こんにちは。
Inspirativeはバンコクで2006年に結成された5人組ロックバンドです。

ポストロック/シューゲイザー的なサウンドを軸にして、耽美で幻想的な轟音を聞かせる音楽を奏でています。
また、中国を中心としたアジア各地で高い人気を誇っているそうです。
彼等は2020年2月現在、3枚のフルアルバムをリリースしています。
本記事ではその全アルバムを語ります。
Inspirativeの全アルバムを語る。タイのポストロック・シューゲイザーバンドの軌跡
各アルバムについて語る前に、言葉だけでは分かりにくいと思いますので相関図を作ってみました。

いかがでしょうか。
では、アルバムごとに見ていきましょう。
(1st)Memories Come Rushing up to Meet Me Now
2010年にリリースされた彼等の1stアルバムです。
切なく繊細な旋律と緩やかに溢れ出す轟音の対比が織りなす、柔らかな感傷に心奪われます。
しっとりと濡れた叙情性によってアルバム全編が覆われています。
エレクトリックギターの澄んだ音色、
時折降り注ぐピアノの香り豊かな響き、
ドラムスとベースの柔らかなリズム感。
そして、ゆっくりとカタルシスに達するゆるやかな曲展開。
緩急の急激な切り替えによってダイナミズムを生み出すのではなく、穏やかなパートから轟音のパートへと流麗に移り変わる展開は彼等のオリジナリティと呼べるでしょう。
また、轟音も決して攻撃的ではなく、柔らかな濃霧のような感傷的な心地よさを感じます。
幻想的なだけでなく、情景的な美しさも感じるアルバムです。
(2nd)Mysteriously Awake
前作よりもシューゲイザーに接近した耽美なアルバムです。
ディレイやリバーブが深くかけられるパートが多く、ゆったりとまどろむ様な心地よさが前面に出ているのが本作の特徴です。
ノイズやエコーが生み出す幻想的な感傷が、壮大な奔流となって駆け抜けていきます。
絡み合いながら儚い空間を創り出すエレクトリックギターの旋律、
ゆったりと踊るようなベースライン、
幻想的な世界像を根底で支える力強いドラムス。
「静」と「動」の切り替わりはさらに自然になり、潮が満ちては引いてゆくように静謐なパートから轟音パートへと移り変わっていきます。
轟音のない穏やかな曲も少なくなく、起伏に満ちた展開はありません。
穏やかで、それでいて濃密で、しかもノスタルジックな楽曲が並んでます。
耽美ではありますが不健康な印象は受けません。
繊細かつ感傷的でありながら、リラックスできるサウンドスケープが展開されているアルバムです。
(3rd)Interia,Pt.1
2018年にリリースされた3rdアルバムです。
凛とした響きが紡ぎ出す、澄み渡る叙情性が本作の特徴です。
1stよりも柔らかで、2ndほどディレイやリバーブを強調するわけでもなく、
楽器本来の豊潤な音色を繊細に織り交ぜ、過去作よりもきりっとした音像を描き出しています。
艶やかな叙情性はそのままに、余計なものは削ぎ落とされているとも言えるでしょう。
凛然と波打つエレクトリックギターの旋律、
柔らかに揺蕩うキーボード、
緩やかに伸びていくベースライン、
息を潜ませるようにビートを刻むドラムス。
全体として轟音パートやビートの存在感が後退し、アルバム全体を幻想的な穏やかさが覆っています。
その一方で、「静」と「動」の切り替えがダイナミックなのも本作の特徴です。
浄化するようなノイズが一気に噴き出して全てを覆いつくす瞬間には、深い聖性を感じずにはいられません。
静けさの中で揺らめく光のような、儚くも決然とした佇まいには息を呑む様な美しさを感じます。
Inspirativeで最も普遍的なアルバムだと思います。
主要参考サイト
https://www.happeningandfriends.com/product-detail/1430?lang=th http://indieband.namjai.cc/e197204.htmlバンコクの人気シューゲイザーバンドINSPIRATIVEが語るタイの音楽シーンhttps://en.wikipedia.org/wiki/Inspirative https://www.discogs.com/ja/artist/3718826-Inspirative https://www.facebook.com/inspirative/
【結びに代えて】タイで生まれたInspirativeというバンドの魅力について。おすすめしたいその理由は、彼らが高純度のポストロック・シューゲイザーだから
Inspirativeはタイ出身のバンドです。
日本の一般的な音楽好きにとっては、あまりなじみ深い地域の出身と言えるでしょう。
彼等の音楽にはステレオタイプなタイっぽさが感じられるわけではありません。
しかし、私達が高いクオリティと素晴らしいオリジナリティを兼ね備えた普遍的なインディーロックサウンドを奏でています。
欧米から押し付けられた「らしさ」から解き放たれ、自然体の「らしさ」でポストロック・シューゲイザーを奏でているのがInspirativeなのかもしれません。
それでは。
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