『ギルガメシュ叙事詩』に描かれる普遍的な人生観




こんにちは。
紀元前文学 第1回です。

ギルガメシュ。あるいはギルガメッシュ。

現代日本で生活していれば、一度くらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。

『ギルガメシュ叙事詩』とそこに込められた人生観

その正体は、人類最古の文学作品『ギルガメシュ叙事詩』の主人公の名前なんです。

成立したのは約4000年前。現在はイラクと呼ばれるメソポタミアの地を舞台に、実在していたとされる王をモデルにした英雄冒険譚です。

現在記録されている限り、人類最古の物語です。
しかし、どんな国に生きててもどんな時代に生きてても共感できるような普遍的な人生観語られています。

社会の中で生きていくこと。大人になっていくこと。そのために必要なこと
その核心をえぐり出すような物語展開が、実に見事です。
卑弥呼の時代より2000年以上前に書かれた物語とは到底思えない完成度です。


では、ざっくりとあらすじを。

『ギルガメシュ叙事詩』のあらすじ 胸を打つ人生観に触れながら

傲慢なギルガメシュとエンキドゥの出会い

ギルガメシュは神の血を引くウルクの王です。
身体も大きく、力も強く。民を相手に勝手に気ままにふるまう暴君でした。

そんな彼をなんとかするべく神々はエンキドゥを創造します
生まれたばかりのエンキドゥは獣のようです。
身体中に毛が生え、水飲み場では四つん這いになって水を飲みます。

しかし、ウルクの民が差し向けた娼婦と交わることで体毛が抜け落ち、人としての知性が宿ります。
(そして、動物達が去ってしまうのも印象的です)

エンキドゥとギルガメシュは激しく闘い、やがて友情が芽生えます。
そして、意気投合し親友となった彼等は怪物フンババを打ち倒す冒険に出かけ、見事に勝利を手にします。

二人の友情と女神への侮辱

ウルクへと帰還した若者二人はすっかり天狗になってしまいます。
暴虐の限りを尽くしますが、ついつい調子に乗りすぎてしまいます。

なんと、ギルガメシュに求婚に来た女神イシュタルに、散々な恥をかかせてしまってしまったのです。
神々はついに怒り、エンキドゥに呪いをかけます。

エンキドゥの死。不死を求めるギルガメシュの旅。

エンキドゥは徐々に衰弱し、死にゆく自分を呪い、周りを恨み、どうにか運命を受け入れ、それでも恐怖におびえながら息絶えました。

死んでいった親友を見たギルガメシュは、死への強い恐怖を覚えます。
そして、神々の制止を振り切り、不老不死の薬を求める困難な旅を続けます。

疲労困憊で立ち寄った居酒屋の女主人からの言葉が感銘的です。
永遠の命などを必死に求めるのではなく、日々を楽しみ、身だしなみを整え、家族を愛するように諭したのです。

要するに、地に足を付けて生きなさいということです。

それでも、ギルガメシュは聞き入れません。
そして、必死に探し続けた結果、ついに不老不死の薬草を手に入れます。

しかし、歓喜は一瞬で消え去ります。
泉で水浴びをしている間に蛇に薬草を食べられてしまったのです。

ギルガメシュの涙と成長

脱皮する蛇を見て、ギルガメシュは座り込み、泣き出します。
努力が無に帰したことを嘆いた後、ギルガメシュはウルクに帰りました。

そして、脱皮をしたみたいに、民のために働く良き王となったギルガメシュがいたのです。

ギルガメシュの成長物語とエンキドゥの死に潜む普遍的人生観

万能感から世界を見下していた恐れ知らずの若き英雄。
彼は若々しい驕りに身を任せて行動し、友情を手にします。
二人は怪物フンババという世界に化け物を倒し、誇り高き武勲を成し遂げます。

そんな恐れるものなど何もなかったギルガメシュが初めて恐怖したのが、死です。

ギルガメシュは死に恐怖を覚えを乗り越えようと必死にもがきます。
フンババを倒したかのと同じように、死という恐怖が潜む世界を打ち倒そうとします。

しかし、ようやく手にした不老不死があっけなく手元から零れ落ちたことによって、世界を打ち倒すのではなく、受け入れることができるようになったのです。

必死に頑張ってもどうにもならないことがあるということ。
そのことを学び、良き王へと成長したギルガメシュを通して語られるのは、時には世界を受け入れ、あるがままを愛することの大事さです。

極めて人間的です。
現代日本でも物語のテーマとして十分通じますし、実際に良く見かけます。

結び 『ギルガメシュ叙事詩』の時代から連綿と続く人生観

『ギルガメシュ叙事詩』という人類最古の文学作品が、日本文化が生まれるよりもはるか昔、言葉も価値観も全く異なるメソポタミアの地で語り継がれ、粘土板に楔型文字で刻まれていたなんてワクワクしませんか?

彼等はこの物語を聞いて、あるいは読んで、どんな気分になったんでしょうね。




それでは、また。


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