緑の森の神話/折原みと 少年の未来を変えた、清冽なボーイ・ミーツ・ガール

誰かわたしの声を聞いて わたしたちの声を聞いてください

わたしたちの願いは、たったひとつ
わたしたちは、ただ生きていたいだけ
わたしたちの生命を、子どもたちに伝えていきたいだけなのです

誰かわたしの声を聞いて
わたしたちの想いを受けとめて……

折原みと『緑の森の神話』ポプラ社,1996,P.6

小学生のころに図書室で読んで、おいおい泣いてしまった思い出の一冊です。

今読んでも素晴らしいですね……。私にとって児童文学として、これほど素晴らしい一冊はそうそうないと思っています。

『緑の森の神話』のあらすじ

怠惰な夏休みを過ごしている小学生の樹。暮らしている場所は今まさに住宅建造が行われている新興のニュータウン。

ファミコンをしていると、突然画面の中からさきほど引用した文字が浮かび上がります。日常に飽き、冒険を求めていた樹は迷うことなく画面へ飛び込みました。

そこは緑豊かな世界、グリーンフィールド<緑の王国>。人間によく似ているけど緑(など)の髪色のグリーニー<緑の民>が暮らしています。そこで同い年くらいの女王サラから、王国を襲う<テラニアン>たちから王国を守ってほしいと請われます。

RPGの世界のように飛び込んでしまった樹は喜んで戦いに身を投じるのですが……。

実はサラたちは植物でした。テラニアンたちはニュータウン造成のために森や山を開発する人間。当然、植物たちに勝つ術はありません。女王サラは自分たちの死が避けられないものだと悟っていました。だから、幼い人間を呼び、自分たちのことを知ってもらおうとした。知れば、分かり合えるから。大切に思えるから。

いつか人間と植物が共存できる未来のために。それが樹を呼んだ理由。戦いに勝つのではなく、自分たちが死んだ先の未来を思って、サラは樹を呼んだのです。

樹は最後の最後までグリーニー<緑の民>と一緒に戦いますが、グリーンフィールド<緑の王国>は壊滅。そして、樹はふと気が付くとテレビ画面の前、エアコンの効いた家へと戻っています。

樹は慌てて小学校の裏手へと向かいます。そこにあるのは、今まさにブルードーザーによる破壊が完了した裏山。土砂降りの中で涙する樹のそばに、サラの本当の姿<ナツツバキ>の花が落ちてきました。

樹はしばらく泣き続けました。しかし、いつまでも悲しみに立ち止まりません。強い少年です。樹はサラたちからもらったモノを無駄にしないことを決意しました。

個人的な感想:私の決意

というお話なのですが……。

もう、今読んでも素晴らしいですね。うるうるしながら読んでいました。女王の想いが、まっすぐで、美しくて、悲痛で。

サラの想いは樹を変えます。樹は全ての命が重んじられる未来を創ろうとします。
樹にとっての、人生を変える「宝物」のような経験となったのです。

きっと、小学生の私も、何かを受け取っていたはずなのです。成長していたはずなのです。でも、現実に追われているうちに、「何か」はすっかり失われていたようです。

「心洗われるような」というとありふれた表現です。心にこびりついていたブレをサッパリできたのは非常に良かった。このタイミングでもう一度出会えて、本当に良かった。

樹とサラの物語に感銘を受けた子供たちは、今どんな大人になっているのでしょう。
あの時に心を揺さぶられ、今は道に迷っている。そんな方は、もう一度『緑の森の神話』を手に取ってみてはいかがでしょうか。

最後に。
未来にこれを読み返すかもしれない私へ。
2022年の私は相変わらず不器用だけど、でもどうにかこうにか困難と向き合い続けてる。
深く悩みながら、それでも自分の信念を真摯に考え続けてる。

過去の貴方は決して逃げなかった。だから、自信を持って。

心はシャキっとした?
じゃあ、もう大丈夫。
あとちょっとだけ、頑張って。

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