DÉ DÉ MOUSEのアルバムについて。ニュータウンへの憧憬がタクトを振るう、きらめく星座のダンス・オーケストラ

こんにちは。

DÉ DÉ MOUSEは群馬県出身の遠藤大介によるソロ・プロジェクトです。

https://dedemouse.com/wp/wp-content/themes/dede_theme2014/common/img/p_backgroud.jpg

その音楽をカテゴライズするのであれば、テクノ/ダンス・ミュージックが穏当でしょう。
しかし、彼の創造するサウンドは一貫としてノスタルジックな色彩を帯びており、もっと幅広いジャンルを包括したエレクトロニカ/ニューエイジ的なインストゥルメンタル・ミュージックとも言えます。

DÉ DÉ MOUSE は2020年7月現在、8枚のフルアルバムをリリースしています。
本作ではその全てを語ります。

DÉ DÉ MOUSEの全アルバムについて

これからDÉ DÉ MOUSE のフルアルバムを順番に見ていきます。
文字だけでは分かりにくいと思って相関図を作成しました。

では、アルバムごとに見ていきましょう。

(1st)tide of stars

前史:リリースされるまで

DÉ DÉ MOUSEこと遠藤大介は、Aphex Twinの影響によって「道を踏み外した」と述懐しており、当初は彼の天才性を意識した楽曲を作ろうとしていました。

ただ、活動を続ける中で自分は自分が憧れているアーティストと同じフィールドでは勝てないと徐々に悟っていきます。
挫折した、とも言い換えられるでしょう。

しかし、 DÉ DÉ MOUSE はそこで膝をつくことを良しとしませんでした。
自分に与えられた才を用いて出来ることを探っていき、徐々に自分の中にあるポピュラリティに気づきます。

ジブリや古いアニメ、児童文学などの影響によって形成された郊外的なノスタルジーを秘めたメロディアスなサウンドを追求していきます。

そして、RAW LIFE 2006に出演した際に巻き起こした熱狂で一気に頭角を現し、デビュー作であるtide of starsへのリリースに結びつきます。

ちなみに、このころはまだ DÉ DÉ MOUSE ではなくDE DE MOUSEというアーティスト名でした。

アルバムの魅力

オールドスクールなテクノを骨組みに。
日本的な叙情性を血肉に。
甘酸っぱく胸を高鳴らせる、キラキラとまばゆいサウンドが次から次へと展開されていきます。


無垢な響き/きらめきを放ちつつも、「『銀河鉄道の夜』のジョバンニがカムパネルラを連れ戻しに行くという独自のテーマ」によるアッパーさも感じさせます。

子供の声をサンプリングした民俗的な旋律、
美しくきらめくシンセサイザーの音色、
先達へのリスペクトを感じさせる高揚的なブレイクビーツ。
子供っぽさを感じさせつつも若者的な焦燥もぎっしり詰まっており、デビュー作らしいエネルギー密度の濃さが魅力的です。

プラネタリウムの星々のような架空的な光輝と童話的ながらも疾走感を滲ませる物語性が感じられ、青春的でありながら児童文学的でもあるダンスミュージックです。

イノセントな文学世界を駆け抜けていくような心地よさを楽しめます。
唯一無二の境地を築いたサウンドではないでしょうか。

(2nd)sunset girls

前史:リリースされるまで

前作は大きな反響を呼びました。
セールスはもちろんのこと、木村カエラや中田ヤスタカといった脂の乗っていた名だたるクリエイターたちからも支持を集めることになったのです。

そんな勢いそのままにミニアルバムをリリースしたのち、 DÉ DÉ MOUSEはなんとavexへと行き来をすることになります。
しかし、新しい環境になじむための苦労を重ねることにもなったようです。

良い作品にするために様々な葛藤を重ね、2ndアルバムsunset girlsはリリースされました。

アルバムの魅力

前作に比べ、 DÉ DÉ MOUSE のノスタルジックな側面を強調されています。
穏やかでなだらかな響きが印象的で、ジブリなどのアニメ作品を思い起こさせるサウンドであるとも言えそうです。


本作は台風一過の夕暮れに夏祭りに向かう少女という表/死後の世界に向かうという裏のテーマに基づいて作られています。
確かに子供の足取りを思わせる柔らかなグルーヴのうえで七色にきらめく無垢なユメセカイが紡がれています。

