Last Daysのアルバムについて。静謐なサウンドスケープを爪弾く、言葉無き吟遊詩人の物語。 ~n5MDが誇るエレクトロニカ・ノベルライター~

こんにちは。

Last DaysはUK出身のGraham Richardsonによるソロ・プロジェクトです。

https://n5md.com/artists/Last%20Days/Last%20Days.jpg

エレクトロニカ/アンビエント/ポスト・クラシカル/ポストロック等をまたがる音楽性をしており、淡々としつつも深い文学性を感じさせるインストゥルメンタル・サウンドを特徴としています。

2020年3月現在、Last Daysは5作のアルバムをリリースしており、その全てがエレクトロニカの優良レーベルn5MDからのリリースです。

本記事ではその全アルバムを語ります。

Last Daysの全アルバムについて n5MDが送り出すエレクトロニカの至宝たち

ここからはLast Daysの各アルバムごとに語っていきます。
しかし、文章だけでは分かりにくいと思うので、相関図を作成してみました。

それでは、アルバムごとに見ていきましょう。

(1st)Sea

アンビエント作品ながらも強いストーリー性があるのがLast Daysの特徴ですが、本作にもその側面が非常に強く出ています。

「現代的な生活とそれについて回る全ての責任からの逃避」という物語に基づいた本作Seaは、聞き手に美しくも険しい大海原のなかを独りぼっちで旅をしているような感覚を与えるようなシネマティックな作品です。

ドローンなシンセと囁くようなグリッチ、
耳を澄まして聴きたくなるような背景音、
ピアノやアコースティックギターが紡ぐ感情の機微。
ゆっくりと櫂を漕ぐように物語は進み、儚くもメランコリックなサウンドスケープを築き上げています。

非常にシンプルなサウンドになっていますが、それが「孤独な旅」という物語背景にマッチしているように思います。

Seaの物語は極寒の地で遭難をして死の淵を彷徨い、再び孤独な現代社会に舞い降りて終わります。

そんな絶望的な孤独を、優しく包む様な慈しみに満ちた音響世界に横たわることができるアルバムです。

(2nd)These Places Are Now Ruins

前作と同じようなアンビエント・スタイルではありますが、やや緩急のついたアルバムと言えるでしょう。

アコースティックギター、エレクトリックギター、ピアノなどの生楽器で奏でられる旋律が叙情的になる一方、透き通るようなシンセでのドローン・パートも深度が上がっています。

公式サイトによると前作Seaのようにコンセプトがあるわけでなく過去の記憶と思考をつなぎ合わせたアルバムのような作品であるとのこと。

だからこそ曲ごとに込められている感情が異なっているのかもしれません。
時にダークで、時にブライトで、繊細な心の動きをシンプルな構成で再現しています。

ゆっくりと平坦に、だけど叙情的に、内省的な囁きのように物語は進みます。

前作よりも物語性は薄れましたが、幅広い感情が描かれているアルバムです。

(3rd)The Safety of the North

女性ボーカルを1曲導入するなど、今までよりもメロディアスになっているのが特徴です。

過去作に比べてメロディアスな旋律も増えてドローンサウンドが一歩後ろに引き、ビートがやや強めの曲や聞き手の胸を打つ壮大な展開も見受けられます。
もちろんオルガン、アコースティックギター、ピアノによる揺らめくような旋律やエレクトロニカ的な淡いノイズは健在で、引き算の美学をシンプルなエレクトロニカ/ポストロックサウンドを構築しています。

また、ボイスサンプリング/モノローグが多いのも本作の特徴でしょう。
そして、その背景には本作The Safety of the Northがアリスという名の少女のとその両親の物語であることが挙げられます。

都市からの隔絶された孤島に住むアリスたちの希望に満ちた始まりから最終的な悲劇までを、メロディアスに描いています。

本作はLast Daysのエモーショナルな一面を強めに押し出したアンビエント・アルバムと言えるでしょう。

(4th)Satellite

Last Daysらしいアコースティックとエレクトロニクスの両立をキープしつつ、ストリングスの存在感が強まっているのが本作の特徴です。

また、Last Days独特の文学性を維持しつつもポストクラシカルに接近しているとも言えます。

メランコリックで静謐なピアノやアコースティックギター、
ドローンな響きのストリングス、
時の鳴き声や波の音などのサンプリング、
前作に引き続き導入された女性ボーカル曲、
今までの作品よりも優しさを感じさせるサウンドスケープになっています。

本作のテーマは衛星となっています。しかし、Last Daysはその解釈は聞き手に委ねることを選んでいるようです。

衛星というテーマを意識すると、Last Daysらしい静謐さのなかにもまばゆさや壮大さを感じさせる曲が数多くあるように感じられます。

大自然の中で星空を見上げてぼーっとしているような、そんな感覚を楽しめます。

(5th)Seafaring

今までの経験を踏まえたうえでの原点回帰と集大成を兼ね備えたアルバムです。

全編を通してメランコリックな旋律がひっそりと揺蕩い、 繊細で静謐な物語を囁くように紡ぎあげていきます。
そっと爪弾かれるアコースティックギター、
肌寒い日の珈琲のように香り豊かに響くピアノ、
静けさの中に気品を漂わせるストリングス、
透き通るようなシンセのドローン。
様々な音色のレイヤーが豊かに響き、ミニマルながらも豊潤なサウンドスケープが描き出しているのが本作の大きな魅力です。

本作のテーマとしては南極探検中に遭難を経験したアーネスト・シャクルトンの出来事が選ばれているようです。

かすかに勇壮さが漂っているようにも感じますが、基本的にはLast Daysらしいオーガニックでアンビエントな文学的エレクトロニカ節が主軸です。

繊細さと豊かな感受性はそのままに、大人びた円熟も兼ね備えているのが本作の特徴と言えるでしょう。

主要参考サイト

https://n5md.com/artist/Last-Days

結びに代えて Last Daysの魅力 n5MDのエレクトロニカ/ポストロックの異端児?

Last Daysは典型的なエレクトロニカ的/アンビエント的/ポスト・クラシカル的/ポストロック的な感性を通して楽曲を創っているように感じます。

しかし、それらのいずれにもずばりとは当てはまらない音楽を創っています。

ただ、ジャンルというのは「なんとなくこんな感じの」という音にレッテルを貼ったものに過ぎないので、Last Daysのようにどのジャンルにも当てはまりそうで微妙に当てはまらない存在が散見されるのでしょう。

ひょっとしたら高い価値があると評価されることはないのかもしれませんが、Last Daysは私にとって大切な音楽であることは変わりません。

美しくて悲しくて儚い物語を、静謐な音色でそっと爪弾く言葉無き吟遊詩人。
皆さんもLast Daysの音楽にそっと耳を傾けてみませんか。



それでは。

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