Goldmundのアルバムについて。静寂に息づく、繊細なピアノの旋律。

こんにちは。

Goldmundはペンシルバニア州出身のKeith Kenniffによるソロ・プロジェクトの一つです。

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その音楽はポスト・クラシカルにカテゴライズされることが多く、ピアノを中心としたささやかで繊細なサウンドを特徴としています。

また、エレクトロニカ路線のHeliosや配偶者とのユニットMint Julepなどでの多彩な名義で活動も行っていることも特筆すべき点でしょう。

2021年9月現在、Goldmundは7作のフルアルバムをリリースしています。
本記事では、その全てを見ていきます。

Goldmundのアルバム一覧

リリース順にアルバムを見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成してみました。

では、本題に入りましょう。

(1st)Corduroy Road

Goldmund諸作の中でもシンプルな美しさを感じさせる作品です。

静謐の中に美しいピアノの響きだけが佇み、そっと溶けていくようなサウンドが印象的です。
ゆっくりと紡がれる旋律とその背後にある静けさとの輪郭は曖昧で、淡いノスタルジーがほのかに浮かび上がるような儚さがあります。


古びた記憶のような、
過ぎ去った日々を思い出して胸がチクリと痛むような、
感傷と気品が入り混じった叙情性が紡がれ、穏やかに続いてきます。

時折ギターが顔を出しますが、あくまでも色を添える程度です。
Goldmund自身が奏でる、誰にも共通して響くような普遍的なピアノのメロディが主役になっています。

余韻を溶け込ませていく長音符によるなだらかな旋律が、リラックスしたムードを演出しています。

全編を通して余分な要素はなく、Goldmundの優しい感性がノスタルジックな情景を紡いでいます。

素朴で儚くて、繊細で慈しみに満ちて。
そんなピアノの響きを楽しめるアルバムです。

(2nd)Malady of Elegance

前作の儚げで繊細なテクスチャーを残しつつ、やや輪郭がハッキリしたサウンドに変化しています。

今回もほぼピアノのみ(時折ギター)でアルバムは展開していき、ノスタルジックで優美なサウンドスケープを描いています。

静謐さの中で優しく凛然と浮かび上がる、ピアノの旋律。
僅かな音数で紡がれるメロディは、豊かな感情を心にすっと溶け込むような柔らかさで伝えてくれます。

紡がれる音色は素朴ながらもその質感からは気品が漂い、全編を覆うパーソナルな雰囲気には育ちの良さが大いに感じられます。


慈愛に満ちて、繊細で暖かな質感で、聴き手に寄り添うような包容力があって。
かといって甘すぎるわけではなく、地に足の着いた実直さも感じます。
シンプルだからこそ、演者の等身大の温度感が伝わるのかもしれません。

表題は<簡潔さ(手際の良さ?)の弊害>と訳すのが良いのでしょうか。
多様な解釈が出来そうです。
どういった意味が込められているのか、楽曲を聴きながら考えるのも楽しいのかもしれません。

耳を澄ませて聴き入りたくなる繊細な響きを楽しめるアルバムであることに、間違いはありません。

(3rd)Famous Places

前作よりもパーソナルで暖かな空気感が強まっている印象を受けます。

繊細で優美な雰囲気はもちろん変わりませんがやや芯が太くなっており、ほっとするような安心感を漂わせています。


ノスタルジックなピアノの響きを軸にしつつ、その周りをストリングス/シンセがほのかな香りのように揺らめいています。

優しく、凛として、叙情的。
優しさの中にもしっかりとして、悠然とした、木漏れ日のような雰囲気を帯びています。

今までよりもやや洗練とされている印象があるのも大きな変化かもしれません。
人間らしい心の機微が、丁寧に描かれているように感じられます。


本作にはGoldmundの人生において、かつて重要な役割を果たした場所にちなんで曲名に付けられているそうです。
自身の過去における一幕とそれぞれ紐づけられているということなのでしょうが、いずれの楽曲からも逃避的な匂いがしないことは重要かもしれません。


本作のサウンドは儚く繊細ですが、決して後ろ向きではなく。むしろ、確かな希望を秘めていて。

過去を積み上げた果てにある現在の自分とその先にある未来を見つめているような、大仰さのないありのままの勇気を湛えているアルバムと言えるでしょう。

(4th)All Will Prosper

主にアメリカの南北戦争時代(1861年~1865年)の流行歌をカバーで構成されているアルバムです。

Goldmundらしい知性的な繊細さはそのままに「クラシカル」というよりも「民衆的なフォーク/民謡感」を漂わせています。
アコースティックなギターサウンドも存在感を強め、ピアノもまたスピリチュアルなアーシー感を強めています。


