こんにちは。
Isotope 217は1997年に結成されたシカゴを拠点として活動する音楽ユニットです。

ジャンルとしてはポストロックになるかと思います。
TortoiseとChicago Underground Orchestraのメンバーで構成されているのが重要な点でしょう。
ロック/ジャズ/ファンク/ダブをシカゴ音響派的フィルターを通して脱構築/再構築することによって、知性的ながらも危うさを湛えたサウンドを形成しています。
2021年8月現在、Isotope 217は3作のフルアルバムをリリースしています。
本記事では、その全てを見ていきます。
目次
Isotope 217のアルバム一覧
これからリリース順にアルバムを見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成してみました。

では、本題に入りましょう。
(1st)The Unstable Molecule
ジャズやファンクの熱量とダブの音響を、形而上学的なクールさで紡いでいるアルバムです。
ポストロック的/シカゴ音響派的に特有である「不安定な美」が、Isotope 217諸作の中でもとりわけ魅力的に紡がれています。
淡々と、未完成で不安定な魂が築き上げる実験精神の危うさの内側には、揺らめく火影に魅入られるような力強さが揺蕩っています。
平坦なビート感の上で踊るホーン隊の緩やかにぶつかり合うホーン隊、
抑制的かつ実験的な響きをうねりだすシンセ/ギター、
時に平坦に、時にグルーヴィにビートも時には描き出すドラムス/パーカッション、
TortoiseやChicago Underground Orchestraの影響も感じますが、ジャズやファンクからの強めな影響をポストロック的に消化しているのが本作の特徴でしょう。
抑制された知性的なテクスチャーの下では、熱量やスモーキーさが優雅に揺蕩い、蠢動し、時には暴れています。
やや不器用ながらも冷静さを失わず、ファンク/ジャズを昇華し、どこかいびつなポストロックサウンドを構築しています。
ジャズ/ファンク/ダブのフォーマットを利用してはいるものの、それらが本来持っていた身体性ではなく初期ポストロック的な未完成な音響性へと換骨奪胎されていると言えるかもしれません。
ただ、本作の徹底した不安定なクールさはIsotope 217の他作品にも見られないものです。
そのテクスチャ―下で対流する初期ポストロック的平坦性とジャズ/ファンク/ダブ的熱量のぶつかり合いは、「熱」と「冷」の多段的な融合や温度変化を生み出しています。
(2nd)Utonian Automatic
不安定な冷たさとその内に宿る熱量が魅力的だった前作に対し、本作は熱量が分かりやすく噴出しています。
とはいえ、実験的/先鋭的な雰囲気は変わらず、またシカゴ音響派的なアンバランスな知性も変わりません。
ポストロック的で平坦なテクスチャーの内側ではロック/ジャズ/ファンク/ラテン/ダブの熱量が奔流し、じわじわと発汗するようなグルーヴを構築しています。
煙たく優美な響き、蠢くようなグルーヴ、不安定な美しさ。
ロック/ジャズ/ファンク/ダブの影響を消化しつつ、
その熱量をゆったりとしたサウンドに取り込み、
じっくり燻すような味わい深さを生み出しています。
もちろん前作同様、形而上学的な(ある意味では周りに距離を置いた)知性も絶えず帯びています。
未完成の美がもたらす侘び寂びも同様です。
ただ、「冷」と「熱」のぶつかり合いが魅力の主を成していた前作と違い、本作は一体感がもたらすしなやかさが魅力となっています。より自由な空気にもなっているように感じます。
とはいえ、根っこの魅力はもちろん同じ。
音響への探求精神です。
不可思議な音の響きの世界を、楽しめるアルバムです。
(3rd)Who Stole the I Walkman
Isotope 217独自のサウンドを構築している作品です。
ベースは文化系的なポストロックテクスチャーにあるものの、ヒップホップの影響も今までより強く感じさせます。
もちろんジャズ/ファンクの影響も漂っていますが、今までよりもその影響はIsotope 217独自のサウンドへと溶け込んでいます。
また、IDM/エレクトロニカ的なニュアンスが強く出ているのも特徴でしょう。
完成度が上がり、シカゴ音響派的サウンド・プロダクションを成しているとも言えます。
ヒリヒリとした熱量を湛え、クールな緊張感を帯びて、ゆったりと波打つように先鋭的な音楽を構築していきます。
海中に響くソナー音を思わせる、孤独で、精悍で、勇敢な探求心を感じさせます。
その一方で自由奔放な無垢さを感じさせる瞬間もあり、本作には複雑多様なテクスチャーが織り交ざっている証左とも言えるかもしれません。
いぶし銀的な格好良さを身にまとい、それでいて形而上学的な探求心を追求し、どこかアンバランスながらも毅然とした力強さも漂わせています。
スロウながらも不敵な自信を漂わせている、先鋭的で孤高の魅力を秘めたアルバムと言えるでしょう。
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