MONOというバンドについて。 日本的な幽玄さと凶暴なギターノイズ



こんにちは。

MONOは2001年のデビュー以来、世界を活躍の場にしている日本のバンドです。

カテゴリーとしてはいわゆるインストゥルメンタルのポストロックバンドになります。
Mogwai以降の潮流である『轟音による静と動』一派の中では、最も影響力を持っているバンドの一つでしょう。


他の轟音ポストロックを凌ぐほどの叙情的な旋律と凶暴な轟音との両極性が、MONOの魅力です。

2021年9月現在、MONOは11作のフルアルバムをリリースしています。
本記事では、その全てを見ていきます。

MONOのアルバム一覧

言葉だけだは分かりにくいと思い、相関図を作成してみました。

では、リリース順にアルバムを語りたいと思います。

黎明期(Mogwai感強め)

最初期のアルバムです。
アルバム全体からもいわゆるロック的なビート感が目立つなど、MONO独自の音楽への発展途上にある作品です。
また、多大な影響を受けたと思われるMogwaiの影響が色濃く残っています。

【1st】 Under the Pipal Tree

デビュー作だけあってMogwaiの影響が随所に感じられます。
旋律や曲の節々から漂う匂いがMONO的というよりもMogwai的です。

その後、彼等はクラシカルな曲構成に近寄っていくことでオリジナリティを獲得していきます。
しかし、この段階では叙情性と凶暴性がより強めなMogwaiといった趣にあっています。

ただ、最もエネルギッシュな一枚であることは間違いありません。

オリジナリティ確立期(若々しくエネルギッシュ)

MONO独自の個性を獲得した時期です。
クラシックの影響を消化し、気高さと凶暴さが洗練されていきます。
また、作品を経るにつれ、徐々に壮大になっていくのもこの時期の特徴でしょう。

【2nd】One Step More and You Die

MONO独自の匂いが顕著に感じられるのは本作からでしょう。
『静』での幽玄の叙情的な美しさ、『動』でのエモーショナルな轟音。
MONOのアンデンティティの原点がここにあります。

また、特徴的なのはその清らかな『静』と、その全てを踏み潰すように重苦しい『動』の雰囲気です。
地底の澄んだ湧水を思わせる、優しいギターアルペジオ。
安らぎを切り裂くように降り注ぐ、地鳴りのようなギターノイズ。

重苦しいパートでは、孤独を抱えて真っ暗闇の地底を下っている気分になります。

MONOのアルバムの中で圧倒的な深い闇をまとっているといえるでしょう

【3rd】Walking cloud and Deep Red Sky, Flags Fluttered and The Sun Shined

初めてストリングスを導入したアルバムで、戦争がテーマになっているようです。

深い悲しみからの再生が描かれているのでしょうか。
美しいギターやストリングス、ギターノイズの咆哮。
スティービ・アルビニ録音のごりごりとした生々しさ。
深い虚無と、果てしなく広がる青空。コントロールできない哀しみ。
空高く伸びていくようなノイズ。


広大な情景を喪失感を抱えながら見上げているような感覚といえるでしょう。
形容しがたい複雑な感情を想起させてくれます。

【4th】You Are There

MONOと言えば、この1枚でしょう。
降り積もる吹雪のように冷冽な旋律と、夜の雪山で燃え上がる劫火のような轟音。
氷のような重苦しさと灯のような希望が混然一体になっているだけでなく、太古の詩人が詠い上げたかのような荘厳さをまとっている不朽の名作でしょう。

本作の重々しさはサウンド的な部分ではなく、もっと違うなにかに根差したものです。
ブラック・サバスみたいにヘヴィーなんじゃなくて、ベートヴェンみたいにヘヴィーなんだ」というレーベルの売り文句は非常に的確だと思います。

【5th】Hymn to the Immortal Wind

MONOの個性が最も強調されているアルバムです。

『輪廻転生を繰り返す男女の物語』という極めて日本カルチャー的なコンセプトで描かれた曲の数々。
バンド史上最大規模で導入された室内管弦楽団。
そして、一音一音全てに感情を叩き込んだかのような壮大なる叙情性。

気品ある管弦楽団とバンドサウンドのダイナミックな轟音は鮮烈にぶつかり合い、溢れんばかりの光と闇となって互いを飲み込もうと火花を散らし、やがて一つになって遥かな高みへと昇っていきます。

しかし、MONOサウンドの根幹を成す荒々しさは決して失われていません。
世界を相手に戦ってきた日本出身者だからこそ成し遂げられるような、前人未到の金字塔ともいえる大傑作でしょう。

円熟期(力強く、聡明な雰囲気に)

この時期から変化がみられるようになります。
生き急ぐような性急さの代わりに、物事を深く見据えるような聡明さが曲から漂うようになります。
また、アルバムの収録時間数も短めになります。

