Mogwaiのアルバムについて。轟音ポストロック最強の真祖 ~名盤の数々と共に~

こんにちは。

Mogwaiは1995年に結成されたスコットランド出身のインストゥルメンタル・ロックバンドです。

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カテゴリーとしては、一般的にはポストロックとみなされていることが多いようです。
後に数多く現れることになる轟音ポストロックの礎になっているという事実は、特筆すべき点でしょう。


ただ、良い意味で「いかにもインディーズ!」という雰囲気がしないのが、Mogwaiと後発勢を分ける差異なのかなと個人的には思っています。

2021年8月現在、Mogwaiは10作のフルアルバムをリリースしています。
本記事では、名盤だらけのアルバム全てを見ていきます。

Mogwaiのアルバム一覧 ~名盤の数々を振り返る~

これからリリース順にアルバムを見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作ってみました。

では、本題に入りましょう。

(1st)Mogwai Young Team

前史:リリースされるまで

MogwaiはStuart Braithwaite,Dominic Aitchison,Martin Bullochの3人で「本格的な(serious)ギター・ミュージック」を作るために結成されました。その後、John Cummingsが加わったのち、シングルTunerをリリースします。さらにコンピレーションへ参加したりシングルやEPをリリースした後に元Teenage FanclubのBrendan O’Hareをラインナップに加え、本作Mogwai Young Teamはレコーディングされました。

また、SlintやSonic Youth My Bloody Valentine等を愛するMogwaiにとって、OasisやBlurといったブリットポップが隆盛を極めていた状況は苛立ちを覚えるものだったも述べています。それも、本作Mogwai Young Teamに反映されているのかもしれません。

本作の魅力

轟音ポストロックを生み出し、ポストロック史に燦然と輝くターニングポイントとなったMogwaiのデビュー作となったアルバムです。

メロディアスで開放的な穏やかなパートと、粗いノイズがしなやかに凶悪に炸裂するノイズパートを繰り返しながら本作は展開していきます。
とはいえ、後続の轟音ポストロック勢と違って「形式」にはハマっていません。自由奔放で天衣無縫なファズギターが、高らかに轟いていきます。


また、彼等が愛するSlint、Sonic Youth、My Bloody Valentineの影響が匂い立ち、オルタナ/ポストハードコア的な粗さも存分に感じられます。

そんな粗さを帯びつつも緩急の「緩」では澄んだメロディを奏でており、聴き手を引き込む(粗く、ややくすんだ)透明感が印象的です。

そして、その粗さはノイズが炸裂するときにはその破壊力を一気に加速する着火剤になっています。
時にダークに、時に伸びやかに。轟音の質も楽曲によって多種多様です。

また、Mogwaiの場合、その音に情念的・極度に感情的なところは全くなく(後続のEITSMONO65dosと違い)、真っすぐに良い音楽を創ろうという意図を感じられます。

ハードコアな質感があって、オルタナ的な轟音があって、そして、晴れやかな空のようで。
「音楽」の美しさと活き活きとした躍動感が、本作には漲っています。

オリジネイターとしての貫禄を感じさせる、圧巻の名盤です。

(2nd)Come on Die Young

前史:リリースされるまで

アルバムリリース後にBrendan O’Hareはバンドを離れ、Barry Burnsが代わりに加入しました。なお、このラインナップは2015年まで続きます。

その後、リミックスアルバムやブラックサバスのカバーなどをリリースしています。

その後、Dave Fridmannをプロデューサーに迎え、MogwaiはCome on Die Youngの制作に取り掛かりました。

なお、本作のリリース後、MogwaiはBlur: Are Shiteと書かれたシャツの販売を行っています。ブリットポップへの拒否感やミュージシャンとしての姿勢が表れているように思います。

本作の魅力

The For Carnationのような張り詰めた静謐さが魅力的な作品になっています。

1stで鮮烈な印象を残した轟音は登場しません。
ただ、美しいメロディと物憂い緊張感を絶えず含み、良い意味での粗さを残しながら影を帯びた叙情性を描いていきます。


初期ポストロック/ポスト・ハードコア/スロウコアの生々しさをMogwaiスタイルの感情的すぎないメロディアスというフィルターを通して表現している作品とも言えるかもしれません。

楽曲もミニマルです。余計な要素を削ぎ落したサウンドには迫力を感じさせる空白が漂い、穏やかさの中にも凄みを感じさせます。

ただ、やはり本作もいわゆるポストロック的な枠組みに収まっている感じはせず、肩ひじの貼らない自由さを感じさせつつ、それでもMogwai的な魅力は存分に発揮されています。