イノセンスさを増したサンプリングボイス、
朴訥としつつも清澄な旋律のシンセサイザー、
絵本のページを繰るようなゆったりとした高揚を醸し出すビート。
激しく感情が爆発する瞬間はなく、純粋なきらびやかさと抑制された静謐さを兼ね備えているのが特徴と言えるでしょう。
研ぎ澄まされたノスタルジーを優しく歌い上げ、胸に染み渡る切なさがじんわりと響きます。

甘酸っぱい記憶に優しく深く突き刺さる旋律のような、ふわりふわりとステップしている作品です。

(3rd) A journey to freedom

前史:リリースされるまで

前作リリース後、バンドを従えてのライブ活動を行い、フェスや公演などにも数多く出演するようになります。
さらには YMCKとのスプリット作DOWN TOWNをリリースをしています。

そんなエネルギッシュな創造性の勢いに乗るようにして世に放たれたのが本作A journey to freedomになります。

アルバムの魅力

「魔法が生きている世界、日々の退屈な生活から抜け出す少年達の物語」をテーマとした本作は、きらめくハイテンションが間違いなく魅力です。

躁的な爆発力を炸裂させるドリルンベース的ビートとDÉ DÉ MOUSEらしいジブリ的ノスタルジーが融合し、宇宙空間を駆け上がるようなきらめく飛翔感が絶えず吹き抜けています。


ファンタジックで民俗的なボイス・サンプリング、
無垢な高揚感が鮮やかになびかせるシンセサイザー、
凶悪さと表裏一体を成す純粋さを帯びたエネルギーを吐き出すビート。

ジャケットアートに『ファイナルファンタジータクティクス』などを手掛けたスクウェアエニックスの吉田明彦を迎えながらも背景にはニュータウンの街並みが描かれているのが、本作の特徴をよく表しているかもしれません。
ファンタジックな冒険を描きつつも、郊外のノスタルジーが色濃く立ち込めているのです。

想像力を飛躍させるのであれば、どんな冒険に繰り出しても最後には「居場所」には帰ってこなくてはならないという切なさが込められているとも考えられるかもしれません。

あくまでも個人的な見解ですが、一番「胸の痛み」を感じさせる作品だと思っています。

(4th)Sky Was Dark

前史:リリースされるまで

前作をリリースできたことが自信につながり、 DÉ DÉ MOUSEはもっと色々なことを自分でやってみたいと強く思うようになったそうです。
なんとメジャーレーベルから独立し、自身のレーベルをnot recordsを立ち上げます。


新しい環境に身を置き――思い通りに行かないことも多い以前の環境から距離を置いたうえで――、改めて自分と向き合うように作品を創造していきます。

そして、プラネタリウムでのライブイベントを行うなどしつつ、自分のインスピレーションの源である郊外の街並みに合うサウンドを追求したのが本作Sky Was Darkです。

アルバムの魅力

本作は、マッチ売りの少女をベースにした「夜をもう一度だけやり直すことができたら」というテーマのクリスマスアルバムとのことです。

確かに今までの作品にない、しとやかな陶酔が感じられます。艶やか、とさえ言えるかもしれません。
DÉ DÉ MOUSEらしい無垢な質感はそのままに、質感が湿り気を帯びています。


絵本の読み聞かせ的な人肌が感じられるとも言えますし、童話の残酷な一面がざわめいているとも言えるでしょう。

全般的に透明感のある音色なのに、どこかオルゴールめいた郷愁が全編に漂っています。
ブレイクビーツをアッパーに刻み込んでいくという展開は控えめで、心地よい揺らぎを醸成するようなビートが積み重ねられていきます。


しかし、多摩ニュータウン的ノスタルジーは変わらず濃密です。
夜の闇、山々に並ぶ白色の団地、広々した道路を照らす街頭。

ただ、無垢でありながらも今までにない大人びた落ち着きも兼ね備えています。
深い黒のヴェルベットのような耳心地が良い作品です。

(5th)farewell holiday!