【6th】For My Parents

タイトル通り両親へと捧げられたアルバムです。

MONOのアルバムでも最も慈しみに満ちています。
ストリングスは柔らかく、曲の展開も強烈な緩急をつけているものは少ないですね。
じわじわと染み渡るように轟音へ移行していくのも本作の特徴でしょう。

暖かい慈愛に彩られているのは轟音が感じられます。
そんな柔らかさに心揺さぶられるという、愛おしい感覚を味わうことができます。

特にUnseen Harborは名曲です。
こんなに慈しみに満ちたインストの楽曲が存在するのかと衝撃を受けました。

【7th】The Last Dawn

光と影の2対でリリースされたアルバム。本作は光の方です。

光の名にたがわぬ瑞々しい音が洪水のようにやってきます。
しかし、そこには華奢な印象はありません。


まばゆいストリングス。
力強いドラムス。
あふれかえるノイズは光のように美しく。
後を引く余韻は宙に戯れる光の花びらのように優しく舞い、消えていきます。

知性的にして慈しみに満ちている。
穏やかで力強い。

それが本作の特徴でしょう。

【8th】Rays of Darkness

光と影の2対でリリースされたアルバム。本作は影の方です。

完成度の高さは失わぬまま、重々しい感情が炸裂しています。
心の闇を一筆一筆キャンバスに描き出しているかのような荒々しい筆さばきと、俯瞰的な眼差しが同居しています。

切れ味鋭いクールさが漂う漆黒の重たさです。

燃えるような心の闇と、氷のような冷静さ。
本来は共存しえない両者が補完しあい、漆黒のオーロラを思わせる唯一無二の芸術的美しさを築き上げています。

克服期(獰猛だけどポジティブ)

この時期のアルバムにも、共通の特徴があります。

まずどちらも非常に攻撃的なサウンドをしています。
さらに、マーチング的なリズムが時折顔を見せるのも特徴です。
どちらのアルバムも何かを乗り越えようとするスタンスによって作られています。


前に進もうとする姿勢がサウンドになって表出しているのかもしません。

【9th】Requiem for Hell

日常の出来事にインスピレーションを受けて曲を創っていたらダンテの神曲とのテーマ的類似に気付き、寄せていったという本作。
つまり、本作は「生と死と愛」の叙事詩、というところでしょうか。

轟音の獰猛さと、穏やかなパートの荘厳さの対比には心奪われます。
そして少しずつ少しずつ轟音へと昇り詰めていくカタルシスにも。

凶暴なギターノイズ、荘厳なピアノやストリングス、勇敢に歩みを進めていくようなドラムス。
その全てが、天界や死者の国を舞台にする壮大な物語を描き出します。

「神々しい轟音」はMONOの代名詞ですが、神々しさにおいては本作に勝るものはないでしょう。

【10th】Nowhere Now Here

バンド・マネージメント関係の大きなトラブルを乗り込めるために創られたという一枚。

過去への決別がテーマになっているだけのことはあり、怒り狂う激情のような冒頭曲から始まり、傷ついた魂とそこからの再生を描くような展開が続きます。
とてもパーソナルであり、だからこそ力強く荘厳な轟音が紡がれていきます。

全体的に、過去作のMONOにはない特徴が多くみられる異色作です。

例えば、『静』のパートで時折見せる打ちひしがれた雰囲気。
『動』のパートで見せるあけすけなまでに人間的な怒り。

また、前に進むという決意を象徴するかのような、バンド全体が前のめりになっているリズム感の曲があるのも非常に印象的です。

MONOのアルバムにおいて、最も人間味にあふれる一枚でしょう。

柔和期(ノイズと慈愛)

今までの轟音や生々しさを維持しつつ、緻密な表現力が今まで以上に印象的になっています。

【11th】Pilgrimage of the Soul

コロナ禍の混乱にあった(そして、今も続いています)2020年の夏に制作されたのが11作目にあたるPilgrimage of the Soulです。

そのサウンドは、大きく転じています。
慈愛や優しさ、穏やかさや柔らかさを感じさせる局面が非常に目立つようになっているのです。


もちろん、MONOのサウンドはポストロックのカテゴリーに属するものです。
そして、生々しく粗々しいテクスチャーは変わっていません。
MONO最大の魅力とも言える叙情性だって、何も変わっていません。

ただ、以前のアルバムにも存在していた静謐な曲の存在が強まり、激しさを用いる曲も柔らかな印象を与えるようになっています。MONOが持つ緻密な表現力が豊かに伸びやかに表現されています。

その一方で活き活きとした生命力を感じさせるのは、夏に制作されたからなのかもしれません。

静謐で繊細なサウンドの時にも、ダイナミックで叙情的なサウンドの時にも、生命の美しさにも通じる透明感が湛えられています。

個人的には、轟音ポストロックという枠組みを脱する兆しを感じさせるアルバムだと思っています。

まとめ MONOというバンドについて

MONOの音楽にはクセがあるかもしれませんが、非常に美しい音楽を奏でているのも間違いのない事実だと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です