Mogwaiがバンド結成時に目標とした「本格的な(serious)ギター・ミュージック」を見事に体現している作品と言えるかもしれません。

媚びるようなキャッチーさはなく、ただ真摯に音楽と向き合ってオリジナリティを追求しているようなストイックさを感じます。

美しい音楽と物憂い音景、静けさと緊張感。
生々しくも叙情的な音楽が展開しているアルバムと言えるでしょう。

(3rd)Rock Action

前史:リリースされるまで

前作は、UKアルバムチャート29位という成功を収めます。
たた「この先もこのメンバーで音楽を創ることが出来る」と確信できたそうで、完成された過去2作とは異なる作風を追い求めるようになります。

それまで自分たちが行ってきたこととは距離を置き、新しいことをやってみようと試みるようになったようです。NYにも足を運んでみたりととにかく様々なことにトライをしてみたとのこと。

また、同時代のポストロック・バンドにインスパイアされたことも大きかったようです。

そして、バンドは再びDave Fridmannをプロデューサーとして迎え、新作Rock Actionをリリースします。

アルバムの魅力

エレクトロニクスを導入することにより、ギターミュージック的な枠組みに収まらない多彩なテクスチャーを披露しています。

シンセ、ピアノ、ストリングスなども導入されており、表現の幅が広がっています。
ただ、その一方でMogwai特有の感情的すぎないメロディアスさは健在で、伸びやかな響きを楽しむことが出来ます。

管楽器などのギター以外のサウンドも重ねつつ、ではありますがやや轟音的なアプローチも復活しています。
いわゆる轟音とはやや毛色が異なるところが、本作の特徴を成しているのかもしれません。


エレクトロニカ的な繊細さもあり(Remote Viewer参加楽曲もあり)、「静」と「動」の二元論とは異なる観点で楽曲を構築しています。

もちろん叙情性とダイナミズムは変わらず存在しており、多様なアプローチと共に波状的にMogwai流の叙情的ハードコアの世界に聴き手を引き込んでいきます。

余分な要素を惹ぎ落したキャッチーな質感に変わっていますが聴き手に媚びたような感じは本作Rock Actionにもなく、孤高の魅力を存分に放っています。

芳醇な音景と、伸びやかな叙情性。
普遍的な良い音楽の魅力を秘めた、インストゥルメンタル・アンダーグランドミュージックの名盤と言えるでしょう。

(4th)Happy Songs For Happy People

前史:リリースされるまで

前作Rock ActionはUKチャートで23位にまで達します。また、その後Mogwaiは20分もある大曲My father My KingをEPとしてリリースします。

そんな過程を経たうえで、Mogwaiは4thアルバムにあたるHappy Songs For Happy Peopleを送り出しました。

アルバムの魅力

前作で導入した多彩なサウンドを推し進めつつ、「静」「動」を行き来する明確な轟音サウンドにも回帰しているのが本作の特徴でしょう。

エレクトロニカにも似た柔らかいテクスチャーから一気にギターが炸裂していく様には、妙なる美しさがあります。

もちろん、Mogwai流のメロディアスさももちろん変わることなく健在です。

シンセ、エレクトロニクス、フィードバックノイズ等が情緒の落ち着いたサウンドを紡ぎ、ゆったりとしつつもダイナミックな展開を構築していきます。


「静」「動」のうち「静」の部分は過去作よりもさらに密やかになっており、繊細な美しさを帯びています。ただ、孤高な雰囲気も併せ持っており、媚びた感じは一切しません。

轟音のパートもまた深い叙情性を湛えており、激しさとディープさの奥にエモーショナルな奥深さを感じとることができるでしょう。

全体的に、多彩な雰囲気と多様なテクスチャーを合わせもつ、しかもMogwaiらしさも一切失っていないアルバムと言えるでしょう。

豊かな音景、気品に満ちた迫力。
繊細で多彩な響きをシンプルに鳴らす、美しい音楽が本作にはあります。

(5th)Mr.Beast

前史:リリースされるまで

前作はUSビルボート・インディペンデント・アルバムチャートやビルボード200にもランクインするなど活躍の幅を広げることになりました。

また、本作Mr.Beastは初めてバンドが所有するスタジオで制作されたアルバムでもあります。

アルバムの魅力

前2作の多様性を残しつつも、1stと同水準の強烈な轟音ノイズを炸裂させているのが本作Mr.Beastの特徴です。

エモーショナルな叙情性を湛えながらなおかつ1stよりも洗練されており、その響きには気品さえ感じます。

優美で、孤高で、毅然として。
メロディアスながらも情緒は安定しており、安心感もどっしりとあります。
なおかつ、唸るような轟音の迫力は強烈で、全てを薙ぎ倒すような壮絶さを爆発させています。


