Hildur Gudnadottirのアルバムについて。格調高くも荒涼としたチェロの音色が描き出す、内省的な心象風景。

こんにちは。

Hildur Gudnadottirはアイスランド出身のチェリストです。

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ジャンルとしてはポスト・クラシカルとするのが穏当でしょう。
チェロによって奏でられる物憂い気品を特徴としています。


近年はJOKERやチェルノブイリなどの映画やドラマのサウンドトラックに活動の軸を移しており、そちらで彼女の作品に触れている方も多いかと思います。

Hildur Gudnadottirは2021年2月現在、4枚のフルアルバムをリリースしています。
本作ではその全てを語ります。

Hildur Gudnadottirのアルバムについて

これからリリース順にアルバムをみていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成してみました。

では、本題に入りましょう。

(1st)Mount A

元々はLost In Hildurness名義でリリースされていたデビュー作です。

陰鬱な厳かさを漂よわせるチェロ・ヴィオラによるドローンサウンドがアルバムンの根幹を成しています。
そこにピアノやヴィブラフォンといったクラシカルな楽器で気品を加えたり、ガムランやツィターなどの民族楽器によって独特の妖しさを煙らせたりしているのが個性的です。

ソフトで繊細な危うさが漂い、ダークで幻想的なサウンドスケープを構築しているのが特徴でしょう。

ミニマルに繰り返される物憂い旋律がダークな陶酔感をもたらし、果てることなく溶け落ちていくような甘美さに浸ることができます。

夜の湖のような静けさの中には、狂気の息遣いも確かに潜んでいます。
衝動を内に秘めた、艶やかな美を堪能できる作品と言えるでしょう。

(2nd)Without sinking

ダークで力強い旋律が印象的です。

チェロによるドローンサウンドを基調としつつも、ほの暗い波のうねりへと浸食するように盛り上がっていきます。
また、ツィターやオルガンの音色が陰鬱な荘厳さを添え、厳かな雰囲気を醸し出す役割を担っています。

荒涼とした室内楽、という表現が比較的近いかもしれません。
ビート・打楽器は存在しないためアンビエントな質感を保っていますが、掻き鳴らされるチェロの音色には情念的とも言えるようなエネルギーが宿っています。


静謐さを保ちつつも起承転結がしっかりしており、文学性・物語性を強く感じられるように思います。

内省的な気品と人間的な情緒を併せ持つ、深い影を湛えたアルバムと言えるでしょう。

(3rd)Leyfdu ljosinu

最も静謐で、最も実験的な質感を伴っている作品でしょう。

ライブパフォーマンスをそのまま録音したという本作は、シンプルな演奏で深淵な空気感を漂わせているのが特徴です。

  • ゆったりと揺らめくチェロと
  • 輪郭がおぼろげな、ひそやかな音響を奏でる女性ボイス

を中心に、荒涼としたダーク・アンビエントを醸成しています。

波のように引いては返す荘厳な音色が、侘び寂びにも通じる寂静とした美を棚引かせています。

ほの暗い静けさにゆっくり足跡を残すようなミニマル・サウンドスケープが少しずつ姿を変えていく様には、思わず耳を済ませたくなるような密やかな迫力を感じるでしょう。

微細な木霊の奥底に宿る原初的な神秘に触れるような、不思議な体験をさせてくれるアルバムです。

(4th)Saman

荒涼とした魅力はそのままに、格調高さが強まっている作品であるように思います。

チェロの旋律は物憂くもクラシカルで、それでいてエモーショナルに揺れ動きます。
時折加わる女性ボーカルはメロディを詠い、妖精を思わせる神秘さを漂わせています。

基本的にはドローン・アンビエントに伸びていくサウンドではありますが、個々の旋律に力強さが感じさせるようになっています。また、込められた感情は豊潤に響き、起承転結がしっかりと優雅に構成されています。

また、薫り高く気品のある深淵さを漂わせつつも、物憂いだけでなく(それこそ妖精のような)妖しさを匂わせる光を感じさせるのも特徴です。
その色彩は場面に応じて姿を変えていきますが、そのいずれも複雑に混ざり合っています。

陰鬱でも格調高かったり、
光に満ちているのに妖しさが濛々と立ち込めていたり、
文学的で奥行きの深い、詩的な多様性を感じさせてくれます。

その結果、完成度が高くなり、非常に聴きやすい作品になっています。

個人的にはHildur Gudnadottirで最も好きなアルバムです。

Hildur Gudnadottirのアルバムについて:主要参考サイト

https://en.wikipedia.org/wiki/Hildur_Gu%C3%B0nad%C3%B3ttir

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