キンセラ・ファミリーのバンド活動歴を分かりやすくまとめてみた。 自由きままな兄弟達の系譜。



こんにちは。

USインディーに多少なりとも興味があれば、キンセラ・ファミリーという言葉をどこかで見聞きしたことがあるのではないでしょうか。

90年代初頭、エモ黎明期にCap’n Jazzと呼ばれる伝説的なバンドがいました。
才能豊かなメンバー達の中心に名を連ねていたのが、ティムとマイクのキンセラ兄弟です。
Cap’n Jazzのメンバー達は解散後もそれぞれ活動を続け、現在に至るまで数多くの名義で活動を続けています。

そして、いつしかCap’n Jazzに端を発する関係者をキンセラ・ファミリーなどと呼ぶ人が現れたのでしょう。

しかし……、しかしです。
彼等ね、結構人数が多いんです。
おまけに結構エネルギッシュに活動するんです。


まあ、そこまではいいんです。傑作がたくさん聴けるのは嬉しいことです。

でも、問題なのは彼等はすぐに解散するし、単発的なサイドプロジェクトも多いし、他のバンドの奴と別のバンド結成するし、かと思ったら解散して再結成するし。かと思ったらすぐ活動休止するし。

キンセラ・ファミリーの活動、ぐちゃぐちゃになっているので後追いは結構大変なんです。
そこでキンセラ・ファミリーの中でも中心と思われる人物とバンドをピックアップして、体系的にまとめてみることにしました。

何か訂正がありましたら教えていただけると嬉しいです
それでは、各バンドの特徴を見ていきたいと思います。

キンセラ・ファミリー主要人物の特徴 各バンドの軸となる存在

キンセラ・ファミリーの中でも特に影響力が大きい人物が4人います。
上の図で赤字で名前が書かれている方々ですね。
まずはこの方々から見ていきます。
何故なら、バンドは彼等の影響をもろに受けるからです。

ティム・キンセラ Tim Kinsella

キンセラ兄弟の兄。
原点Cap’n Jazz時代から数多くのバンド・プロジェクトでボーカルを取ってきました。

その特徴は、

  • シカゴ音響派(要するにTortoise)にも通じるような響きへのこだわり
  • 変態的にして変幻自在なサウンドアプローチ
  • 華奢な魅力がある楽曲
  • 不安定で感情的なボーカル

といったところでしょうか。
奇抜で天才肌な人物と言えるでしょう。

マイク・キンセラ Mike Kinsella

キンセラ兄弟の弟。
ドラマーとしてキャリアをスタートさせました。
しかし、その後はAmerican FootballやOwenなど知名度の高いバンド・プロジェクトの中心人物になっています。