また、「静」の部分も素晴らしいです。ピアノやギターが織りなす美しさが印象的で、しっとりとした叙情性の内に芳醇な響きを湛えています。

時にメタル的なダウナーさを見せつつも全体を覆う空気感があくまでも優美で幻想的、今までの作品と比べても躍動的なダイナミズムは上回っているように思います。

とにかく轟音の迫力とその背後にある美しさが鮮烈です。
迫力と美麗さに関しては、Mogwai諸作の中でも随一かもしれません。


美しいテクスチャー、艶やかな轟音、ダイナミックな迫力。
安定感と緩急を併せ持つ、深い叙情性を湛えたメロディアスなアルバムと言えるでしょう。

(6th)The Hawk Is Howling

前史:リリースされるまで

前作Mr.BeastはUKチャート31位、Billboard 200では128位を記録しました。

また、この時期からMogwaiはサウンドトラックも手掛けるようになり、Zidane: A 21st Century PortraitやKronos QuartetやClint Mansellらと共にThe Fountainなどを制作しています。

アルバムの魅力

基本的には前作Mr.Beastと同じような方向性でありながらもややシンプルになり、轟音で緩急をつける内容になっています。

ゆったりと、エモーショナルに、美麗に。
静かに高まって爆発していく様子には、孤高の迫力が満ちています。


また、積み上げてきた実績がそうさせるのでしょうか、サウンドの節々から自信が漂っており、安定感は過去作でも随一であるように感じられます。
貫禄、と言い換えることも出来るかもしれません。


激しいパートの粗くもメタリックな躍動感は凄まじく音の響きで聴き手を圧倒させています。

また、ギターやローズピアノを中心とした穏やかなパートの美しくも余裕を感じさせる響きは、悠然とした趣を漂わせています。

Mogwai節を、今までよりも効果的に魅せることが可能になったのでしょう。強烈なオリジナリティがあるわけではありませんが、そのクオリティを今まで以上に精緻に極めています。

職人的、というと言い過ぎかもしれませんが、無駄のない構成には美しさを感じます。

しなやかなテクスチャー、優美な緩急、奥行きの深い叙情性。
それらの要素を兼ね備え、Mogwai流の轟音サウンドを構築しているのが本作The Hawk Is Howlingです。

(7th)Hardcore will Never Die, But You Will

前史:リリースされるまで

前作は引き続きチャートの上位にランクインを記録しています。一方、本作のレコーディングに際しては「原点回帰」と「新たな一歩」という側面があるように思います。

「原点回帰」についてはプロデューサーに1stアルバムと同じPaul Savageを迎えていることが挙げられ、「新たな一歩」については自主レーベルRock Actionを立ち上げていることが挙げられます。

アルバムの魅力

長年のキャリアからにじみ出る貫禄のみならず、ポップな雰囲気も印象的なアルバムになっています。

シンセ/電子音の存在感が強まり、Mogwaiらしい美麗な叙情性を響かせています。

今までの重々しさはもちろんですが軽やかさも印象的になっており、疾走感を感じさせるのは本作の特徴でしょう。

Mogwaiらしいラウドなギターも個性を放っていますが、アグレッシブ過ぎないのは重要な点でしょう。
余裕が漂うキャッチーな楽曲を、安定感が漂う叙情的なサウンドによって組み立てています。


伸びやかな、或いはポップなビート感覚が印象的です。

本作でも感情的すぎない落ち着きは健在であり、むしろ落ち着きは過去作でも随一と言えるでしょう。
積み上げてきた経験の多さ・深さを感じさせる大人びたトーンのギターミュージックを奏でています。

程よくエモーショナルに、だからこそ深く美しく、妙なるバランス感覚を絶やさずに。
鍵盤とギターが美しく絡み合うサウンドは、幻想的な美しさを帯びています。

優美な貫禄を帯びた、伸びやかで美しい響きを楽しめるアルバムです。

(8th)Rave Tapes

前史:リリースされるまで

前作で一定の成果を上げた後、フランスのドラマ用サウンドトラックLes Revenantsのリリースを挟み、本作Rave Tapesをリリースしています。

アルバムの魅力

電子音楽やクラウトロックの影響を感じさせる、変化球的なアルバムになっています。

轟音の出力はやや控えめになっているとはいえ、いつものMogwai節は健在です。
伸びやかでまろやかなシンセと人間味漂うエレクトリックギターの組み合わせが、完成度の高い叙情的世界へと聴き手を導きます。


安定感の高さは変わりませんが前作のポップさとは違い、落ち着いた雰囲気を魅力の根源にしているところがあるように思います。

ゆったりとしたビート感覚で、アナログSF的なニュアンスを多分に含んで、しかも壮大なエモーションを携えて。
近年のMogwaiの魅力でもある落ち着きが、もっとも効果的に表れている作品と言えるかもしれません。

