何はなくとも、まずはこのカバーアートから話を始めるべきだろう。

The Beatlesが放った名作Abbey Roadのオマージュである。
言うまでもなかったかもしれない。
現代風に言うならサンプリングとも言えるだろう。
敬意は感じられるような気がするのでパクリという表現はちょっと違うかも。
目次
で、Mclemore Avenueって何?
で、つまりはMclemore Avenueって何?
Abbey Roadのカバーアルバムだ。
誰がカバーしたの?
Booker T. & The M.G.’s。
じゃあ、Booker T. & The M.G.’sって何者なの?
簡単に言えば、サザンソウル/メンフィスソウルの隆盛に多大な影響を誇ったStax Recordsのお抱えバンドだ。
Otis ReddingやIsaac Hayesと言った時代の寵児たちのサポートをする一方で、彼等自身の名義でも数多くの名作/ヒット作を世に放っている。
じゃあ、どんな音楽を演ってんの?
おおむねインスト、アーシーなR&B/ソウル/ファンクなサウンドが特徴。
どんなところが魅力的?
キーボードプレイヤーBooker T.のハモンドオルガンじゃないの、やっぱり。
この辺は掘り下げたらきりがない。
私も全てのディスコグラフィーに耳を通したわけでは全くないので、気になる方は識者に拠ってほしい。
The BeatlesとBooker T. & The M.G.’s。
ロック周辺とソウル周辺。
両雄の活躍したフィールドは違えど、活躍した時代は重なっていた。
1969年にAbbey Roadが世に出た。するとBooker Tは大いに刺激を受けた。
そして、数か月後にはカバーアルバムである本作Mclemore Avenueがリリースした。
ちなみに、Mclemore Avenueという表題はStax Recordsのスタジオの住所から拝借しているらしい。
この辺りもクスっとさせられる。
Abbey Roadへのセンス溢れるオマージュだ。
Mclemore Avenueの魅力
本作の特徴を一言でいうなら、
<The Beatlesのロックを、アーシーなソウル/R&Bへと見事に調理している>
ということになるだろう。
本来のBooker T. & The M.G.’sが持つ魅力よりやや繊細になっているが、メロディアスにもなっている。
暑苦しすぎない、涼やかで自然体のグルーヴが印象的だ。
もちろん、ほぼインスト。
ゴリゴリのソウル/ファンクという感じではなく、飾り気がなくオーガニックな印象を受ける。
ある意味、そのカバー手法はDJ的だと言える。
楽曲順を再構築し、滑らかに自由自在に繋いでいく。
例えば、冒頭のメドレーなら。
Golden Slumbersの切ないメロディをソウルフルなハモンドオルガンが紡ぎ、
そのままシームレスに軽やかなCarry That Weight~The Endへとつながり、
Here Comes the Sunの軽やかでキャッチーなメロディラインへと流れ、
さらにクールなCome Togetherへと自然に姿を変えていく。
(A面はメドレーとSomething、B面はメドレー2曲という構成になっている)
The Beatlesによる原曲はバリエーション豊富で多様な色彩を楽しめるが、Mclemore Avenueバージョンは全体として統一感がある。
さらさらと流れるような快さがあって、それでいてThe Beatlesらしいフックのあるメロディが楽しい。
ベースとドラムスが紡ぐ優しいグルーヴからも、
穏やかながらもソウルフルなギターとオルガンからも、
メンフィスの自然やその音楽的土壌の匂いが漂っている。
また、個人的にはどことなくゴスペル的なゴキゲンさが漂っているのも、印象的だ。
演者たちが心の底から楽しんでいるのではないか。思わずそんな想像をしてしまう。
メンフィスで暮らす者たちが、自分が好きな音楽を好きなように楽しく演奏している。
それを聞いてこっちも楽しい気分になる。
本作の楽しみ方は、そんなところにあるんじゃないかな。
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