前史:リリースされるまで

前作リリース以降、会場限定や配信限定の作品など多くの楽曲を発表しています。
それはDÉ DÉ MOUSE本人の弁によれば、ある種のファンサービスとして行われたものだったようです。
つまりみんなが喜ぶものを作った、ということになります。

しかし、自分が本当に作りたいものを求めて本作の制作も並行して行っていたようです。
自分が本当に好きな音楽は何なのかという内面の掘り下げも行いつつ、
隆盛を極めていたEDMシーンへの反発という形で外の世界へも意識しつつ。


そんな風にしてDÉ DÉ MOUSE 表現者としての自負を込めて作られたのが本作farewell holiday!です。

アルバムの魅力

コズミックなシンセサウンドからオールディーズなストリングス/オーケストラなサウンドへと舵を切っています。
ジブリ的な雰囲気を残しつつも、ディズニー的なノスタルジーを融合させた異色作です。

そして、最もいわゆる「音楽ファン」以外にも好まれる作品なのではないでしょうか。

朗らかに顔を出しては消え、また顔を出すボイス・サンプリング、
時に無邪気に時にしっとり跳ね回るストリングス、
鮮やかなセピア色を紡ぎ出すホーンやピアノ達。
もちろん DÉ DÉ MOUSE 的なノスタルジーは瑞々しく波打っています。
しかし、RPGの世界から飛び出してきた楽隊のような質感があるのは、サンプリングした生楽器で楽曲が構成されているからなのかもしれません。

オールディーズなジャズやオーケストラの雰囲気/文脈を「日本の中の異国的ノスタルジー」という架空的な空気感の只中に置き換えているかのようです。
子供のころに毎週楽しみにしていたファンタジー風アニメや夢中になってクリアしたゲームの中の、楽しい舞踏会を具現化したようなサウンドが続きます。

その結果、従来のDÉ DÉ MOUSE的とも言うべき純現代日本的ノスタルジーの中に純現代日本的異世界ファンタジーが混ざり合い、複雑な色彩の魅力を放っています。

見る角度を少し変えるだけで色彩が微妙に変わっていくような、少しマニアックで、でも敷居は全然低くて誰でも楽しめるような。

ポップでキャッチーで味わい深い作品です。

(6th)dream you up

前史:リリースされるまで

メジャーから離れて以来、ダークヒーローを気取っていたと振り返っているDÉ DÉ MOUSEですが、大きく変わってしまった音楽ビジネスを目の当たりにしてもう一度正義の味方に還ろうという心境を変化させたそうです。

この場合、『正義のヒーロー』というのは多くの人に届く「王道的」という意味合いで捉えることができるかもしれません。

DE DE MOUSEというアーティスト名を海外でもデデマウスと呼んでもらえるために DÉ DÉ MOUSE と名義を変更したことも、少しでも多く「届ける」という意味合いが強いのでしょう。

つまり、シーンに直球を放り投げるべくリリースされたのが本作dream you upなのかもしれません。

アルバムの魅力

ダンスサウンドに回帰しただけでなく、今まで最も華やかなところにまでたどり着いている作品です。

『インターネットが存在する80年代』で放送されている『SFアニメのパイロットたちの間で流行しているヒットミュージック』というテーマで制作されたそうです。

華やかな場所で輝く(EDM的な)ダンスミュージック的な煌びやかなアッパーさと DÉ DÉ MOUSE とは切っても切れぬノスタルジーが融合し、ミラーボールを浴びて飛び散る汗のような、真っ直ぐな高揚感が終始繰り出されます。

無垢さとアッパーさを行き来するサンプリングボイス、
『今』に寄り添い、きらめくライトのようにきらめくシンセサウンド、
4つ打ちを多用したダンサブルなビート。
どこか懐かしくも洗練された「今」のきらめきを絶えず放っています。

逃げも隠れもしない、みんなが大好きなダンスミュージックです。
球場に駆け付けた誰もが喚起するような剛速球ストレートのような、マネのできない王道の存在感があります。

(7th)be yourself

前史:リリースされるまで

前作以降、NHKおかあさんといっしょに楽曲を提供したり、CMへの楽曲提供やプロデュースなどを多くこなしています。

そんな他者との接点が多かったせいでしょうか、本作は「自分がアガるもの」をというフィルターを通して作られたそうです。

そして、もう一つ重要だと思われるのが 本作リリースのインタビューに際して「 10年活動して来て、今が一番楽しいんですよ 」と DÉ DÉ MOUSE が 述べていたことです。

そして、その楽しい気持ちを分かりやすく具象化したのが「青春」である、と。

10年目の青春、そのきらめきが込められたのが本作be yourselfです。

アルバムの魅力

切ないキラキラ感を振りまきつつも、「現代」と「レトロ」を両輪にした軽やかなダンスミュージックになっています。
DÉ DÉ MOUSE節ともいえるオリエンタルさではなく、真っ直ぐな光輝で勝負をしているようなサウンドです。