経験の深さを感じさせるいぶし銀、
アナログシンセ的な優しい音色、
適度な緩急、
Mogwaiらしさを存分に感じさせる文学的な響き。

実験的でありつつ卒のない作品、ということになるのかもしれませんが、個人的には絶妙のバランス感覚に魅力を感じます。

個人的には一番好きな名盤です。

(9th)Every Country’s Sun

前史:リリースされるまで

前作Rave TapesはUKチャートの10位を獲得するなど、大きな成功を手にします。
さらにEPをリリースするなど作品を量産をしますが、その一方でJohn Cummingsが2015年にバンドから離れてしまいます。

しかし、バンドの勢いは止まらず、さらに広島を訪れたことにインスパイアされたAtomicをリリースし、その後に本作Every Country’s Sunをリリースしています。

アルバムの魅力

変化球的だった前作に対し、Mogwaiが打ち出した魅力の集大成的な作品が本作Every Country’s Sunです。

すなわち詩的な叙情性があって、安定感があって、美しく轟音が吠え猛る。

Mogwaiが築き上げたMogwaiの魅力のど真ん中を突いています。

長年のキャリアを経て手に入れた貫禄もあり、
重鎮らしい存在感と躍動感もあり、
電子音的で柔らかなテクスチャーもあり、
ほんのりとキャッチーさもあって、
初期の轟音型ポストロックと似ているようで、実はその裏に多様な色彩を帯びていて、
芳醇な轟音を高らかに炸裂させる、豊かな響きが轟いています。

希望を秘めた、という表現さえ使えるかもしれません。
壮大で、エモーショナルで、情緒はいつものように安定していて。
深く立ち込める叙情性と安心して聴くことが出来る安定感の両立は、Mogwai諸作の中でも本作がトップクラスでしょう。


霧深い森のようで、木々の匂いを感じさせる雄大さで、ゆったりと歩みを進めるようにビートが刻まれていきます。

どこから見てもスキのない、轟音ポストロックのオリジネイターにふさわしい圧倒的な完成度を誇っている名盤と言えるでしょう。

ロックにとっては武器である若々しい勢いは本作にはありませんが、それがマイナスに繋がることは一切ありません。
卑近なロックミュージック/インディーミュージックを昇華したアートとも言えるかもしれません。
何にせよ、その響きはあまりにも美しく、時にラフで、時に壮大で、ダイナミックな魂の奔流を炸裂させています。

なだらかに盛り上がって辿り着く轟音はもちろん素晴らしいですが、いつも以上に楽曲全体の構成に魅力を感じます。

その美しさは花鳥風月に例えることは難しく、インディーミュージックの一つの極致であるとさえ言えるのではないでしょうか。

(10th)As the Love Continues

前史:リリースされるまで

前作のリリース後、複数のサウンドトラックを制作した後、自分たちのアルバムに着手します。既にコロナ禍の最中ということもあり、Dave Fridmannとはリモートで作業をしていたとのことです。

なお、本作As the Love ContinuesはUKチャートで1位を獲得しています。(なお、Mogwaiのメンバーたちはそれを「全くシュール totally surreal」と評していたようですが)

アルバムの魅力

前作Every Country’s Sunがそれまでの集大成的な作品であったとするならば、その完成度の高さはそのままに局面局面における個性を強めている作品と言えるでしょう。

轟音が炸裂するときのギターのラウドな質感、
ウォーミングに広がるシンセの音色、
脈打つするように躍動するビート、
練度は前作に劣らず、しかし良い意味での粗さを見せることもあり、しかもドリーミィさが匂い立つこともあり、さらにはポップな場面での求心力も上がっています。

全体の調性という意味では前作の方が若干上回っているかもしれませんが、その分場面場面の濃厚さは本作の方が上回っているように思います。

ある意味、轟音ポストロックからいわゆるインディーロックに僅かではありますが近づいているのかもしれません。

とはいえ、基本軸は今までのMogwaiです。
貫禄と安定感があって、轟音が美しくて、叙情的なサウンドを紡いでいく。
情緒も安定していて、天性のメロディセンスがあって、それでいて聴き手に媚びることもない。
ダイナミックに緩急を繰り返し、カタルシスを生み出していく。

いつものMogwaiの魅力を変わらぬ土台として、様々な要素を今までよりも若干多めに味付けとして加えているといったところでしょう。

主要参考サイト&文献:Mogwaiのアルバムについて

主要参考文献

主要参考サイト

https://www.allmusic.com/artist/mogwai-mn0000923705/biography

https://en.wikipedia.org/wiki/Mogwai

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