その特徴は

  • 朴訥としながらも澄んだ優しいメロディ
  • 安心感のある優しいボーカル
  • 実験的なことはせず、繊細で美しいうたを創る

というあたりです。
一番美しい曲を創るのはマイクでしょう。

デイヴィー・ヴォン・ボーレン Davey von Bohlen

1994年からCap’ n Jazzのセカンドギタリストだった人物。
解散後は自身のバンドPromise Ringでも人気を博しました。

キンセラ兄弟にはない特徴としては2つあります。

  • Cap’n Jazzから引き継いだ疾走感
  • 華奢なキンセラ兄弟にはない(ほんのちょっとだけど)線の太さ
  • 純朴なドリーミィさ。

「男の子だな」という感じがとてもします。汚れ無き少年性は大変魅力的です。

ネイト・キンセラ Nate Kinsella

キンセラ兄弟のいとこです。
多くのプロジェクトで様々な楽器を担当するマルチプレイヤーです。

特徴としては、

  • マルチプレイヤーらしいカラフルなサウンド
  • サポート役をこなして身につけた堅実さ
  • キンセラ的な繊細なポップネス

ですね。地味なようで非常に深みのあるタイプです。

キンセラファミリーの各バンドについて

さて、続いてはリーダーを務めた人物ごとに主要なバンドの特徴を見ていきましょう。

ティム・キンセラ Tim Kinsella

Cap’n Jazz                       

キンセラ・ファミリーの原点にして伝説です

エモとパンクの中間地点から青い初期衝動全開でぶったおれても疾走していきます。
聴く者の心を説明不能な衝撃を与えるために産み落とされたような一枚です。

こと青臭さと勢いに関しては、エモの中ですら傑出しています。
身体の奥からどうしようもなく湧き上がってくる若々しいエネルギーを、力任せに強引に音へ落とし込んでいます。それがたまりません。

前のめりに炸裂するヘロヘロ楽器隊を従えたティムの華奢な絶叫が、もう最高にかっこいいです。

活動期間そのものは短かったですが、Cap’n Jazzのメンバー達は、Promise RingにJoan of Arc、American Football,Ghost and Vodkaなど素晴らしいバンドを生み出していきます。


Joan of Arc                       

ティム・キンセラにとって主要なバンドということになるでしょう。
活動期間も長く、2019年現在23枚ものアルバムをリリースしています。

Cap’n Jazzの鋭利さは鈍っていません。
しかし、天才肌の彼らしく、そのサウンドはアルバムによって大きく変わります。


実験音楽、フォークロック、電子音楽、アンビエント、エモ、ハードコア、ポストロック
様々な音楽が入れ代わり立ち代わり、ねじくれよじれ、コラージュのように現れては消えていきます。
かと思えば、比較的シンプルなアルバムもあったりして。驚きの連続です。


しかし、ティムの華奢なボーカルが感情をさらけ出せば、どんな音が鳴っていようといつだってティムワールドに早変わりします。
ティムの存在が、Joan of Arcサウンドのアイデンティティになっていると改めて分かります。

長期にわたって活動しても新鮮味があるのは、ティムの自由な感性によるところが大きいでしょう。


Owls                          

Joan Of ArcからGhost and VodkaとAmerican Footballに分かれてしまったメンバーとリユニオンし、Cap’n Jazzの顔ぶれをもう一度集めたバンドです(デイヴィー除く)。

仕上がりとしては、まさに疾走感担当のデイヴィー要素を抜いた
Cap’n Jazzということになるでしょう。

ほんのちょっぴりジャジーで大人びたギターリフを使って、じわじわと盛り上げにくるエモという感じでしょうか。

ひりひりとする痛みは感じますが、傷痕の見せ方がもう子供ではないですね。
かといって哀愁に浸るほど達観はしていなくて、強がりのような生々しさが洒落たアレンジから覗き見えます。


Make Believe                      

ティムが主導権を握るJoan Of Arcに対し、メンバー全員の個性を反映させるために結成されたバンド。

確かにJoan of Arcよりは「感性の赴くまま!」という感じではなく、曲をロック的なフォーマットに落とし込んでいます。

ただ、やはり奇抜な感じは非常にします。予測困難なギターリフの展開、突然に叫びだすティムのボーカル(そして、不安定)。

もっとも当然ですがキメるところはばしりとキマっているので、Math Rockに接近しているとも言えるかもしれません。

マイク・キンセラ Mike Kinsella

American Football                   

曲の美しさに関しては間違いなくキンセラ・ファミリー最強のマイクによるバンドです。

エモ特有の美しさと瑞々しい焦燥も存分に内包していますが、エモにありがちな疾走感は皆無です。
ゆるやかに奏でられるギターやしっとりとしたリズム隊がそよ風のように曲を紡ぎ、 キラキラと澄み切ったフレーズには心地よいだけでなく胸を締め付けるような切なさも感じます。