「普通の女子高生が学校帰りに見つけた見知らぬダイナーで、マスターからもらった店内BGMのプレイリスト」という設定からも分かるように、楽曲の軸になるのが「普通の女子高生」 と「彼女が手にする(最高な)プレイリスト」 という郊外的ノスタルジー要素の薄い存在となっています。
つまり、感傷からスタイリッシュさに楽曲のテーマ軸が移っています。

ユーロビートのような懐かしさも感じさせてくれるし、ハウス、EDM、トラップっぽい雰囲気は顔を出すこともあります。

そして、全編を通してメロディアスで華やかです。

もちろん、甘酸っぱい DÉ DÉ MOUSE節も溶け込んでおり、美麗な高揚感と陶酔感の流れのなかにメランコリックな響きが絶えず花開いています。
かといっても派手派手しくなりすぎることも決してなく、洗練された洒脱さを優雅に纏っています。


自然体なところは、 DÉ DÉ MOUSE 特有の郊外っぽさが影響しているのかもしれません。
バランス感覚に非常に優れ、気持ちをすっとさせてくれるような作品です。

(8th)Nulife

前史:リリースされるまで

アルバム制作当初はもっと派手なサウンドになっていたそうですが、スタッフと話し合うことで派手さが抜け、ダンスミュージックの「今」に近づいたサウンドになったそうです。

DE DE MOUSEにとってのヒーローとも言える Squarepusher や Aphex Twin が「今」にリンクした楽曲を作っていて、そこにインスピレーションを受けている部分もあるようです。

その一方で真っ暗闇なフロアでプレイするAutechreのステージなどを見て、一本筋を通したことをやりたいとも感じていたそうです。

いわば相反する情熱を抱えながらリリースされたのが本作Nulifeです。

アルバムの魅力

前作の多幸的なアッパー感からシフトチェンジし、洗練された大人っぽさを打ち出しています。

また、前作be yourselfの少女と本作のジャケットの中性的なダンサーとの出会いがテーマになっているそうです。

エキチゾックな要素も瀟洒に取り込み、 DÉ DÉ MOUSE 節とも言うべき煌びやかさとしっとりとしたソウルフルさが混然一体となっています。
そして、あくまでも大人っぽくしっとりとした色調を保っています。
抑制美を湛えた、ハウス/ディスコ系サウンドと言えるでしょう。


ジェンダーレスをテーマにピッチを落とした中性的なサンプリング・ボイス、
ひそやかな響きの中にエネルギーがうずまくクールで情熱的なシンセ/ピアノ・サウンド、
爆発的にアガることはないもの、微熱を絶えず孕み続けるスマートなビート。

本作から内省的なスタイリッシュさを感じさせるのは、 ヴェイパーウェイブ的な――つまり、ある面においてはDÉ DÉ MOUSE と似ている――の時代の潮流ともリンクしているからかもしれません。

心を落ち着けたいときには、身を浸したくなるような作品です。

結びに代えて 多摩の暮らしと DÉ DÉ MOUSEのアルバム

多摩の愛憎

私は生まれてからずっと多摩近辺で暮らしています。
多摩川という文字を毎日のように目にしていたこともありますし、多摩都市モノレールに毎日乗っていたこともありました。
聖蹟桜ヶ丘でバイトをしていたことも、そういえば。

しかし、私はここでの日々があまり好きではないし、ここで出会った人々の大半はやはり好きではありません。
ただ、ここは故郷であることに違いなく、風景をぼんやり眺めている瞬間はとても好きだったりします。

DÉ DÉ MOUSE は故郷への愛憎入り混じる私の感情に寄り添ってくれた音楽でもあります。

もちろん、それ以外の風景にもハマってくれる音楽だと思います。
休職中、衝動的にどこかに旅に出ることがありましたが、複雑怪奇に変わり続ける色んな気持ちにハマってくれました。

でも、きっとそれはDÉ DÉ MOUSEの音楽の根底にある「多摩への憧れ」が「現実の多摩」で傷ついていた私の傷にそっと染みこむような優しさを帯びていたからだと思うのです。



それでは。

主要参考サイト

http://www.ele-king.net/features/interview/000770/index.php https://rooftop.cc/interview/080401210000.php https://rooftop.cc/interview/100304120014.php?page=2 https://natalie.mu/music/pp/dedemouse https://realsound.jp/2015/12/post-5486.html https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/13732 https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/de-de-mouse/1000001426 https://www.cinra.net/interview/201912-dedemouse_kngsh?page=2 https://ja.wikipedia.org/wiki/DE_DE_MOUSE

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