Mad Season/Above 静けさから立ち昇る孤独と絶望、地獄の底のダウナーブルース。 



こんにちは。

Mad Seasonは1994年に結成されたグランジバンドのメンバーによるサイドプロジェクトです。

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そのサウンドはグランジ的な歪みではなく静謐でブルースな匂いを強く感じさせつつも、絶望的でダウナーなものになっています。

メンバーが亡くなっていることもあり本作Aboveが唯一のアルバムになっています。

グランジ・ヒーローのサイドバンド Mad Seasonについて

バンドのメンバー

グランジとカテゴライズされることの多いバンドのメンバーを中心とした、非常に豪華な顔ぶれが揃っています。
(The Walkaboutsはちょっと違います)

  • Vo. Layne Staley(Alice In Chains)
  • Gt. Mike McCready(Pearl Jam)
  • Ba. John Baker Saunders(後にThe Walkabouts加入)
  • Dr. Barrett Martin(Screaming Trees)

とりわけ大きな存在感を放っていたのは、やはりボーカルLayneとギターのMikeになるかと思います。

バンド結成の経緯

1994年、Pearl JamのMikeは、1994年にドラッグとアルコール中毒のリハビリ施設でJohnに出会います。
意気投合した2人は退所後にScreaming TreesのBarrettとバンドを組みいくつか曲を作ったあと、さらにAlice In ChainsのLayneに声をかけます。

Mikeは薬物中毒に苦しんでいたLayneに声をかけていた理由として、薬物をしないミュージシャンに囲まれることによってLayneがクリーンな状態に戻る手助けになると考えていたそうです。
確かに、リハビリ施設から退所したばかりの人物が50%ですからね。

ただ、そのMikeが付けたバンド名であるMad Seasonはマジックマッシュルームが満開になったことを示す隠語のようです。
一体どういった意図が込められていたのでしょうか……。

バンドの音楽性

グランジ系サイドプロジェクトの特徴としていわゆるグランジ的な要素が希薄になる傾向があり、それはMad Seasonも同様です。

Mad Seasonのサウンドにはグランジ的でぐいぐい攻める感じはありません。
代わりに行間の静けさを活かすような必要最低限の音数によって、ブルージィなロックサウンドを奏でます。

そして、鬼気迫るようなダウナーさも印象的ですが重苦しくはなく、求道的な深々とした緊張感によるものと言えるでしょう。

また、各々が自由にほとほどの距離感を持っているに感じられるのも魅力的です。

特に魅力的なところ Alice In ChainsとPearl Jamの融合?

本作においてとりわけ魅力的なのは、Pearl JamのリードギタリストMikeのブルージィなギターとLayneのダークな歌い方でしょう。
どちらもメインバンドのような凄絶な業を感じさせるわけではありませんが、それゆえに個々人が本来持っていた天性の才能がいかんなく発揮されています。

Pearl JamにおいてはEddie Vedderの苦悩と共に疾走していたMikeのギターも、Mad Seasonでは感性のままにフレットを滑り、スロウに変幻自在に唸り叫んでいます。

絶望的で暗鬱なLayneのボーカルはAlice In Chiansと変わりませんが、己の全てを極限まで叩きつけるような歌い方ではなく、心のままに歌いあげるような自然さがあります。

バンドの成功と、その先を崩壊を予感させる歌詞

バンドはMikeのリーダーシップのもとで着々と成功へと階段を歩んでいきます。
お披露目ライブも大盛況に終わり、本作aboveのリリースは商業的にも批評家からの評価においても成功を収めました。ライブも複数こなします。John Lennonのトリビュート・アルバムにも参加します。
しかし、それぞれのメインバンドでの活動のためにMad Seasonとしての活動は停止します。

そして、二度と再開することはありませんでした。
なぜなら、1997年に再度活動を開始しようと思った時にはLayneは薬物中毒で活動ができる状態ではなかったからです。

薬物からLayneを立ち直らせるバンドだったMad Seasonは、その根底から存在意義を失ってしまったとも言えます。

そんな状況を予期していると思われる歌詞があるので、少し見てみましょう。

※英語について僕は詳しくありません。参考程度、ということでお願いします。

俺の痛みは自分で選んだもので、少なくとも預言者はそう言ってる。俺は自分のプライドを燃やしたっていいし、切っちまってもいい。そして、時間をいくらか買うんだ。嘘でいっぱいの頭は、腰に結びつけられた重さだ。欺瞞の川が下っていく。俺達が乗れる流れは、落ちていくことだけなんだ。

River of Deceitより(抄訳)

薬物によって落ちていく自分への暗喩表現かと思われます。
絶望的な終わりを見据えた苦悩が、なかなか辛いですね……。

ピンクの雲がグレイに変わる。そして俺はまた独りぼっちだ。つかみ取るべき誰かが俺と対立してる。一人ぼっち、触れられなかったものは俺が切望してたものなんだ。

Artificial Redより(抄訳)

※上のライブ映像、超かっこいいです! 必見です!

俺たちは皆一人ぼっちだ。

All Aloneより(全訳)

上の二つは孤独を歌ったものです。
Mikeによる仲間を作って立ち直らせるという試みも、Layneには響いていなかったのかもしれません。


なお、この後1999年にJohn Baker Saundersが、2002年にLayne Staleyがそれぞれ薬物が原因で亡くなっています。

少なくとも、愉快な結末と考える人はいないでしょう。

終わりに Mad Seasonというバンドとグランジとドラッグ

Mad Seasonのとある側面

Mad seasonというバンドには「薬物中毒から脱した男が自分の友人を助けようとした物語」という側面もあります。

そして、その観点からすると、Mad Seasonは失敗に終わったと言わざるを得ません。
リハビリ施設で出会った友達は薬物で亡くなり、助けようと思った友達も薬物で亡くなっています。
立ち直れたのは、自分だけだったのです。

そして、失敗に終わったからこそこのアルバムは素晴らしいだと思います。

「今にも壊れそう」と見せかけて実は最初から壊れていたような、致命的に何かがずれているからこその美しさが本作Aboveにはあります。


それでは。

主要参考サイト

https://en.wikipedia.org/wiki/Mad_Season_(band) https://www.azlyrics.com/m/madseason.html http://rollinpapers.blogspot.com/2006/01/layne-links.html

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