Khruangbin(クルアンピン)というバンドについて。 ジャンル分類不可能な異境チル・ファンク



こんにちは。

Khruangbin(クルアンピン)は、2014年にアメリカテキサス州で結成されたトリオ編成のバンドです。

Khruangbin(クルアンピン)の音楽性・ジャンルについて

Khruangbin(クルアンピン)の音楽には、
Sublime Frequenciesなどが再発している東南アジアや中近東のロック・ポップスMaft SaiがによるThai Funkシリーズなど、
大衆音楽において辺境扱いをされている地域の60~70年代サウンドからの多大な影響が感じられます。


ただし、彼等の音楽の根底にあるのは欧米的なロックサウンドです。
そして、その土台の上に東南アジア的なゆるいグルーヴや中近東の妖しげな旋律を積み上げ、未知の音世界を創り上げています。

例えるなら、スポンジ生地はベーシックなものを使っているけれど、その上に飾り付けられるクリームや果実は全く違う文化からそのまま持ってきている、という感じでしょうか。

蒸し暑い夏の夜。ぎらついた活気に満ちた大通り。
酩酊にも似たささやかな祝祭感。 ふと湧き上がる感傷。
他の欧米ロックバンドにはない空気感を、ギター・ベース・ドラムス・ほぼボーカルなしというシンプルな構成でサイケデリックに奏でています。

彼らの音楽は言葉でジャンル分類するのが非常に難しいものです。
しかし、敢えて表すなら……、
異境サイケデリック・チル・ファンクといったところでしょうか。

Khruangbin(クルアンピン)の各アルバムについて

Khruangbin(クルアンピン)は2021年3月現在、3枚のアルバムをリリースしています。
言葉だけでは分かりにくいと思って相関図を作成してみました。

では、本題に入りましょう。

【1st】 The Universe Smiles Upon You

本作は60~70年代の東南アジアの音楽に多大な影響を受けているそうです。
確かに、旧き良き東南アジアサウンドの匂いをもろに感じるチルでサイケデリックなサウンドです。

特徴はそのシンプルさでしょう。
行間を読ませるタイプとでもいえばいいのでしょうか。
寡黙なスタイルという点においては、The XXの1stを思い出させます。
(ただ、こちらのほうがリラックスしています)

そして、東南アジアの夜風を想起させる異境のセンチメンタルには、本作の強烈な独創性を感じます。

ギターピッキングの向こうに広がる異国の言葉。
ベースラインと共に鼻先をかすめる香辛料の匂い。
ドラムスの一打から広がる夜の喧騒。
リラックスして、心安らいで、時に切なくて。そんな一時を与えてくれます。

本作には爆発しそうな激情や壮絶な自己主張は存在しません。
あるのは、柔らかなグルーヴの奥に広がる異境の情景だけです。

【2nd】 Con Todo El Mundo

一気に完成度を高めてきた、というのが第一印象でした。
アレンジの手数が増えていることにも注目です。
前作までの東南アジアサウンドだけでなく、ペルシャ的サウンドも強い存在感を放っています。

今までの熱帯雨林的リラックスムードにペルシャ的な妖しさも加わり、さらにディスコサウンドやR&B的な要素も強くなっています。
適宜様々な楽器が導入され楽曲の彩度も上がり、バンドとしての貫録を増しつつあります。

本作でも曲の展開に大きな起伏はなく、緩やかに音達が流れていきます。
しかし、演奏はタイトになっており、1stとは違う行き届いた心地よさがあります。


本作最大の魅力は万華鏡を回すように七変化していくサウンドでしょう。
ゆるさを失わぬままの目まぐるしい展開は、新鮮な驚きを常に与えてくれます。


1stは東南アジア的異境という一つの世界を終始見せてくれました。
しかし、本作は様々な世界と感情が次から次へと目の前のスクリーンに映し出されていくような、まさしくサイケデリックな体験をさせてくれます。

【3rd】Mordechai

熱帯雨林的チルな雰囲気はそのままに、ボーカルの存在感がぐっとましているのが本作の特徴でしょう。

ノスタルジックで異境的な空気感を漂っていますが、洗練されたR&B・ソウル的なテクスチャーも時折強く匂い立っています。

時に囁き、時にソフトに歌い上げるボーカル、
東南アジアの夜の気配を爪弾くエレクトリックギター、
優しくたなびくリズムセクション、
過去曲も収録(サンプリング?)されていますが、もはや原型を留めていません。
ほんのり香る香辛料の匂いとおぼろに揺れるネオンに包まれながら、ゆったりと時は進んでいきます。

ただ、ボーカルは前に出たことにより情緒的な雰囲気が感じられるようになっています。
異境的雰囲気がやや落ち着いたことも相まって人肌をより身近に感じられるようになっています。

安心できるような作品と言えるかもしれません。

まとめ。Khruangbin。クルアンピン。ジャンル分類不可能な異境の風の匂い

Khruangbin(クルアンピン)は個性的で面白いバンドです。

60年代~70年代の東南アジアや中近東の音楽を消化しているバンドは、決して彼らが初めてはありません。
(例えば、dengue feverとか)

ただ、 Khruangbinは、彼等の根底を成す欧米的なアイデンティティと彼等にとって全く異質な東南アジア・ペルシャ的なサウンドをゆるい雰囲気を醸造しながら上手に組み合わせています。


それがKhruangbinの魅力を成しています。
『自分』と『他者』それぞれの特徴を理解し最適解を導き出したのでしょう。

末永く聴いていける音楽だと思います。

1 個のコメント

  • ハイシーズン始まる / バンコク在住ギタリストの日常 ④ | SPEAKER STACK スピーカースタック へ返信する コメントをキャンセル

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