おすすめの紀元前文学を紹介する。~タイプ別に、古代のロマンを~

こんにちは。

2000年以上も前、紀元前の時代にも人々は物語を紡ぎ、書き、歌い、心の糧としてきました。

By Gary Todd – https://www.flickr.com/photos/101561334@N08/36562516345/, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=91138912



現代まで語り継がれたものはいずれもクオリティがとても高く、それでいて濃厚な異国情緒を楽しめる素晴らしい作品ばかりです。

本記事では、特におすすめの紀元前文学をタイプ別にご紹介いたします。

おすすめ紀元前文学 漂う古代のロマン

文学的物語タイプ

ここでは紀元前文学の王道とも呼べる作品をピックアップします。

文学的な深さもあり、古代の神秘もあり、英雄たちの活躍あり。
また、物語の構造もよく練られていて、現代人にも十分すぎるくらい通じるものばかりです。


最初に紀元前文学の世界に飛び込むなら、このカテゴリーがオススメです。

ギルガメッシュ叙事詩(古代メソポタミア)

おすすめ度 ★★★★★

古代メソポタミアが誇る大傑作が、世界最古のギルガメシュ叙事詩です。

神をも恐れぬ若き王が親友を失ってから死への恐怖におびえるようになり、長い旅路の果てに生きる意味を掴み、成長する。そんな話の筋道も完璧も完璧です。

現代文学としても何一つ問題なく通じるような高揚感、人生の苦み、そして、英雄成長の成長。
全てが美しい結末へと結びつく、珠玉の物語です。

少なくとも4000年以上前には存在していた物語とは思えないほどの瑞々しさで、「人生とは何か?」という意味を瑞々しく読み手へと見せてくれます。


※『ギルガメシュ叙事詩』についての記事はこちら。

オイディプス王(古代ギリシャ)

おすすめ度 ★★★★

ギリシャ悲劇のなかでも屈指の名作、『オイディプス王』です。

殺人犯を探すといミステリー的な側面でも、
神の予言に逆らい続ける人間の苦悩というテーマ的な面においても、
そしてそれらを効果的に物語へと編み込む手腕においても、
その演出力の高さは圧倒的に傑出しています。

また、苦悩する人々の活き活きとした描写も素晴らしく、展開に一切の無駄もありません。完成度の高さにおいてはナンバーワンと言えるでしょう。


迸る苦悩と残酷な運命の歯車から逃げられず、それでも生きていく悲壮さが素晴らしいです。
ギリシャ悲劇のクオリティの高さを感じられる物語です。


※『オイディプス王』についての記事はこちら。

シヌヘの物語(古代エジプト)

おすすめ度 ★★★★

『シヌヘの物語』は、古代エジプトで最も優れた物語と言えるでしょう。

紀元前3800年頃に成立した非常に古い物語でありながら、王族や英雄ではなく普通の官僚シヌヘが主役に添えられているところが目新しい点でしょう。

シヌヘは英雄のように勇敢ではありません。
偶然耳にしたクーデターの気配に恐れをなして他国に逃げ出し、命からがら他国に流れ落ちます。
そして、それなりの幸せを得つつも、望郷の念を抱き続けているのです。
自分から逃げ出した故郷のことを。

シヌヘは決してかっこよくはないかもしれなせんが、遥か昔に生きた等身大の人間に近い人物と言えるでしょう。

それから、胸のすくようなハッピーエンドは必見です。


※『シヌヘの物語』についての記事はこちら。

冒険譚的物語タイプ

読む者をワクワクさせるような冒険譚もあります。

古代の人々の想像力が生み出した未知との遭遇を、楽しめることでしょう。

オデュッセイア(古代ギリシャ)

おすすめ度 ★★★★

トロイア戦争の英雄オデュッセウスが故郷を目指しながら漂流する物語です。

蠱惑的な歌声を響かせるセイレーン、
一つ目の巨人キュクプロス、
人を豚に帰る魔女キルケなど様々な困難に遭遇しつつ、
さらには冥界にくだって今は亡き旧友たちと会話しつつ、故
郷を目指して海を行きます。

