mumというバンドについて。うたかたのノイズが織りなす童話のような白昼夢。

こんにちは。

mumはアイスランド出身の音楽演奏集団です。

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ジャンルとしてはエレクトロニカになるでしょう。
様々な楽器や電子音を用いて、童話のように幻想的な音楽を構築しているのが特徴です。


2020年2月現在、彼等は6枚のフルアルバムをリリースしています。
本作ではそんな彼等の全アルバムを語ります。

mumというバンドの全アルバムについて

相関図とリリース時期による分類

これから各アルバムについて語ります。
ただ、文章だけではイメージが掴みにくいと思い、相関図を作ってみました。

また、mumのアルバムは前半期と後半期で大きくサウンドが異なります。
本記事においては下記のように分類しています。

  • 幻想世界期(1st~3rd)
  • フォークロア期(4th~6th)

では、アルバムごとに見ていきましょう。

幻想世界期

(1st)Yesterday Was Dramatic Today Is OK

彼等の記念すべきデビュー作です。

本作の特徴は、童話性の高いサウンドをほぼインストゥルメンタルの楽曲で構成していることです。

おとぎ話に混入したノイズのようなビートが軽やかに転がり、
電子音、アコーディオン、ブロッケンシュピーゲルが繊細な風景を作り上げます。

童話的な妖しさとまどろむ様な揺らめきが同居しているのが魅力的です。
柔らかなビートが息をひそめるように続いていき、その上に生楽器の艶めかしくも優しい響きが揺蕩っています。
そして、ほんのり漂う甘い毒の気配も。

エレクトロニカ史においても重要な意味を持つアルバムです。

(2nd)Finally We Are No One

幻想性と童話性がもっとも濃密に立ち込めているのが本作Finally We Are No Oneです。

前作よりも全体的にゆったりとしたテンポ感になり、叙情性も深まっています。
小刻みに揺れるエレクトロニカなビートはまどろむように心地よく、アコーディオン、チェロ、グロッケンシュピーゲルなどの楽器は夢幻的で温もりに満ちた調べを奏でます。
そして、複雑かつ繊細なサウンドに、双子の女性ボーカルが無垢で妖しい色彩を添えていきます。

徹頭徹尾、本作は森の奥深くに立ち込める濃霧のように幻想的です。
乱舞する妖精のように可愛らしいときもあれば、不意に毒っぽい重たさを見せることもあり。
変幻自在に姿を変える魔法の森を彷徨っているような気持になります。
非日常的なディープさが圧倒的に深く、むせかえるほどに妖しい童話性に魅了されるでしょう。


不可思議性と幻想性が一気に高まった一枚です。

(3rd)Summer Make Good

双子の片割れギーザがバンドを去った後にリリースされた3rdアルバムです。

童話的ながらも暗く荒涼とした雰囲気にシフトした印象を受けます。
アコーディオン、ピアニカ、グロッケンシュピーゲル、エレクトリックギターといった生楽器の暖かな音色、さらには電子音やサンプリングが生み出す心地よくも幻想的な音色は前作までと変わりません。
しかし、軽やかさは後ろに下がり、音数も控えめになっています。
寂静としたサウンドスケープがひそやかに広がっているのです。

本作ではサンプリングが印象的に使われているように感じます。
環境音や生活音、あるいはテレビの音なのでしょうか。
ビートやメロディよりも空間の奥行きで魅せるような曲も多く、そこに漂う薄暗さがシンプルながらも重厚な幻想性を醸し出しています。

mumのなかで最も物憂いアルバムと言えるでしょう。

フォークロア期

(4th)Go Go Smear the Poison Ivy

もう一人の女性ボーカルのクリスティンも脱退し、 作風を大きく転換させた4thアルバムです。

童話的な雰囲気を残しつつも妖しさが減衰し、ポップな雰囲気になっているのが特徴です。
サーカスのような愉快さとほの暗い影を感じさせる雰囲気が印象的です。

ピアニカ、アコーディオン、ピアノはもちろんのこと、サンプリングや電子音、ゲームミュージックっぽいサウンドを導入したりと遊び心を感じさせる朗らかな曲が多くなっています。

また、ビートが強めになっているのも特徴かもしれません。
ただし、その一方でノスタルジックな旋律が胸を打つ楽曲も顔をのぞかせています。
そういった意味で、本作は一般的なポップ・ミュージックにやや近づいたと言えるでしょう。

端的に言ってしまえば、過去3作に比べて小ざっぱりとしたサウンドになっています。
夢から覚めると、田舎町のさびれた遊園地が目の前に現れたような。
そんな歓喜と哀愁と、少しの悲しみが。

(5th)Sing Along to Songs You Don’t Know

前作の延長線の果てにあるような作品です。

歌モノっぽさが増して、童話性の中にもフォークロアな匂いが強く立ち込めているのも特徴でしょう。

アコーディオン、ピアノ、アコースティックギターを用いたシンプルな楽器編成とシンプルなビートの構成によって生音の存在感が増しています。
また、男女混成ボーカルが歌う爽やかなメロディは今までの作品にないインディーポップ/フォーク的な雰囲気を本作に与えています。


多幸感を放つビートが高らかにうねることもありますが、ひっそりとしたノスタルジーを奏でる曲がメインになっています。
複雑ながらも耳触りの良いビートがアイデンティティとなっていたmumにとっては、意義深い方向転換かもしれません。
そして、それが功を奏してアットホームな質感に仕上がっています。

歌モノ的なキャッチーさと穏やかなノスタルジーを織り合わせた、じんわりと温かいアルバムです。

(6th)Smilewound

前作のフォークロアな流れを踏襲しつつ、電子音の存在感がやや強まっています。

ハイになるような曲は少なく、ゆったりとした歌モノの曲を中心にアルバムは展開していきます。
軽やかで耳に優しい電子音の響き、
アコースティックギター、木琴、ストリングス、ピアノといった楽器の穏やかな音色、
その上で紡がれる男女ボーカルによる感傷的な旋律。

キュートなビートや電子音の存在感が強まった結果、初期のような幻想性も戻ってきました。
しかし、同時にノスタルジックでフォークな枯れた味わいも強く感じさせます。


キャッチーなポップさを感じさせる曲も多くありますが、前作よりも落ち着いたトーンがアルバムを覆っているように感じます。

牧歌的でありながらも湿り気を帯びているとでも言えば良いのでしょうか。
電子音楽やニューウェーブが持つひんやりとした暗さと、根底でつながっているように感じます。

耳に心地よい良い音楽が聴きたいけど、アンニュイな時に聴きたくなる一枚です。

結びに代えて mumというバンドの音楽は逃避の道具か?

mumはメンバーも流動的で、音楽スタイルも大きく変化するバンドです。

ただ、その根底には童話的な世界観が力強く屹立しています。

それは決して子供向けに漂白された物語ではありません。
人間が本来抱える欲望や心の闇がむき出しのまま渦巻いていて、全てが矛盾だらけで、それでいて全てが美しく調和をしているような、人間や人間社会の在り様を反映しているようにも感じます。

子どもが直面し、やがては飛び込んではいかない社会そのもの。
いずれは向き合い、自分なりに消化/昇華しなくてはならない現実そのもの。
誰もが乗り越えられるわけではない、残酷な世界そのもの。
苛烈な日常が時々見せる、心温まる瞬間。
世界の欺瞞にも似た美しさが、彼等の音楽の本質だと思うのです。

mumの音楽は現実逃避の道具なんかでは、きっとないはず。
そう思いました。


それでは。

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