叙事詩とは全く異なる、コンビニエンスなギルガメシュの物語『ギルガメッシュとアッガ』

こんにちは。

紀元前文学第16回、メソポタミアから『ギルガメシュとアッガ』です。

『ギルガメシュ叙事詩』の主人公としても有名なギルガメシュを主役に沿えた短編の物語です。
紀元前二千年紀前半の粘土板に記されていた物語であり、遅くともその時代には成立していたと言えるでしょう。

『ギルガメッシュとアッガ』のあらすじ/要約

(0)主な登場人物

  • ギルガメシュ ウルクの王様。
  • アッガ キシュの王様。
  • ウルクの長老達 ウルクの偉い人達。ざっくりいうと老害。
  • ウルクの青年達 ウルクの若い人達。
  • ギリシュフルトゥル ギルガメッシュの家臣。
  • エンキドゥ ギルガメッシュの家臣。

(1)ギルガメシュアッガからの賦役依頼を拒否する。

物語はキシュの使者がウルクに届いたところから始まります。

使者が話す内容はウルクの王ギルガメシュには受け入れがたいものでした。
なんとキシュの王アッガは井戸を完成させるために、ウルクの人々を徴用してほしいというのです。

当時のメソポタミア地図。ウルクが南、キシュが北にあります。https://www.ancient.eu/gilgamesh/ より


ギルガメシュは断固として拒否しました。

キシュの家にわれわれは屈服すまい。武器で打ち破ろうではないか!

『ギルガメシュとアッガ』シュメール神話集成,ちくま学芸文庫,p76

しかし、ウルクの長老は及び腰です。
なんと
アッガからの依頼を受けようとするのです。

キシュの家に我々は屈服しようではないか! 武器で打ち破るのはよそう!

『ギルガメシュとアッガ』シュメール神話集成,p77

女神イナンナからも良い神託を受けていたギルガメシュは、長老達の言葉に耳を傾けません。
代わりにウルクの青年達に呼びかけます。
青年達ギルガメシュの依頼に奮起します。

キシュの家に、汝らよ、屈服するな! さあ、武器で打ち破ろうではないか!

『ギルガメシュとアッガ』シュメール神話集成,ちくま学芸文庫,p78

ギルガメシュは喜びすっかり意気揚々です。
臣下であり『ギルガメシュ叙事詩』の主要人物でもあるエンキドゥに戦いの準備をするように告げたのでした。

(2)ウルク、いとも簡単に包囲される。

しかし、ウルクはあっさりとアッガの軍隊に包囲されてしまいます。
最初は発奮していたウルクの青年達も陰惨な顔をしています。

ギルガメシュは状況を打破すべく、家臣ギリシュフルトゥルをアッガのもとへ派遣します。
のですが、あっさり捕まってしまいます。

しかも、拷問されてしまいます。

(3)ギルガメシュの後光で一発逆転

しかし、ギルガメシュが城壁に上から顔を見せることで状況は激変します。

ギルガメシュのご尊顔。
https://www.ancient.eu/gilgamesh/ より


ウルクの人々は闘志を取り戻し、再び武器を手に取ります。
さらにはエンキドゥに至ってはたった一人で門の外へ飛び出していきます。

キシュの軍隊はおろかアッガ本人も完全に圧倒されてしまいます。
そして、ギルガメシュ軍はアッガを捕虜として捕まえることに成功します。

しかし、ギルガメシュは寛大に振舞います。
昔、キシュに亡命したときに受けいれてくれた借りを返すべく、なんとアッガを開放します。

ウトゥの前で、私は昔日の恩顧をあなたに返しましたよ。

『ギルガメシュとアッガ』シュメール神話集成,ちくま学芸文庫,p83

アッガギルガメシュに敬意を表しました。
そして、ギルガメシュを褒め称える一節とともに、物語は幕を閉じます。

ギルガメシュ、クラブの主よ、あなたの誉れはすばらしい。

『ギルガメシュとアッガ』シュメール神話集成,ちくま学芸文庫,p83

『ギルガメシュとアッガ』の魅力

世代間ギャップ 古代と現代 違うようで似ている政治

この物語には、政治における世代間ギャップが見事に現れています。

井戸掘りの賦役依頼を断ろうとするときのウルクの人々の反応に顕著に現れています。

ウルクの長老達は波風を立てるくらいなら協力をすればいいと考えます。
何故ならキシュは強国ですし、自分が井戸を掘るわけではないからです。


一方、ウルクの青年達は井戸を掘る立場です。
だからこそ自分の問題と真摯に受け止め、要求を拒絶します。


しかし、彼等を扇動したギルガメシュが、青年達のことを考えているわけではありません。

おそらくは王としての面子などを考えたうえで拒絶しています。
(貸しをこれ以上積み重ねるのはまずかったはずです)
さらに言えば、老人よりも若者の方が騙しやすいという打算をした部分もあるはずです。

守りの老人、守っている場合ではない若者、我が身を第一に考える為政者。
四千年前も今もあまり変わらないですね。

ちょっとしたファンサビース?

『ギルガメシュ叙事詩』の主人公として有名なギルガメシュの他にもイナンナ、エンキドゥなどの良く知られた名前が出てきます。

ファンサービス的な短編にもふわりとしたタッチを感じます。
文章の雰囲気も軽妙ですし、読んでいて楽しいです。

結び/感想 『ギルガメシュとアッガ』、『ギルガメシュ叙事詩』とは異なる軽快感が楽しい。

『ギルガメシュ叙事詩』は人類が誇るべき最高の文学作品です。
死ぬこと、生きること、成長すること。
その全てを完璧に描き切った重厚な英雄叙事詩とさえ言えるでしょう。

一方、『ギルガメシュとアッガ』にはそこまでのクオリティはありません。
というか及ぶべくもありません。
ただ、4000年以上前の作品であるにも関わらず、ポテトチップスをつまむような感覚で楽しめる物語です。

古代オリエントのロマンを、肩肘張らずに楽しめます。

それでは。

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