また、元が流行歌なだけに、メロディがキャッチーになっているのも特徴でしょう。

シンプルな響きがゆったりと揺らめき、頬を撫でる乾いた風の匂いや部屋の片隅で唱えられる祈りの言葉が織り込まれた牧歌的なサウンドが連綿と続いていきます。

風通しの良い解放感と、洗いざらしの木綿のような素朴さと、胸にじんわり染みるノスタルジーと。
時に寂しげな雰囲気を伴うことありますが、全体的にはのどかな優しさに満ちており、澄んだメロディがすっと心に響いています。

長閑で静謐なサウンドは叙情性をたっぷりと湛えつつ、素朴なサウンドの中は知性と気品を絶えず帯びているのも印象的です。

当然アメリカ的なニュアンスを帯びてはいますが、本質的には誰の心にもあって(そして、実はどこにもない)、遠い昔の思い出の場所を描いているようなサウンドであるように感じます。

時々そこに戻って、優しい感情を取り戻して、もう一度現実に帰っていくような。
穏やかで、儚くて、セピア色の感傷に満ちていて。
もう一度立ち向かう意思をそっと注いでくれるような、深く優しいアルバムです。

(5th)Sometimes

心の赴くままに紡がれたインプロゼーションの楽曲が収められている作品です。

ほぼカバー曲集だった前作に比べてリラックスしたムードになっており、感性の流れに沿ったようなシームレスな展開が心地よく感じられます。


繊細なピアノが奏でるノスタルジックな旋律が(時折シンセ等が揺らめくように背景に現れます)、良い意味で大きな抑揚のない柔らかい響きを生み出し続けています。

静寂と戯れるような静謐な音色は儚く澄んでおり、どこまでも優しくて朴訥とした透明感を湛えています。

溶けるようぬ静寂に消えていく余韻は、暗闇の中にぽつぽつと浮かび上がる淡い灯のような、小さくも確かな光にも似ているかもしれません。

真摯に、丁寧に、詩を編むように。
心の奥底に潜む感情と向き合い、自然体で楽曲を創り出し、そっと連ねるようにアルバムとして積み上げています。

玲瓏でマインドフルな質感が、印象的に響いては消えていきます。

自己の内面を掘り下げるような、真っすぐな繊細さがこのアルバムの魅力と言えるでしょう。

(6th)Occasus

基本的にはGoldmundらしい繊細なピアノの音色を聴かせていますが、ほんのわずかにシンセなどの存在感が増したことによってテクスチャーが豊かになっています。

リラックスした音色の流れ、叙情的な旋律の戯れ、儚く消えゆく柔らかな余韻。
今までよりもふくよかな響きが繊細さ・静謐さの奥にそっと息づく壮大さを紡ぎ、エモーショナルな揺らめきを生み出しています。


時に優しく、時にもの悲しく。ピアノの凛としたメロディは心の機微を掬い取るようにこまやかで美しいテクスチャーを描き出しています。

楽曲のバリエーションも豊富なこともあり、箱庭的な美しさを秘めた物語を鑑賞しているような感覚を与えてくれます。

凛として、透明感に満ちて。
暖かくて、叙情的で。
シンプルながらも、優しさを湛えながらも、奥深いニュアンスを感じさせてくれるアルバムです。

(7th)The Time It Takes

繊細な雰囲気はそのままに、前作よりもさらに音の輪郭がしっかりとしている印象を受けます。

朧気で、ヴィヴィッドで、叙情的。
密やかで優しい旋律は心地よく、そして聴き手の心をそっと揺らすような存在感を放っています。


儚げなピアノの音色の周りを、ノスタルジックなテクスチャーのシンセ/電子音等がゆったりと包み込むようなシンプルさは変わりませんが、全体的な音のふくよかさは前作を上回っています。

過剰にキャッチーになるようなことはもちろんありませんが、今までよりも聴き手の心に印象を残すようなメロディが紡がれています。

どこか懐かしい感覚がするのが印象的で、普遍的なメランコリーを表現している作品なのかもしれません。
ただ、その一方で必要以上に古ぼけた感じはせず、その静謐なテクスチャーは絶えず鮮明な感覚を保っています。

エフェクトをかけられたピアノの響きやその余韻からは懐かしさだけでなく、鮮度と明度の高いニュアンスも漂っています。

ノスタルジックながらも凛として。
ある意味では両極端と捉えることができる両要素が、すんなりと一つの音楽として混ざり合っていることに本作の魅力があると言えるでしょう。

主要参考サイト:Goldmundのアルバムについて

https://en.wikipedia.org/wiki/Keith_Kenniff

https://en.wikipedia.org/wiki/Famous_Places

https://tower.jp/artist/1520184/Keith-Kenniff

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