パレスチナ発、Muqata’aのアルバムについて。妖しく都会的、アブストラクト・ビート

こんにちは。

Muqata’aはパレスチナを拠点に活動するラッパー/プロデューサーです。

https://ra.co/dj/muqataa

ジャンルとしてはエクスペリメンタル・ヒップホップになるのでしょうか。
時にオリエンタルな雰囲気をまといつつ、グリッチ飛び交うアブストラクトなトラックを構成。アンダーグラウンド感漂う、ストイックなビートを錬成しています。

2022年8月現在、Muqata’aは5作のソロアルバムをリリースしています。
本記事ではその全てを紹介します。

Muqata’aのアルバム紹介

(1st)Hayawan Nateq – حيوان ناطق

個人的には、まずはこれを聴いてほしい。ソロ名義唯一のラップ作品です。

オリエンタルでアブストラクト、キレキレのビートとラップがぶつかり合って熱量高めのサウンドを構築。中東的なネタもサンプリングしつつ妖しい雰囲気を醸成、グリッチを交えることで実験的で知性的なニュアンスを添えています。

ループする太いビートに細かく飛び交うウワモノ。かなり煙たく荒ぶっているのですが、どこか都会的なスマートさがするのも本作の特色です。

ヒップホップ的でドープな世界。最初から最後までその濃度が薄まりません。

中東的感性が生みだした、アンダーグラウンド感あふれるヒップホップです。

(2nd)La Lisana Lah – لا لِسَانَ لَه

前作と違ってインストゥルメンタル作品です。

ラップがなくなった分、トラックの実験精神が強まっています。アブストラクトなうごめき/中東的な旋律が強まり、アート性が高いアラビアン・サウンドに変化。

トラップ的なビートも顔を出し、ちょっとコミカルになったり、奔放にうごめくようなビートで瞑想的な浮遊感を醸成したり。

(極端にぶっ飛んではいませんが、)抽象的(アブストラクト)という言葉が似合う音を楽しめます。
Kutmahあたりをイメージすると近いです。

(3rd)Dubt Al​-​Ghubar – ضبط الغبار

人類は人工知能に不要とされ、種と文明は滅亡する。しかし、人類無き世界に不足感を覚えた人工知能たちは人類が残した音を回収する。すると人工知能たちの間に思想の差異が生まれ、人類と同じように戦いをはじめ……。そして、わずかに生き残った人類もまた反旗を翻し……。

というコンセプトで作成された作品。

どことなく未来的で、どことなくアラビアン。そして、今までの作品よりも重厚さがあります。ダイナミックに脈打ち、うごめく、力強いビートが印象的。

実験的で煙たい質感のヒップホップでありながら、生き物めいた不穏さがあります。


戦いの結末が気になる作品です。

(4th)Inkanakuntu

最も中東感が強く出ている作品です。

サンプリングなのか生演奏なのかは(素人の私には)分からないモノが多いですが、しっかりとアラビアンな旋律が現れています。突然チョップされたりしますが。

全体的にゆったりとしており、未来感/都会感はやや下がり、中東のさびれた路上を思わせる魅力的な空気感が漂います。


ただ、後半になるにつれていつものエクスペリメンタルな一面がビビッドに登場。一筋縄ではいかない、知的探求心を刺激するトラックが詰まったアルバムです。

(5th)Kamil Manqus كَامِل مَنْقوص

ヒップホップ感を残しつつ、もっとエレクトロニック・ミュージック/ベース・ミュージック/ビートミュージックに寄った作品です。

ビートがやや下がったことで不穏な空気感が目立ち、2010年代以降の世界的な潮流とのリンクが強まっているように感じます。カテゴライズ不能な異形なる音の蠢きが、のたうつように繰り広げられます。

闇夜に目を光らす獣のような、凄みが鮮烈です。中東っぽさはやや引きましたが、もっと普遍的なアンダーグラウンド感を帯びています。

Muqata’aが新たな一歩へと踏み出した作品なのかもしれません。

主要参考サイト

https://muqataa.bandcamp.com/

open.spotify

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