Manualのアルバムについて。 温かくも解放感のあるエレクトロニカサウンド。

こんにちは。

Jonas MunkことManualはデンマーク出身のJanus Munkによるソロ・プロジェクトです。

https://www.progarchives.com/progressive_rock_discography_band/10480.jpg

ジャンルとしてはエレクトロニカに分類されるでしょう。
アナログ的な質感のシンセやギターの音色を組み合わせ、ノスタルジックでどことなく南国のリゾート的なサウンドを展開しています。

2020年4月現在、単独名義でのフルアルバムが6作品リリースされています。
本記事ではその全てを語ります。

Manualの全アルバムについて

これから全てのアルバムを見ていきます。
ただ、文章だけでは分かりにくいと思い、相関図を作成してみました。

では、アルバムごとに見ていきましょう。

(1st)Until Tomorrow

Manualのなかで最も軽やかな作品です。
まるで無垢な衝動をサウンドに変換したような鮮烈さがあります。

全体としては朴訥としつつも幻想的な世界を丹念に描き出しています。
小刻みながらもキックの効いた打ち込み系ビートを土台にして、暖かでドリーミイなシンセの旋律やアコースティック・エレクトリックギターの澄み渡る響きが溶け合うようにして混ざり合っています。

また、シューゲイザー的な揺らめきがしばしば垣間見えることも特徴と言えるでしょう。

ただ、本作には荒々しいエネルギーも込められているように感じます。
ただ美しいだけでない、美しい世界への切迫とした憧憬のようなものが漲っていると言えばいいのでしょうか。

ここではない何処かへの強い憧れ。
Manualの作品からはそんな思いが強く感じられますが、デビュー作たる本作には最も切実な想いが込められているように感じます。

(2nd)Ascend

前作と同じよう素朴なサウンドですが、やや物憂く柔和な雰囲気になっています。

心地よく転がるエレクトロニカなビートや幾重にも重なるドリーミィなシンセが軸となり、アナログ的な温もりを漂わせる夢幻世界を創造しています。

ビートの存在感がやや下がる一方でシューゲイザー的な揺らぎは存在感を増し、陶酔感を演出しています。
また、アンビエントで静謐な曲も収録されており、ビートの効いた1stとは異なる側面も強く感じます。

全体的に影を感じるのが本作の特徴でしょうか。
特に静謐な質感の曲は陰のある雰囲気が強く感じられます。

とはいえ、ストイックに自己探求をするようのではなく、アンニュイな感覚にそっと浸るような感じでしょうか。
前作が憧憬と高揚感を込めたアルバムだとすれば、こちらは内省的な星空のようなアルバムです。

かすかに薄暗く、かすかに物憂い、心地よい旋律。
社会の喧騒に消耗した心を休ませるのにぴったりのアルバムです。

(3rd)Azure Vista

ロック的/シューゲイザー的なサウンドに接近したアルバムと言えるでしょう。

幻想的で非現実的な雰囲気は変わりません。
しかし、幾重にも重ねられたエレクトリックギターの揺らめきが顕著に目立ち、打ち込みのビートもおおらかで自然体になっています。


朗らかながらもドリーミィなサウンドが土台になっていますが、盛り上げるところではシューゲイザーバンドのようなウォール・オブ・サウンドを築き上げています。
ただ陰鬱さは皆無で、見知らぬ何処かへの無垢な憧れが詰まっています。

空想的でありながらからっとした感覚が常に付きまといます。
ロックバンド的なサウンド構成に近いことも関係があるかもしれません。
もちろんエレクトロニカ的な耳触りの良さも健在で、ゆっくりなだらかに幻想的なサウンドが広がっていきます。

北欧の少年が夢見る、遠い何処かにある南国の理想郷。
そんな汚れのない揺らめきを感じます。

(4th)Bajamar

Manual単独名義では初となるアンビエント作品です。

エフェクトをかけられたエレクトリックギターのみでほぼ構成されており、シンプルさを特徴としています。
ゆったりしたエレクトリックギターの揺らぎは波の音のようにひいては押し寄せ、身を委ねたくなるドリーミィさを漂わせます。


そして、アンビエントになったことによりManual特有の幻想的な南国っぽさはさらに強まっています。
前作のような盛り上がりで魅せるというよりも、幻想的な揺らぎを繰り返すことによりひそやかな陶酔感で聴き手の心に入り込むような魅力があります。

陽炎の彼方に見え隠れするメランコリックな風景をそっと見つめているような感覚に似ているような気がします。

ある意味では、最も優しいアルバムなのかもしれません。

(5th)Confluence

前作と同様にエフェクトがかったギターの揺らぎを軸に据えたアンビエント作品です。

穏やかな音景はそのままですがギターにかかるエフェクトがより深まったことやピアノの導入なども相まって、ドリーミィながらも荘厳な雰囲気がゆったりと揺蕩っています。

幻想深度が深まっているとも言い換えられるでしょう。
ひいては返す波のような揺らめきも、この世ならざる異国めいたノスタルジーを漂わせています。
そして、メランコリックな陶酔感も深くなり、終始立ち込める濃密なエコーの彼方には果て無い夢想性が広がっています。

前作よりもディープなアンビエント性が対流しているアルバムと言えるでしょう。

(6th)Drowned in Light

再びビートを取り入れた、いわゆるエレクトロニカな作品になっています。
初期の頃のような無垢な衝動はありませんが、アルバムタイトル通りの光に溺れる様な、まっさらな温もりを感じることができます。

打ち込み系の穏やかなビートの上でドリーミィに揺れ動くシンセ、澄んだエレクトリックギター、ノスタルジックなアコースティックギターの音色が棚引きながら絡み合い、カーテンを揺らす暖かな風のような心地よい揺らぎを楽しむことができます。

幻想性を感じさせるのはもちろんですが、光に満ちたポジティブな空気感も強く漂っています。
特に風通しの良さは、Manual諸作のなかでも本作がずば抜けているように思います。
心地よく健康的な軽やかさとメランコリックな空想世界(Manualなのでもちろん南国的です)が高水準で混ざり合っているのは、珍しいかと思います。

Manualの特徴を最も強く打ち出しているという意味でも、今までの作品の集大成的なアルバムとも言えるかもしれません。

逃避的な要素のないファンタジーを、ゆったりと奏でているアルバムです。

結びに代えて Manual(Jonas Munk)の魅力

途切れる、あの日々

Manualの魅力は南国リゾート的なノスタルジーが通底していることでしょう。

ManualことJonas Munkの音楽体験の原点は、父や友達と一緒に自宅で楽器を演奏していたことなのだそうです。

きっと幸せなひとときだったのでしょう。

ノスタルジックな思い出と彼の音楽が密接に結びついているのだとしたら、ManualはJonas Munkの美しい原点としての側面を持ち続けていたのかもしれません。

2015年のインタビューでJonas MunkはManualとしての活動を再開させるつもりはないと述べています。

故郷/原点との密接なつながりは、やがて途切れていくものなのかもしれません。
それがどんなに懐かしく、美しかったとしても。


それでは。

主要参考サイト

https://manual.bandcamp.com/music https://headphonecommute.com/2015/08/06/interview-with-manual/ https://headphonecommute.com/2019/03/14/in-the-studio-with-jonas-munk/

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