こんにちは。
Mellow Fellowはマニラ出身のポロ・レイズ によるソロ・プロジェクトです。

彼の音楽を言葉で表現するならば、オールディーズなサウンドからの影響を昇華させたセンチメンタルなドリームポップといったところでしょうか。
少し専門的に言うなら、ベッドルームポップというカテゴリーに属します。
日本、韓国、インドネシア、北アメリカなど国外でのライブも行っており、youtubeで300万回以上、再生されている曲もあります。
そして、本作Jazzie Robinsonは2017年にリリースされたフルアルバムです。
※注意
なお、本記事においてはJazzie Robinsonの魅力に踏み込むため、和訳も試みています。
しかし、著者は英語に明るいわけではありません。雰囲気を楽しむ程度に受け取ってくださいますようお願いいたします。
また、明確な誤訳がありましたら教えていただけると嬉しいです。
Jazzie Robinsonの魅力 Mellow Fellowが織りなす甘くて苦い胸の痛み
本作Jazzie Robinsonの最大の特徴は、大学時代を共に過ごした恋人との別れを謡っているということです。
徹頭徹尾、未練たらたら。
帰らぬ恋人への想いや、孤独な自分への自己憐憫の言葉が延々と紡がれていきます。
チープでスイートなサウンドを背景にして紡がれる歌詞は、雄々しい詩情とは縁遠いものなのです。
まずはアルバム冒頭を飾るBest Friendを見てみましょう。
君を失望させる3000パターンの方法。僕はどこからスタートすればいいのかすら分からない。僕の指を数えてくれ、親指じゃなくて。Claire Cottrillが言うみたいに。そして君が新しい日々を始めるみたいに。 君はただの恋人じゃない。君は僕がずっと求めていたもの以上の存在。 僕たちは遠く離れて生きていくかもしれないけれど、君は連日連夜僕の心に現れる、ありとあらゆる手段で。君はただの恋人じゃない。君は僕がずっと求めていたもの以上の存在。君は僕の親友。君は僕の親友。君は僕の親友。
Best Friendより(全訳)
傷ついている自分をありのまま曝け出すような、痛々しい歌詞です。
心の傷を癒せずに途方に暮れているのが手に取るように分かります。
みっともない、とさえ言えるでしょう。
そして、そんなみっともなさが本作Jazzie Robinsonの魅力の根幹にあるように感じます。
深い音楽愛から醸成されるサウンドの豊潤さと文化系的な繊細さが混ざり合い、聞き手を酔わすような夢幻の世界を奏でます。
ソウルの影響を感じさせつつも、繊細な物憂さを漂わせる男性ボーカル、
エレクトリックギターのチープな音色、
シンプルの低音部を埋めていくベース、
空気を含んだような淡々としたビート感。
その全てが陶酔的でメランコリックな色彩に染められています。
それに全編を通じて漂うゆったりと揺蕩うミラーボールのような安っぽいロマンも魅力的です。
君は疲れるかもしれない。君は眠りに落ちるかもしれない。君が僕と一緒に来るのは良いことだ。僕の孤独な夢を駆け抜ける冒険に。そして、もう僕は決断できない。僕は君の瞳を通して自分の姿を見ることができる。疲れた。
Tiredより(抄訳)
身もふたもない現実を、無理やりロマンティックな言葉で飾っています。
これも素敵な歌詞です。
また、Mellow Fellow自身の精神的幼さも上手に音楽へ蒸留されているように感じます。
Alive,Dreamingを見てみましょう。
時々、僕は朝に目が覚める。まだ、夢を見ているみたいに感じる。君がしなくてはならないことは、僕の電話に出ることだ。そうすれば、僕はまだ君と一緒に存在してるって分かる。でも、たぶん、僕は夢の中で生きていたほうが良いんだろう。なぜなら起きている時には、遠く離れているような気分になるから。
Alive,Dreamingより(抄訳)
非常に青臭い言葉が並びます。
しかし、ドリーミィなサウンドと相まって悲しみの色彩に統一された素敵な曲になっています。
そして、本作最大の魅力は、癒えない傷に七転八倒しながらも遠くに見える出口を目指して進もうとするMellow Fellowの姿勢ではないでしょうか。
決定的にうちのめされながらも、遠くに見える光を見つめている。そんなMellow Fellowの在り方が至高のドリームポップが生まれているのです。
アルバムの最後を飾る曲が、本作のそんな一面を象徴しています。
いつの日か、僕は自分の道を見つけ出す。そして、その日に何もかも上手くいくだろう。君が簡単に自分の言葉を裏切るならば、そう言うのは簡単じゃないけど。見てのとおり、僕は崩壊してる。僕の世界の間では、完璧なんだけど。陽光。失ってからどれくらい経っただろう。僕にまだ足りないものを教えてくれ。 見てのとおり、僕は崩壊してる。僕の世界の間では、完璧なんだけど。
My Worldより(全訳)
揺らめくドリームポップの奥に潜む、悲壮な決意。
等身大の壮絶な戦いが、ここには在るように思います。
結びに代えて Jazzie Robinsonの音楽性を表現するMellow Fellowの言葉
悲しき少年のための音楽?
Mellow Fellowは自分の音楽を「悲しき少年のための音楽」と表現しています。
そのせいでしょう、インタビューで「多くの人々は繊細な少年を非難する、貴方の音楽はディープに繊細で、偉大で感情的な奥行きを持っている。このことについて何か言えますか?」と質問されていました。
Mellow Fellowは一度「自分の音楽は自分の音楽で、自分が感じてることについて話しているだけだ。自分は全体的な人口を代表しているわけじゃない」とはねのけつつも、悲しみに沈む少年少女にメッセージを発しています。
その最後の素敵な一節を引用して、本記事を終わりたいと思います。
悲しんでいる少年も少女も音楽を聴いて悲しい気分になればいい、だけど自分自身をそんな状態から救い出して幸せにする方法を学ぶんだ。君の感情を何一つ抑圧するな。
https://statusmagonline.com/features/mellowfellow-interview-october2019/
それでは。
主要参考サイト
http://www.inpartmaint.com/site/24380/
A Reintroduction to the Changing Sound of Mellow Fellowhttps://www.facebook.com/mellowfellowstudios https://genius.com/albums/Mellow-fellow/Jazzie-robinson
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