Don Caballeroのアルバムについて。知性的で野性的、豪放磊落マスロック

こんにちは。

Don Caballeroはペンシルバニア州で1991年に結成されたインストゥルメンタル・ロックバンドです。

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現在の我々がイメージするマスロックのイメージに最も貢献した存在と言っても過言ではないでしょう。
ハードコア上がりの荒々しさ、意表を突く変拍子、尖ったギターリフが飛び交う展開を特徴としています。


2021年6月現在、Don Caballero名義でのフルアルバムは6作リリースされています。
本記事ではその全てを見ていきます。

名盤ぞろい、Don Caballeroのアルバム一覧

これからDon Caballeroのアルバムをリリース順に見ていきますが、文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成してみました。

また、Don Caballeroはリリース時期に応じて作品の雰囲気が比較的異なっています。
そのため、本記事では分かりやすくするため3期に区分しています。

  1. 最初期【1st~2nd】
  2. 中期(活動再開期)【3rd~4th】
  3. 後期(再結成後)【5th~6th】

では、本題に入りましょう。

1.最初期【1st~2nd】

この時期のDon Caballeroは熱量が高く、ハードコアなテクスチャーを強く帯びているのが特徴です。

良い意味でも悪い意味でも、若々しく衝動的です。

(1st)For Respect

デビュー作となる本作は、いわゆるマスロックとはやや異なる質感を帯びています。

アグレッシブな雰囲気などは通じるものがありますが、もっと直線的で分かりやすい熱量を感じさせます。
もちろん演奏技術の高さはありますが、ポスト・ハードコアに近い魅力を存分に放っているのが特徴でしょう。


ソリッドなエレクトリックギター、
シンプルで粗いベース、
タイトでヘヴィなドラムス、
それらが一体となって叩き出す破壊力は、痩身ボクサーが繰り出すラッシュのような鋭くもダイナミックな凶悪さがあります。

もともとDon Caballeroはボーカルを入れる予定だったそうですが、確かに本作には歌が乗っていても不自然ではないようなストレートさがあります。
そして、その真っすぐさが血が滾るような、プリミティブな魅力に繋がっています。

荒々しく、アンダーグラウンドで、熱量が高くて。
ちょっと捻くれつつも疾走感もあって。

ハードコアでエネルギッシュなアルバムだと、個人的には感じています。

(2nd)Don Caballero 2

本作はマスロック的な領分にだいぶ近づいている作品です。

ソリッドでアグレッシブ、奇抜で豪快、
変拍子を織り交ぜた複雑精緻な展開と全てを薙ぎ倒すような重量級の破壊力が両立し、理知的ながらもワイルドな雰囲気を創り出しています。


ゴリゴリとした音塊を叩きつけるエレクトリックギター、
粗く生々しい質感の低音を吐き出すベース、
激しく強靭なドラムス、
ひりひりするような緊迫感が絶えることはなく、変拍子を織り交ぜながら奇抜に展開していきます。

バッキバキにぶつかり合う各楽器のテンションは時に凄まじく高くなり、圧倒的な破壊力を生み出していきます。

ハードコア的な破壊力は変わらず高いのですが時に実験的ニュアンスが加わることにより、緩急を知性的につけることに成功しています。

聡明さというフィルターを通してはいるものの、叩き出される音塊が持つプリミティブな衝動は変わらずに猛っているように感じます。
頭が切れる不良のような、人目を惹くほどの強者感が漂っているとも言い換えられるかもしれません。


ぶっ飛んだ衝動を、複雑精緻に表現したアルバムです。

2.中期(活動再開期)【3rd~4th】

この時期のDon Caballeroの特徴は、初期の強靭なダイナミズムを残しながらも高度で精緻なリズムを構築していることです。

いわゆるDon Caballeroサウンド、さらにはいわゆるマスロックサウンドの原点を確立したのがこの時期でしょう。

(3rd)What Burns Never Returns

今までの強靭なハードコア性はそのままに、マスロックのマス(数学)の部分が強化されているアルバムです。

変拍子を織り交ぜた変態的ドラムス
アグレッシブでタイトなベース、
そのうえで飛び交うアブストラクトで鋭いクランチトーンのギターフレーズ、
粗くハードコアな音像を用いつつも、緻密に計算されたアンサンブルを構築しています。