古代ギリシャ人の奔放な想像力が感じられる物語です。
見果てぬ海の向こう、彼等の心の中には色鮮やかな世界が広がっていたことを教えてくれます。



※『オデュッセイア』についての記事はこちら。

サトニ・ハームス奇談(古代エジプト)

おすすめ度 ★★★★

夢幻のごとく、色鮮やかな魔術が登場する古代エジプトの物語です。

読むと最強の魔法が使えるようになる最強の魔道書。
それを求めて、古の魔術師のミイラと繰り広げる魔術対決。
さらにはちょっとしたお色気要素もあったり。
ついでに言えば、時代設定も古代エジプト最強のファラオラムセス2世の統治下だったり。

現代人エンターテイメントにもハマるような、魅力的な構成が魅力です。

幻術が次から次へと登場し、どんな結末が訪れるのかわくわくさせてくれる、まさに砂漠の国の夢幻譚と呼べるでしょう。


※『サトニ・ハームス奇談』についての記事はこちら。

苦悩する魂の奔流タイプ

苦悩する人々の、感情が奔流のように飛び出している作品群です。

現代の文学にも同様な作品は数多く存在しますが、紀元前の文学作品は現代よりもより奔放でエネルギッシュな印象を受けます。

ヨブ記(古代イスラエル)

おすすめ度 ★★★★

旧約聖書の一編ということもあり、世界的に最も有名な苦悩する魂についての物語の一つかもしれません。

真摯に神に祈っていたヨブの身に降り注ぐ神の試練が降り注ぎます。
絶望にあえぐ自分に対して、薄っぺらい正論で自分を説き伏せようとする友人に対してヨブは激しい怒りをぶつけます。
そして、ついには神にさえ激しい怒りをぶつけようとして――。

真面目に生きていたはずなのに、突如降り注ぐ理不尽で人生がめちゃくちゃになる、ということは現代社会においても珍しくはないはずです。

そんな状況に遭遇してしまったヨブの悲嘆は、我々現代人にとっても自分のことのように響くはずです。



※『ヨブ記』についての記事はこちら。

ガーサー(古代ペルシャ)

おすすめ度 ★★★☆☆

『ガーサー』は、ゾロアスター教の開祖ザラスシュトラが編んだとされる呪文です。

呪文というよりもザラスシュトラの苦悩がマシンガンのように噴出しているのが特徴でしょう。

既存の神々の零落、
周囲と衝突して居場所を失っていく過程、
己が無力さへの失望。

ザラスシュトラの非常に強い自意識、苛烈な性格、そして動物への愛情が強く刻み込まれ、変幻自在・天真爛漫に物語の舞台は変わっていきます。

あまりにも奔放で物語構成のようなものはありませんが、言葉が秘めた破壊力と純粋さは凄絶です。


※『ガーサー』についての記事はこちら。

生活に疲れた者の魂との会話(古代エジプト)

おすすめ度 ★★★★☆

「死にたい」と願う男と、「それでも生きよ」と願う彼の魂が、ひたすらラップバトルのように舌戦を繰り広げます。

生きるということや現世に悲観的な男に対して、彼の魂は死後の世界は所詮死後の世界であり、生きているうちのささやかな幸せを追い求めるように諭し続けます。

魂はあくまでも男に寄り添い、男が抱える世界への絶望を否定も肯定もしません。

本作も現代社会で十分に通じる物語と言えるでしょう。



※『生活に疲れた者の魂との会話』はこちら。

哲学書・指南書タイプ

バガヴァッド・ギーター(古代インド)

おすすめ度 ★★★★

インド最大の叙事詩の一つ『マハーバーラタ』の一編であり、インドでも宗教的聖典の地位を築いている作品です。

『マハーバーラタ』の主役アルジュナが物語の最終決戦を遠くから見つめ、戦う意味を失ってしまったところから物語は始まります。

彼の親友でもありヴィシュヌの化身でもあるクリシュナはアルジュナを諭します。
戦士として生まれた以上は戦うという義務を果たすこと、結果に拘らず無心でことをなしてその結果に執着しなければ心は平穏になることなどを告げます。

成すべきことを成す。というのが本作の主張です。
これも現代社会においても意味のある考え方でしょう。



※『バガヴァッド・ギーター』についての記事はこちら。

孫子(古代中国)