ティムのような極端な実験性はありませんが、時折見せるポストロック的なアプローチは聴いていて楽しいです。

また、再結成後はマイクのソロプロジェクトであるOwenへの接近したのも特徴といえるでしょう。

※American Footballについてはこちらでも語っています。


Owen                          

マイク・キンセラのソロ・プロジェクト。
うた職人マイクの本領が発揮されています。

バンドという肩書ではないせいか、肩の力が程よく抜けているのが心地よいですね。

アコースティックな楽器をデリケートに積み重ね、優しいサウンド・スケープを生み出しています。
そっとつま弾かれるギターの音色にささやくような歌声。
とてもシンプルであるがゆえに、とても自然に美しいと思える音楽です。

キンセラ・ファミリーの中では優しさや慈しみなどを感じる唯一といっていいプロジェクトといえるでしょう。

デイヴィー・ヴォン・ボーレン Davey von Bohlen

Promise Ring                     

Cap’n Jazzから引き継いだ疾走感を少し芋っぽくして、キンセラファミリーにはない「男の子だな」感を足したのが特徴のエモバンド。

キンセラ・ファミリーのバンドで最も典型的なエモ・サウンドに近いかもしれません。
適度にダサく、純粋で、賢すぎず、程よくメロディアス。
ぎっしり詰め込まれた青くてどうにもならない衝動。

若い人のための音楽だな、という感じがすごくします。
実際、カルト的な人気を博していたようです。

若々しく突っ込んでいくリズム。素朴で夢見がちなドリーミィさ。
無垢でご機嫌なロックソングです。だけど、時折胸を締め付けられる展開もあったり。


アルバム4枚を残して活動を休止しますが、終盤はエモというよりもインディーポップに寄っていきました。


Maritime                        

Promise Ringの活動停止後にデイヴィーが組んだバンドです。

Promise Ringの疾走感は後ろに引いて、素朴なドリーミィさが全面に出ているのが特徴です。

エモとかロックという言葉はあまり似合わないですね。
高純度のインディーポップです。

冴えない夏休みの日々を思わせるような、寂しいけれどご機嫌で、自分は芋臭いのに青空はやたらと高くて。

作り手の心の中にある宝箱を見せてもらったような、そんな気持ちになります。

ネイト・キンセラ Nate Kinsella

Birthmark                       

キンセラ・ファミリーのスーパーサポートメンバー、ネイト・キンセラのソロ作。

ちょうどマイクとティムの中間を思わせるメロディセンスや、キンセラ的な繊細さなど、他のキンセラ兄弟と同じような個性があるんだなと感じます。
しかし、それ以上に印象に残るのはサウンドの手数の多さです。

グロッケンやシンセサイザー、エフェクトがかかったシンセサイザーなどサウンドの多様さも相まってエレクトロニカを聴いているような印象も感じます。

日頃はサポート役に回っているからか、曲の展開には大きな起伏はありません。
しかし、変幻自在のサウンドアプローチで存分に魅せるには、そのほうが良いのかもしれません。


ティムのように完成のまま土台を変えてしまうことはしません。
しかし、土台の上に精緻なジオラマを築いているような、思わず息をひそめてしまうような魅力があります。

その他

Ghost and Vodka                    

Joan of Arcから離れたサムとエリックが元Cap’n Jazzのメンバーと組んだバンド。
この界隈で珍しく完全にインストなのが印象的です。

キンセラ兄弟がいなくてもエモ的な激情や鋭さは健在で、そのうえCap’n Jazzのような疾走感も蘇っています。

エモの青臭い疾走感を一切損なわぬまま、ポストロック的な緊張感が張り詰めるかっこよさは唯一無二です。
完成度は非常に高く、しびれるようなリフが続きます。
とにかく活動期間が短かったことが残念ではありません。

何でもToe結成のきっかけになったんだとか。

結び キンセラファミリー、バンド多い。

疲れました。

しかし、皆若い頃は解散したり何したりと目まぐるしいですが、年を取ると同じ落ち着いてきますね。

エモというとナードなイメージですが、意外と「俺も若い頃はやんちゃしたけどよー」系なんでしょうか。

……それは、ちょっとなさそうですね。


それでは。

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