また、ザクザクとしたギターリフの刻み方をしていない楽曲も多く、精緻で理論的な匂いを放つハードコアサウンドを生み出しているのは印象的な点でしょう。
複雑怪奇なリズムが大胆に展開し、エモーショナルな破壊力を伴いながらアルバムは展開しています。


プリミティブな爆発力をビートに残しつつ、ギターでアーティスティックな衝動を描き出しているようなイメージでしょうか。
もちろん、強烈に衝動を爆発させているような楽曲も存在します。

高い熱量が渦巻いているにも関わらず、どことなく超然とした佇まいを感じさせるのも本作の特徴でしょう。

(4th)American Don

個人的にはDon Caballeroで最も好きなアルバムです。

前作の路線をさらに推し進め、キャッチーで粗いビートを残しながらもアブストラクトな側面を強めています。

強靭なドラムスが生み出すダイナミズムと切れ味鋭い変幻自在のギターがぶつかり合い、数学的な綿密さを屋台骨にしたハードコアを構築しています。

バチンと展開を切り替える変拍子は健在で、しなやかで知性的な変態性をいかんなく発揮しています。

トライバルなビートがひときわ個性になっているのも印象的で、何度もリピートされる抜けの良いギターフレーズが高揚感を楽曲に与えています。その一方で各楽器の音色が持つざらついた質感がアンダーグラウンドな煙たさを湛えており、両者が混ざり合うことで独特の音空間を生み出すことに成功しています。

中毒性のある反響・反復音の連続が本作の核となっているのでしょう。
それと同時に、堰を切ったように爆発する衝動的炸裂が非常に魅力的なアクセントになっています。


いずれのパートもバリエーションが豊かで、切れ味鋭くタイトで、ハードコアながらも知性的で。
生々しい質感を残したまま、複雑精緻で強靭なサウンドを叩き出した大変すばらしいアルバムだと思います。


Don Caballeroが残したマスロック・ポストロック史に名を遺す名盤でしょう。

3.後期(再結成後)【5th~6th】

この時期のDon Caballeroは最初期と中期どちらにも似たサウンドに、キャッチーなニュアンスを取り込んでいるのが特徴です。
Damon che以外のメンバーが一気に入れ替わっているせいか、サウンドの質感がかなり変化しています。

(5th)World Class Listening Problem

中心人物であるドラマーDamon Cheが新たにメンバーを募って再結成した後のアルバムです。

過去のDon Caballeroというバンドのイメージを凝縮し、再現したようなサウンドに仕上がっています。
1st~2ndのような骨太なハードコアさ、
3rd~4thのワイルドながらも精緻な構築美、
その両方を丁寧にブレンドし、なおかつ飲み口を若干マイルドにしたようなバランスの良さを感じさせます。

ただ、再現しているとはいえ構成メンバーが異なるため、オリジナルとは差異が生まれています。
中毒性を秘めた尖った衝動ではなく、ポップな魂を含んだメロディアスなハードコアが根底のところにあるように思います。


解散前とはやはり異なるニュアンスを帯びており、好みが分かれるところではあるようです。

真っすぐな求心力を秘めた、高らかに鳴り響くアンダーグラウンド・ミュージックと言えるでしょう。

(6th)Punkgasm

分厚く粗いギターサウンドが中心だった前作に対し、本作Punkgasmはシンプルでストレートなロックサウンドの存在感へややシフトしているように感じます。

基本的には真っすぐなポップネスを漂わせていた前作の路線を、さらに推し進めたような仕上がりになっています。
Don Caballero初となる一部楽曲でのボーカル導入も特に印象的です。

個人的にはアルバムタイトルから漂うパンク的なニュアンスよりも、もっとストレートでポップなロックサウンドへの接近を感じさせる作品だと思っています。

もちろん、そこには従来のハードコアなベヴィネスも奔流しているのですが。

ただ、ハードコア魂はあくまで起爆剤のようなものであり、そこから生じる熱量にはキャッチーな匂いが強めに出ています。
ある種オルタナティブ・ロックにも通じるような空気感が本作には漂っています。

アンダーグラウンド側が地上の音をオリジナリティ溢れるバランス感覚で取り込んだ、独特のアルバムです。

主要参考文献&サイト:Don Caballeroのアルバムについて

主要参考文献

主要参考サイト

https://en.wikipedia.org/wiki/Don_Caballero

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