2018年のエジプト奇譚(アクセルベタ踏み旅行記)Part.2ギザのピラミッド編

身体は正直、水不足

※前回までの顛末はこちらを。

というわけで、どうにか部屋についたのであるが。
とりあえず、一息付けた。
だが、私は全く気乗りせぬのだった。

窓から見えるピラミッドにもあまり気持ちは高ぶらぬし、窓の下を行きかうエジプト人たちがぶん投げてくる不躾な視線が痛い。

とりあえず、ゆっくりしたい。ぐったりしたい。何もかも忘れたい。
のであるが、ポーターはウェルカムドリンクがあるからこっちに来いと案内するのである。

断りたかった。当然である。だが、そもそも私は水を持っていなかった。
喉が渇いたが、買い方もわからぬし、どこで買えばいいのかも分からぬ。

身体は正直であった。水をよこせ。いや、水、ください。

ポーターの胡散臭い笑顔に続き、私は屋上へと向かった。

目がしょぼしょぼの、ウェルカム・ドリンク

で、私の眼前に広がっていたのが、こんな光景であった。

素晴らしい。ギザのピラミッドが3基とも並んでいる。
さすがにこの一瞬、テンションが上がった。
だが、一瞬だけであった。

私が通されたイスは、直射日光が大瀑布の如く降り注いでいた。
屋根もなく、パラソルもない。
ここは砂漠の国、エジプトである。

私は前日一睡もしていない。心労もそれなりに溜まっている。
畢竟、だるい。

しかも、差し出されたのは特濃マンゴージュースである。
普通であれば、めちゃくちゃ上手いのであろうが。
だが、私はとても喉が渇いていた。ここまで甘いともっと喉が渇く。

なんというか、すべてがうまくかみ合っていない。
そして、カチっと合わせるための語学力がちちんぷいぷい。

私はクラクラしながら、ぐりとぐら。しばしピラミッドを眺めていたが、すぐに悟った。

うん。ムリ。

ふと見ればテラス席のような場所がある。
あそこに座りたい。だが、何といえばいいのか分からない。ついでに眠くて頭も回らん。

指さしてあそこに座りたいと伝える。「朝飯食いたいのか?」と言われる。
まあ、腹減っていないわけでもないし、とにかくここは暑い。頭が回らん。
イエスイエス、言うたら奥から偉そうな人が出てきて10ドルとか言われるけど、もう何でもいい。ちゃっちゃと払う。スタッフが一人驚いた様子で見てた。なんでだろ。

その偉い人は何事かを話しかけてきたが、私はもうスイッチ切れ寸前であった。
元々絶無の英語力が奈落の底に天元落下。もはや訳の分からぬメダパニ・トークを繰り広げていた。
飯の味は全く覚えていない。
ただ、リンゴにマンゴーソースをかけたやつだけは美味かった。


食い終わった。またしてもご画力不足で恥を晒した。しかし、どうにか部屋に戻った。それで十分だ。
ぼーっと天井を見つめる。沈黙が流れる。ていうか、このホテル地面が揺れてねえか。近くで工事の音がしたような気がしたけど、大丈夫かよ。

寝るか。目を閉じる。
瞼の裏に、帰国後の一場面が浮かぶ。

「エジプト行ったの?」「はい」「ピラミッドとか神殿みた?」「いいえ、何にも」「……どして?」「怖かったので」はい、アウト。

しゃーない。エジプトの地を踏んだ以上は必要最低限の観光はせねばならない。必要最低限で、どうにかやりすごそう。

つまり、私は「行きたい」という欲求ではなく、「行かなければ」という義務感に駆られて私はホテルを出た。

の前に。
一応、私が本当に言ったという証明の写真を。

なぜホテル内の写真かというと、現地での写真は寝不足+熱さでだいぶラリったおじさんみたいな顔をしていたからである。

『コーヒー』については、決して触れてはならない。

素晴らしきピラミッド


で、一歩出る。
冷房が日本以上に効いてた室内と違って、外はアフリカである。
うんざりしながら歩く。すぐにホテルのスタッフが声をかけてくる。

「ピラミッドに行くのか?」的なことを言ってる。
私がイエスと言うと、そこからはマンマーク・ディフェンスであった。密着しながら、というか背中を手でナビゲートしながら入場ゲートまで誘導してくれる。

チケット売り場の前に立つ。財布を取り出す。それをスタッフは後ろからのぞき込む。そうだ、その札をゲートで払うんだ。とか言ってくる。札を渡すまで熱血応援である。俺は赤ん坊か。

