Karkhanaについて。 フリージャズ?ポストロック?中東伝統音楽? 数多のジャンルを限界まで煮詰めた、才気と妖気と迫力がみなぎる多国籍・実験音楽集団。

こんにちは。

Karkhanaはレバノンで2014年に結成された7人組のインストゥルメンタル・ロックバンドです。

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フリージャズ、伝統的中東音楽、フォーク、プログレ、サーフミュージック、ポストロックといったジャンルを縦横無尽に往復しつつ、実験的ながらも怪しい引力に満ちたサウンドを特徴としています。

レバノン、エジプト、トルコ、アメリカと非常に多国籍なメンバーによって構成されており、中東地域では名の知れたインディーズミュージシャンも多数在籍しています。

彼等は2020年7月現在3枚のアルバムをリリースしています。
本作ではその全てを語ります。

Karkhanaのアルバムについて

これからアルバムごとに語っていきます。
ただ、文字だけでは分かりにくいと思い、相関図を作ってみました。

では、アルバムごとに見ていきましょう。

バンド概略

Karkhanaはメンバーがそれぞれ活動拠点としていたベイルード、カイロ、イスタンブールの実験音楽的要素を組み合わせようという野望のもとに結成されました。

自らの音楽を「自由な中東音楽」を称し、聴き手はもちろん演奏者自身にも予想がつかないような自律的音楽の創造を目指していたようです。

Holidays Recordsよりデビュー作のリリース後、彼等の音楽は欧米でも高く評価されるようになり、海外公演も行っています。

(1st)For Seun Matta

アルバムの魅力

怪しくうごめくフリージャズと中東のオリエンタルな響きが絶えず融合し続けているような、抑制された激しい熱量が特徴のアルバムです。

時にフリージャズ的に、時に中東的なサーフロックに、それらすべてをぐちゃぐちゃに混ぜてドロドロに煮詰めたように楽曲は展開してきます。

とはいえ完全に実験精神スープへと溶けだしてしまったわけではなく、聴きやすい楽曲性を強く感じさせる瞬間も少なからずあります。

妖しさが漂う静謐な瞬間もあれば各楽器が怒涛のように爆発することもあり、聴き手の予想を外していくような無軌道さがあり、自由闊達な展開に胸が躍らされれます。

奇想天外に展開するトランペットのオリエンタルな旋律、
アラビアン・サーフロックともいうべき香水と熱砂が漂うギターやオルガンのサウンド、
地の底でぐつぐつとゆだっているようなパーカッションとベース。
また、非音階的なアプローチも多いのも楽しいところです。
ソロパートが長く続くことがありますが、常に刺激に満ちており退屈することはありません。

優秀な演奏者たちの奥底からあふれ出してくる衝動が渦を巻きながらぶつかり合っているような、緊張感がたまりません。
危ういバランスのうえでギリギリ成り立っているような、ひりひりするような熱量に満ちた作品です。

(2nd)Al Dar Al Hamra

前作の妖しさはそのままに、ドロドロとしたカオス感が増しているのが本作Al Dar Al Hamraです。

エネルギー量の高さでは本作が一番です。
カオティックに展開するフリージャズをベースにしつつも、様々なジャンルが咆哮するようにせめぎ合っています。

爆発しそうなエネルギーを抑制しつつも、抑えきれずにぐつぐつと吹きこぼれているような魅力に引き込まれることでしょう。
野性的でポリリズム的なビートが目立っているのも印象的ですが瞑想的な精神性も煙たく深く立ち込めており、陶酔的な精神世界がぐるぐると展開してきます。

妖しい中東的な旋律をぶちまけるエレクトリックギター、
アフリカンな雰囲気を感じさせる管楽器、
肉体的なうごめきを叩き出すパーカッションやベース。
起承転結で魅せるタイプではなく瞬間瞬間の天性溢れる閃きを勝負しているタイプの作品です。

鬱蒼と茂るジャングルを息をひそめながら歩いているような緊張感とワクワク感があり、胸の奥から高鳴る衝動が沸き上がってくるような熱い引力があります。

そして、作品全般から中東的感性が浮かび上がっているのが、圧倒的な魅力と言えるでしょう。
どことなくアラビアン・ナイト的というか、聴き手の想像力を喚起する旋律に欧米や東アジアにはない蠱惑的な引力があります。

ハーレムの寝物語で語られる冒険譚のような、そんな音楽と言えるでしょう。

(3rd)Bitter Balls

彼等のキャリアで最もメロディアスな作品と言えるでしょう。
また、アルバム全体でも緩急がついており、聴きやすい作品と言えます。
(もちろん、カオスな展開もありますが)


中東的でありながらインディー的な感性も感じさせる旋律が随所にちりばめられており、アルバム全体としてスッキリとした印象を受けます。

さらにはロック的なリフがかっこよくキマっている瞬間などもあり、新しい魅力が存分に発揮されています。
また、曲としての起承転結もしっかりしていて、即興演奏がその合間合間に噴出しているという構造的な変化も本作の特徴でしょう。

さらに言えば、アンビエントな瞬間も多いですが、妖しさを前面に押し出すというよりも瞑想的な穏やかさと中東的妖しさが混ざり合っているものが多い印象を受けます。

今までの才覚をドロドロに煮詰めた魅力というよりも、きちんと丁寧に作り上げる作風へとややシフトチェンジしています。

印象的な旋律を奏でるトランペットやエレクトリック/アコースティックギター、
洗練された民俗的雰囲気を響かせるパーカッションやベース。
流れるように楽曲は展開していき、技巧的な語り口で聴き手を引き込みクライマックスへと連れていきます。

ドロドロのカオティックさというよりも砂漠を吹き抜ける熱く乾いた風ともいうべき整然とした暑さが感じられます。

今までよりも楽曲としての完成度が高く、透明度の高い美しさも強く感じられる作品です。

結びに代えて karkhanaと中東インスト

戦いの意思?

中東のインディーミュージックという魅力的なジャンルに足を突っ込んでまだ日は浅いのですが、中東のインスト音楽には実験的なサウンドでなおかつ熱量の高いバンドが多いように感じています。

日本でいうならばBoredoms、欧米でいうならばGod Speedyou! Black EmperorやTarentelあたりをイメージすると比較的近いかもしれません(比較的、ですが)。

少なくともMONO、Toe、Mogwaiのように「エモい」音楽が主流ではないのです(全くいないわけではないです)。

そもそも、インディーズ音楽全般において内省的な叙情性を押し出している音楽が非常に希少です。

こういう差異は文化的事情が複雑に絡み合ってできているので、ふと思いついたような意見が正確性を帯びることはありません。
ただ、中東におけるこういった音楽を志向する層には、日本や欧米のように「浸る」趣味(あるいは余裕)はないのかな、と。そんな一面もあるのかな、と。


戦う以上は、全力で。



それでは。

主要参考サイト

KARKHANA (w/ Mazen Kerbaj, Umut Çağlar, Sam Shalabi, Sharif Sehnaoui, Maurice Louca, Tony Elieh, Michael Zerang) + JAWA MANLA (Aleppo) + Pantropical presents: MANDOLIN SISTERS (IN)
https://scenenoise.com/New-Music/karkhana-return-with-new-experimental-album-bitter-balls https://www.facebook.com/karkhana.official/

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