こんにちは。
Jambinaiは2009年にソウルで結成された韓国出身のロックバンドです。

彼等の音楽はポストロックにカテゴライズされることが多く、韓国の伝統音楽やドゥームメタルの影響を取り入れるなどアヴァンギャルドなスタイルを特徴としています。
海外ツアーの実施や平昌オリンピックの閉会式での演奏など、韓国の内外で大きな存在感を放っています。
2020年3月現在、彼等は3枚のフルアルバムをリリースしています。
本作ではその全アルバムについて語ります。
Jambinaiの全アルバムについて。韓国ポストロック界の至宝
各アルバムごとに見ていきますが、言葉だけでは分かりにくいかもしれないと思って相関図を作ってみました。

では、アルバムごとに見ていきましょう。
(1st)Differance
最初の一音が鳴った瞬間、彼ら独自の世界一気に引き込まれるアルバムです。
韓国の民族楽器とヘヴィなロックサウンドが緊張感を含みながら妖しく棚引き、オリエンタルでダークな叙情性と壮大なメランコリーを描き出します。
あらゆるジャンルを飲み込みつつも、泰然と佇む不敵なメランコリーがあると言えば良いのでしょうか。
民族楽器の東洋的でディープな響き、
ひっそりとしたピッキングから沈み込む様なヘヴィネスをはじき出すエレクトリックギター、
のたうつようにうごめくベース、
風にざわめく木々のような静けさから雷鳴のような轟音まで再現するドラムス。
荒涼とした静寂から始まり、激しくも幽玄なクライマックスへとゆっくりと上り詰めていく。
ぞの壮麗な展開はノーマルな轟音ポストロックへと一線を画す精緻さと荒々しさを誇ります。
デビュー作ではありますが完成度は極めて高く、圧倒的な才覚の風格が漂っています。
民族楽器的な要素が特に強調されている作品でもあり、彼等の持つ妖しさが前面に出ていると言えるでしょう。
(2nd)A Hermitage
前作よりもヘヴィかつポップになった作品です。
また、ダークな叙情性よりもカオティックな爆発力に重きを置いているのも本作の特徴です。
本作は前作をリスナー目線でチェックして聴きやすい方向性に近づけた作品とのこと。
確かにボーカル入りのトラック(ラップも)が増えていたり、短めの曲が増えていたりします。
また、彼等が影響元として挙げているメタルサウンドへの接近も感じられ、前作よりも様々な要素をぎゅっと濃縮している点もこの文脈から見るべきでしょう。
妖しさから不気味さまで変幻自在に響かせる民族楽器、
地の底で張り叫ぶようなヘヴィなギターリフ、
低音部でビート感を生み出すベース、
破壊力を叩き出すアグレッシブなドラムス。
ダークで東洋的な美しさを垣間見せつつも、アグレッシブなサウンドに舵を切っています。
しかし他を寄せ付けない風格はそのまま。
しかし、ダークで混沌とした異形性の際立つアルバムと言えるでしょう。
(3rd)Onda
1stの緊張感に満ちた叙情性と2ndのカオティックな破壊力を融合させ、深淵かつ壮麗な筆遣いで描き上げたようなアルバムです。
本作Ondaは中心人物であるLee Ilwooがアメリカを旅してグランドキャニオンを旅した経験にインスパイアされているとのこと。
会社をやめて経済的に困っているところに大自然を見て圧倒され、「お前はよくやっているよ」と言われているように感じたそうです。
この場合、過去作と違ってテーマの主題が怒りではなくなったとも述べていましたが、そこが本作を特徴づけている重要なポイントでしょう。
彼等の武器である緊張感の高いダークさが大渓谷の威容を思わせる壮大さと美しさが力強くぶつかり合っています。
神秘的な奥行きを感じさせる民族楽器、
優しげな音色からアグレッシブなヘヴィネスまで響かせるエレクトリックギター、
躍動的な情緒を走らせるベースライン、
スケールの大きさを感じさせる力強いドラムス。
今までよりもメロディアスな女性ボーカルが導入されていることもあり、神々しくも深淵を感じさせるヘヴィネスが湧き立っています。
元来、彼等の持っていた神懸かり的な側面が強く出ている作品と言えるでしょう。
壮大にして荘厳なヘヴィネスと全てをなぎ倒すような感情の奔流、その二つが謡い物語る一大叙事詩のような作品です。
結びに代えて Jambinaiの音楽の奥底にあるものとは
Jambinaiのアイデンティティとそこから得られる生き方のヒント
Jambinaiの主要メンバーは韓国の伝統音楽を大学で学び、自分たちの演奏に自負心があったようです。
そして、自分たちの演奏を多くの人に届けるためにヘヴィなサウンドとの融合を試みたと述べています。
少し見方を変えれば、彼等の活動のモチベーションとなっているのは「ヘヴィなサウンドを奏でたい」ではなく、「伝統音楽を聞かせたい」であり、「素晴らしい演奏をしている自分たちに、どうにかして視線を集めたい」であると推測することもできます。
彼等の演奏から力強い風格がにじみ出るのは、そんなワケがあるからなのかもしれません。
なんにせよ、多くの人と繋がるために必死に策を打ちながらもクールさを失わないそのスタイルには、深い感銘を受けざるを得ません。
実力はもちろんのこと、強い自信とそれを裏打ちする努力があるのでしょう。
生きるために必要な知恵と勇気が感じられるように思います。
それでは。
主要参考サイト
http://hostess.co.jp/artists/jambinai/
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