Khruangbin(クルアンピン)というバンドについて。 ジャンル分類不可能な異境チル・ファンク



こんにちは。

Khruangbinは、2014年にアメリカテキサス州で結成されたトリオ編成のバンドです。
Khruangbin。クルアンビン。タイ語で『飛行機』を意味する単語だそうです。
これから上昇していく新進気鋭のバンドにぴったりな名を冠していますね。

Khruangbin(クルアンピン)の音楽性・ジャンルについて

一聴すると、まず気付くことがあります。
Sublime Frequenciesなどが再発している東南アジアや中近東のロック・ポップスMaft SaiがによるThai Funkシリーズなど、
大衆音楽においては辺境扱いをされている地域の60~70年代サウンドからの多大な影響です。

香辛料の匂い漂う雰囲気に、最初は度肝を抜かれました。

もっとも、彼等の音楽の根底にあるのは欧米的なロックサウンドです。
そして、そのうえで東南アジア的なゆるいグルーヴや中近東の妖しげな旋律を積み上げ、未知の音世界を創り上げています。

例えるなら、スポンジ生地はベーシックなものを使っているけれど、その上に飾り付けられるクリームや果実は全く違う文化からそのまま持ってきている、という感じでしょうか。
異国で不思議なアレンジをされている見慣れた料理を食べたときのような、絶妙にアンバランスな味わいに心惹かれます。

蒸し暑い夏の夜。ぎらついた活気に満ちた大通り。
酩酊にも似たささやかな祝祭感。 ふと湧き上がる感傷。
他の欧米ロックバンドにはない空気感を、ギター・ベース・ドラムス・ほぼボーカルなしというシンプルな構成でサイケデリックに奏でています。

彼らの音楽は言葉でジャンル分類するのが非常に難しいものです。
しかし、敢えて表すなら……、
異境サイケデリック・チル・ファンクといったところでしょうか。

Khruangbin(クルアンピン)の各アルバムについて

Khruangbinは2019年7月現在、3枚のアルバムをリリースしています。
当然、それぞれのアルバムごとに特徴があります。
ただ、文字だけではなかなか伝えにくいので、成分内訳のイメージを図にしてみました。

【1st album】 The Universe Smiles Upon You

本作は60~70年代の東南アジアの音楽に多大な影響を受けているそうです。
確かに、旧き良き東南アジアサウンドの匂いをもろに感じるチルでサイケデリックなサウンドです。

特徴はそのシンプルさでしょう。
行間を読ませるタイプとでもいえばいいのでしょうか。
寡黙なスタイルという点においては、The XXの1stを思い出させます。
(ただ、こちらのほうがリラックスしています)

そして、東南アジアの夜風を想起させる異境のセンチメンタルには、本作の強烈な独創性を感じます。

ギターピッキングの向こうに広がる異国の言葉。
ベースラインと共に鼻先をかすめる香辛料の匂い。
ドラムスの一打から広がる夜の喧騒。
リラックスして、心安らいで、時に切なくて。そんな一時を与えてくれます。

本作には爆発しそうな激情や壮絶な自己主張は存在しません。
あるのは、柔らかなグルーヴの奥に広がる異境の情景だけです。

【2nd album】 Con Todo El Mundo

一気に完成度を高めてきたな、というのが第一印象でした。
アレンジの手数が増えていることにも注目です。
前作までの東南アジアサウンドだけでなく、ペルシャ的サウンドも強い存在感を放ちます。

今までの熱帯雨林的リラックスムードにペルシャ的な妖しさも加わり、さらにディスコサウンドやR&B的な要素も強くなっています。
適宜様々な楽器が導入され楽曲の彩度も上がり、バンドとしての貫録を増しつつあります。

本作でも曲の展開に大きな起伏はなく、緩やかに音達が流れていきます。
しかし、演奏はタイトになっており、1stとは違う行き届いた心地よさがあります。


本作最大の魅力は万華鏡を回すように七変化していくサウンドでしょう。
ゆるさを失わぬままの目まぐるしい展開は、新鮮な驚きを常に与えてくれます。

1stは東南アジア的異境という一つの世界を終始見せてくれました。

しかし、本作は様々な世界と感情が次から次へと目の前のスクリーンに映し出されていくような、まさしくサイケデリックな体験をさせてくれます。

【3rd Album】Hasta El Cielo

東南アジアや地中海サウンドのうえに、ジャマイカ由来のサウンドを重ねてきたのが特徴です。

Khruangbin的異境・チルファンクの上に、強烈にダブがかかっているのです。

低音域への深いリバーブ・エコー、
強調されるリズムサウンド、
異様に長い余韻を残すボーカルやギター、
過去曲も収録(サンプリング?)されていますが、もはや原型を留めていません。
過去作のゆるい心地よさを、不思議な酩酊感が厚い膜のように覆っているのです。

音の向こう側に広がっていた異境は曇ってしまいましたが、どこにもない摩訶不思議な感覚を味わせてくれます。

今まで創り上げてきたKhruangbinを内側から凄まじい勢いで醗酵させているような、バンドとしては極めて独特の進化をしています。

まとめ。Khruangbin。クルアンピン。ジャンル分類不可能な異境の風の匂い

Khruangbin。クルアンピン。個性的で面白いバンドです。

60年代~70年代の東南アジアや中近東の音楽を消化しているバンドは、決して彼らが初めてはありません。
(例えば、dengue feverとか)

ただ、 Khruangbinは、彼等の根底を成す欧米的なアイデンティティと彼等にとって全く異質な東南アジア・ペルシャ的なサウンドをゆるい雰囲気を醸造しながら上手に組み合わせています。


それがKhruangbinの魅力を成しています。
『自分』と『他者』それぞれの特徴を理解し最適解を導き出したのでしょうね。
彼等には深い聡明さがあるのでしょう。

末永く聴いていける音楽だと思います。




それでは。

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