こんにちは。
MaybeshewillはUK出身のインストゥルメンタル・ロックバンドです。

ポストロックなどにカテゴライズされることが多く、ヘヴィなギターサウンドとアグレッシブなビートを特徴としています。
2020年3月現在、Maybeshewillは4作のフルアルバムをリリースしています。
本記事ではその全作を語ります。
Maybeshewillの全アルバムについて。最もキャッチーなポストロックバンド?
これから全てのアルバムをリリース順に見ていきます。
しかし、文字だけでは分かりにくいと思い、相関図を作ってみました。

いかがでしょうか。
では、アルバムごとに見ていきましょう。
(1st)Not for Want of Trying
前史:リリースされるまで
MaybeshewillはDe Montfort Universityで音楽技術(Music Technology)を学んでいた John HelpsとRobin Southbyの出会いから始まります。
入学初日から互いの音楽の趣味が近いことを理解した彼等は、ちょっとした楽しみとしてMaybeshewillを始めました。
最初はバンドを組むつもりもなかったらしく、最初に作ったちゃんとした曲は大学への課題用だったそうです。
しかし、大学のスタジオを使ってレコーディングしたEP Japanese Spy Transcriptの反応が良かったため、彼等は1stアルバムの制作に取り組むことになります。
問題になったのは、アルバムの制作が彼等が大学を卒業した後に行われたということです。
彼等は既に大学のスタジオを使える立場ではなかったのです。
普通のバンドは活動を長く続ければレコーディング環境は徐々に改善していくと思われます。
しかし、本作に関してはレコーディング環境などがEPの頃よりもプリミティブになった作品であるとメンバーは述懐しています。
アルバムの魅力
彼等の魅力であるポップなヘヴィさが、もっとも分かりやすく表れているのが本作でしょう。
Mogwaiや65daysofstaticなどのポストロックの先達と比べられがちな彼等ですが、Maybeshewillの本質はLinkin Parkにも通じるような攻撃的なポップネスだと思われます。
ヘヴィなエレクトリックギターとエネルギッシュなドラムス・ベースという堅実な土台があり、そのうえにループするピアノ/シンセの旋律、打ち込み系のビート、サンプリングされた台詞などが覆いかぶさり、ニヒルなスマートさを演出していきます。
ヘヴィで瑞々しさ疾走感を軸にしながらも、誰にでも伝わりやすいカッコよさを漲らせているのも注目すべき点です。
魅惑的のキャッチーさが1stらしい荒々しさと混ざり合い、衝動的な躍動感へと昇華されています。
インストゥルメンタルのヘヴィミュージックとしては敷居が低い作品です。
(2nd)Sing The Word Hope In Four-Part Harmony
前史:リリースされるまで
本作の影響として、Maybeshewillの面々はAnd So I Watch You From Afarの存在を挙げています。
彼等とのツアーを終えた後に曲が作られたという本作は、前作よりもエネルギッシュなサウンドを特色としています。
また、レコーディングのタイミングがアメリカの大統領選でオバマが勢いづいていた時期と重なっていたことや、彼等の地元レスターの音楽シーンがポジティブさに満ちていたことも本作に反映されていると述べています。
アルバムの魅力
最もヘヴィな作品であると称されることもあるだけのことはあり、その前のめりな破壊力は強烈です。
また、ダークなヘヴィさではなくブライトなヘヴィさが一貫としてアルバム全体に漲っているのも大きな魅力でしょう。
ヘヴィながらもブライトなエレクトリックギター、
破壊力と推進力を兼ね備えたドラムスとベース、
前作よりも数多く登場するボイス・サンプリング、
メロディアスなピアノやシンセの旋律、
前作のニヒルさと打ち込み系ビートの存在感は後退し、真っすぐなエネルギーの激しい奔流を感じることができます。
さらにドラマティックな壮大さを感じさせる瞬間も増えており、叙情性も深まっています。
もちろんMaybeshewillらしいポップネスは健在、聞き手を突き放すような難解さは皆無です。
光輝漂うヘヴィネスと胸を打つ壮大な旋律が描く物語を楽しめるアルバムです。
(3rd)I Was Here for a Moment, Then I Was Gone
前史:リリースされるまで
1stアルバムと同様にあらゆる批評やリスナーの期待を無視して制作しようというコンセプトで作られたのが本作I Was Here for a Moment,Then I Was Goneです。
さらに過去2作と違ってスタジオレコーディングされていること、ヘヴィーなギターを重視したサウンドから多様な楽器をサウンドへの転換を意図していたことなどが本作の重要な点であると思われます。
また、2009年に ベースプレイヤー/プロデューサーとしてJamie Wardが加入、2011年にキーボードプレイヤーとして Matthew Dalyが加入し、最終的なラインナップが揃うことになります。
アルバムの魅力
前作の希望に満ちたサウンドをベースにしつつ、より幅広い音色を導入して壮大なスケールを描き出しています。
ある意味ではいわゆる「ポストロック」に接近したとも言えるかもしれません。
ゆったりとしたバンドサウンドを軸にして、ピアノ、電子音、ストリングスと幅広いサウンドレイヤーを巧みに織りまぜ、ひっそりとした叙情的な旋律から胸を打つ轟音まで多彩な緩急を使い分けています。
彼ら特有のポップなヘヴィさはそのままに、ダイナミックかつ立体感のあるサウンドを築き上げています。
過去2作は勢いと迫力が魅力であったように思いますが、本作は随所に散りばめられる美しい旋律を巧みに絡ませ、最終的にカタルシスへと導いていくような構成美が光っています。
(4th)Fair Youth
前史:リリースされるまで
本作Fair YouthをMaybeshewillの面々は質感的な(textural)な作品であると評しています。
彼等は過去作のような激しい瞬間を展開したいと思いつつも、ディストーションペダルを踏み抜くようなサウンドをしたくなかったと振り返っています。
そんなサウンドを演奏することに飽きていたし、そういったサウンドのバンドが溢れかえっていたから、というのがその理由とのこと。
そして、2014年にドイツに拠点を置く Superball Musicから4thアルバムとなる本作をリリースすることになります。
アルバムの魅力
轟音による緩急をあまり用いず、自然に展開するエモーショナルなサウンドを基調とした作品です。
キャリアを重ねたロックバンドがリリースするいわゆる「丸くなった」アルバムであるとも言えます。
ピアノやストリングスの美しい旋律が最前面に出ており、エレクトリックギターは一歩後ろで情緒と壮大さを演出しているのが大きな特徴でしょう。
リズムセクションも爆発力で攻めるというよりもロック的軽快さを残しつつも優しげで心地よいビートを紡いでいます。
瑞々しい光輝に満ちたサウンドはそのままに、誇張した要素がない自然体のスケールの大きさが響き渡ります。
慈愛に満ちた柔らかな感情の奔流、でも言えばいいのでしょうか。
力強さを感じさせつつも穏やかなメランコリーが、力いっぱいにはためいているようなアルバムです。
結びに代えて Maybeshewillというポストロックバンドが身にまとう魅力
ポストロック界の良い子?
彼等の魅力は、ポストロックと言われるバンドとしては珍しい率直なサウンドであるように思います。
その率直さが分かりやすいヘヴィネスに転じることもあれば、自然体のサウンドに広がっていくこともあります。
表裏のない感じが、彼等が愛されている理由の一つかもしれません。
さて。Maybeshewillは2015年に解散を宣言していましたが、2020年に再結成をしています。
5年の歳月を経て彼等の素直なサウンドがどんな変化を遂げているのか、気になるところです。
それでは。
コメントを残す