセと生楽器。小気味よい打ち込みのビート。
耳触りの良い、しかし、どこかで聞いたことがあるようなサウンドというわけです。

確かに本作は誰が聴いてもエレクトロニカだとカテゴライズするでしょう。
人によっては、無個性と批判するかもしれません。

どんなカテゴリーにもオリジネイターと呼ばれる人達のそのサウンドには強烈な特徴があります。
後のフォロワーたちにはないような、いびつさと言い換えても良いような自我です。
荒々しいエネルギーが猛っていることも珍しくありません。

ですが、それはもちろん賞賛すべきことです。
それこそが時代を切り開いた彼等の才能なのでしょう。
そして、本作には、そんな煮えたぎるようないびつさはありません。

理想を完璧に体現するという個性とそして、

しかし、本作にはオリジナリティがないということではありません。

まず第一に、皆のイメージどおりのサウンドであるということは、皆の期待を完璧にこなして見せているということです。

さらに本作はそんな期待に応えながら期待を超越しています。
期待を良い意味で裏切るようなエモーショナルさを乗せているのです。

それがどんなエモーショナルさなのかは受け取る人によって全く感じ方が違うような、多層的な感情が込められているのです。
皆の期待を完璧に応えるだけでなく、その期待の先にあるものをつかみ取っているともいえるでしょう。

それができるだけの作品は極めて希少です。
強烈なオリジナリティを有し、聴き手の心に「何か」を残す、時代に残るアルバムといえるでしょう。





それでは、また。



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