私は思考停止しながら入場する。入口では空港みたいな荷物チェックがあって、まあ、エジプトは結構テロとかあったしな、なんて思う。

で、入場が終わると、後ろでホテルのスタッフが誰かを呼んでる。すると、ピラミッドの職員が密着マンマークである。「日本は最高だ。そうだ、馬車に乗ろう。そうすれば、秘密の絶景スポットに行ける」とまくし立ててくる。

ああ、これはブログで見た。乗ったら結構ぼったくられるってやつ。
なんだか、自分がサッカーボールになったような気分になってきた。

ただな。
というか、私はそもそも馬車とか好きじゃないし、自分のペースで歩きたい。気合と根性の英語で説き伏せ、私は一人でピラミッドを見て回った。



で、正直に言おう。私はバイブス倍々であった。


やっぱりあこがれていたピラミッドとかスフィンクスとか併設された神殿を眺めるのは最強に楽しい。
とくにクフ王のピラミッドは超でかい。見て見て。

石一つの大きさが人間の身長未満くらいある。しかも、これが4000年以上前に作られたのだ。浪漫半端ない、この上ない感激。

ピラミッド以外にも見どころはたっぷり。

ダンジョン:ピラミッド村

しかし、である。
語学が苦手は私にはところどころトラップが仕込まれていた。
ここのスタッフたち、とにかく観光客から上手に(?)お金を取ろうとする。

「スフィンクスへの近道を教えてやる」と言われたので付いていったら「近道代」として請求されたり(さすがに断った)、
小さな神殿を見学して出ていったら、「金払え」と言われて彼が指さした注意書きを見たら「写真撮ったら別途料金」と書かれていたり(私は写真を撮っていない)、
「タダだ、ラクダと一緒に写真撮ってやろうか?」と言われたり(タダなわけがない)、
「オススメのスポットがあるからついてこい」と言われたり(もう信じられない)、
水を買おうとしたら日本人とバレただけで値段が二倍になったり(これには屈した)、

あらあら、まあまあ。トラップだらけ。

なんというか、あれである。ドラクエとかにありそうな盗賊の村っぽい感じであった。

今でこそ、これがエジプトの文化であり根深い諸要因が絡まり合って、一見日本から観光客には???となる空間になっていると分かるが、当時の私にとってはなかなかスリリングであった。

どうにかこうにか観光を終え、ピラミッドから脱した私は、しかし、若干オビえておったので、伝統料理など食べる勇気もなく、クレジットカードが使えるファストフードを食った。あと、部屋にあったお菓子と。


エジプト感はゼロであった。

ちょっとしんどいなと思ったら、ホテルの夕食がタダで出た。ありがたかったが、やはり味は覚えていない。


また、毎晩必ず繰り返されているというライトアップショーを見た。


物語風になっていたが、私にはさっぱり分からなかった。

ただ、印象的なのはホテルの偉い人が一語一句違わず(おそらく)、繰り返していたことである。
そりゃあ、毎晩聞かされていればな。

また、フロントでキレられる

腹を満たし、シャワーを浴びた。
さて、と私はつぶやいた。

私は明日の旅程を組まねばならなくなった。
明日、私はカイロの博物館に向かわねばならぬ。
今はギザにいる。そのためにはタクシーを取らねばならぬ。

ホテルにその予約を頼みに向かった。
良かった、そこにいたのはチェック・インの時にキレちらかしてきたヤツとは違う。

私は機嫌よく声をかけた。
I’d like to reserve a taxi to Cairo Museum.(wi-fiで調べた)
フロントは業務用笑顔になった。
よし、通じた。
私は一瞬笑顔になったが、それは本当に一瞬であった。

早口過ぎて、何言ってるか分からね。

で、通じてないことが分かるとまたキレられた。
……そんな、怒らないでくれやんす。
怒っただけなら、まだしても後からやってきた台湾人に「こいつ英語出来ねえんだよ」と笑顔で語るんでやんす。
なんで晒上げるんでやんす。
もう嫌でがす。

というか、気を使った話しかけてくれた台湾人とも上手く話せない。
虚無の極み。

もう寝たいんだけど、さっき注文したお水のペットボトルが届かない。
相変わらず部屋が揺れてる気がする。

異国での時は矢のように過ぎ去るけど、なかなかスパっと終わらない。
と思いながら、さっきキレ散らかしたスタッフに、早く水をよこせと笑顔でクレームを言いに行くのであった。

この時の私はまだ知る由もないが、死闘のような観光は翌日以降さらに熾烈を極めることになる。

※続くのである。

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