おすすめ度 ★★★★

『孫子』は、古代中国において必読とされた兵法書です。

兵法のみならず、幅広く「戦いに勝つためにはどうすればいいのか?」を教えてくれる一冊です。
彼を知り己を知れば百戦して殆うからずという言葉、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

占いや予言が雌雄を決することになりがちな古代文学の世界において、勝敗を決めるのは己が戦力と認識している点において、孫子の兵法は極めてロジカルです。
できることなら戦わないほうが良い。戦うときは自分に有利な要素を集め、相手に不利な要素を集める。

現代に通じる要素は多々あり、ビルゲイツも愛読したのだそうです。


※『孫子』についての記事はこちら。

ソクラテスの弁明(古代ギリシャ)

おすすめ度 ★★★★☆

こちらは古代ギリシャを代表する哲学書でしょう。

古代ギリシャの哲学者プラトンによる、彼の師ソクラテスがどのように無実の罪を着せられた裁判で弁明したかが描かれています。


ロジックの巧みさはさすが古代ギリシャの哲学者といったところですが、巧みに語られた真実を押しつぶす大衆の在り様は、現代にも通じるところがあります。

また、自分は自分にはまだ知らないことがまだあると知っているがゆえにそうではない人よりは賢いという「無知の知」の境地にソクラテスがたどり着く過程を知ることもできます。


※『ソクラテスの弁明について』の記事はこちら。

ドキュメンタリー・タイプ

我々が知ることのできない過去の一幕を、リアリティのある文体で淡々と教えてくれる作品です。

あたかも深夜のNHKドキュメンタリーのように、古代の日々に迫っています。

アナバシス(古代ギリシャ)

おすすめ度 ★★★★☆

ソクラテスの弟子でありながらアケメネス朝ペルシャで傭兵団長として活躍した、クセノポンがつづった手記です。

見知らぬ街、広大な山や砂漠を乗り越え、ペルシャからギリシャに帰ろうとする日々が非常にリアリティを持って描かれています。

略奪をしたり、
追いかけてくるペルシャ軍と戦ったり、
頼りになる右腕を病気で失ったり。
傭兵たちが久しぶりに海を見たら泣きわめきながら喚起したり。

古代の傭兵という、未知の職業の日常を垣間見ることが出来る一冊です。



※『アナバシス』についての記事はこちら。

ガリア戦記(古代ローマ)

おすすめ度 ★★★★☆

古代ローマ最大の智将カエサルが、現在のフランス周辺にあたるガリアを制圧する過程を描いた手記です。

なんとこの手記、もともとローマに報告して自分の支持を挙げることを目的として書かれているため、とにかくカエサルが大活躍します。

しかしながらスムーズにガリア平定が進むわけでもなく敵の裏切りや愚かな味方に足を引っ張られ、3歩進んで2歩下がりながら少しずつガリアを平定していきます。

カエサルという男のカリスマの一端を垣間見える著書と言えるでしょう。


※『ガリア戦記』についての記事はこちら。

結びに代えて:古代の空気感 紀元前の濃度

本記事ではおおむね紀元前より前に創られた文学作品をピックアップしました。

遠い過去の作品らしく、どれも現代にはない空気感を含んでいます。
その一方でどれも現代人にも共感できるような要素も含んでいます。

現代まで残る作品は、少なからず時代の流れという淘汰を生き延びています。
言い換えれば、物語が書かれた当時やそのあとの時代に人々にとっても、何らかの存在意義があるから現代にまで語り継がれたのです。

存在意義とは何か? 色々あるのでしょうが、当然「面白い!」という要素もあったはずです。

それを現代人が読んでも、まあ、疑問点も多々ありますが、それでも「面白い!」って思うのです。

上手く言えないけど、それってとても素敵なことだと思うのです。
ワクワクすると思うのです。

人間が人間である理由のヒントが、古代の文学には眠っていると思うのです。
だから、紀元前文学を読むことは、宝探しにも似ていると思うのです。

人間を、自分を、生きる意味を、そのヒントを。
文字の奥に広がる古代の世界に向かって探しに行きましょう。

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